ホンダは、ジャイロキャノピーe:の発表会を開催。車両説明の後に行われた質疑応答では、「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」について興味深い話もあったので紹介したい。
国内の交換式バッテリー規格に進展! 国際標準はどうなる?
本田技研工業、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業のバイク国内4メーカーによる「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム(以下、コンソーシアム)」が発足したのは2019年4月。その後、2021年3月には交換式バッテリーの標準化に合意したことが発表されていたが、ホンダの法人向け電動ビジネスバイク「ジャイロキャノピーe:」発表会の質疑応答にて、ホンダがすでに展開している「モバイルパワーパック」の規格が国産の業界標準になったことが明らかになった。
ジャイロキャノピーe:は、モバイルパワーパックの進化版「モバイルパワーパックe:」を採用。従来のものから互換性を保ったまま容量を約1.3倍にアップし、さらにバッテリー1個あたり10.9→10.3kgと約600gの軽量化を達成している。
左は従来のモバイルパワーパックで、右がジャイロキャノピーe:で採用したモバイルパワーパックe:だ。取っ手の形はH型からT型になり、ボディは数ミリ程度というがスリム化されている。セルの搭載密度を上げ、放熱性も向上したという。中身はかなりミチミチの状態になっているとのことで、現状のリチウムイオンバッテリーではほぼ限界近くにきていることがうかがえる。
この「互換性」が重要で、PCXエレクトリックやホンダビジネスバイクe:シリーズで育まれてきたモバイルパワーパックのシステムに準拠していれば、内部の仕様が変わっても使い続けられるわけだ。つまり、同規格がコンソーシアムの標準になったということは、車体へのマウント方式や電圧などにはじまる基本仕様さえ押さえていれば、たとえその車両/バッテリーのどちらがホンダ製であろうとヤマハなどの他社製であろうと、問題なく使えることになる。
実際に、どこかのメーカーが高性能かつコストも抑えたバッテリーを開発すれば、他メーカーがそれを使うということも十分に現実的な話ではある。また、コンソーシアムには多様な業界から問い合わせがあるといい、来年以降には4メーカーからさらに広がった展開も見られそうだ。
記事タイトルにもあるように、例えばカワサキが開発した電動バイクにホンダ製バッテリーを搭載してもいいということ。また、新進気鋭のバッテリーメーカーや、家電メーカーとの合弁なども考えられる。ということは、もしかしたら将来的には「○×△のバッテリーは高性能で最速だゼ!」なんていう会話が巷で聞かれることになる……かもしれない?
同じく質疑応答では、モバイルパワーパックを採用する車種は原付二種相当の電動バイクになるだろう、ということも語られた。ホンダが言うところのFUN領域、つまり大出力で趣味寄りのバイクについては、専用のビルトインバッテリーを使用する可能性が高い。
また、2021年9月には欧州で本田技研工業、ヤマハ発動機、KTM F&E GmbH、ピアッジオグループによる二輪車および軽電気自動車の交換式バッテリーのコンソーシアム(SBMC=Swappable Batteries Motorcycle Consortium)が創設されており、こちらも各国から問い合わせが来ているという。ここでもモバイルパワーパックが標準になるのか興味深い。
車両メーカーによるバッテリー規格標準化の目的は、交換式バッテリーの基本的な技術仕様を共有することで開発時間とコストを圧縮し、また充電ステーション&バッテリーステーションなどのインフラを共同で整えていくこと。これに加え、新興国を中心に出回っている安全性や環境に配慮しない有象無象の電動バイクが、市場や交通環境を荒らしてバイクへのイメージが悪化することへの危機感もあるはずだ。
トヨタの豊田章男社長が言うように、2021年は各国/各メーカーの宣言合戦の様相を呈しているが、誰かの『言ったもの勝ち』にならないよう、また多くの人々のメリットになるよう、各国間やメーカー間で歩調を合わせていくことが大切だ。日本および欧州のコンソーシアムについては、今後の動きも注視していきたい。
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