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過去最高の入場者数
日本最大級のカスタムショーとして国内外に広く知られております『YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW 2022』(ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー)が、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて2022年12月4日(日)におこなわれました。
記念すべき30回目となる今回は、入場者数が過去最高となる2万1000人にも達し、開場の朝8時の時点ではすでに長蛇の列が続く盛況ぶりでした。
出展車両はバイク500台、クルマも300台を超え、日本のカスタムシーンがここに集約されると海外からも注目を集め、熱心なファンやメディア、招待ゲストがやってきます。
アメリカともヨーロッパとも異なる日本のカスタムシーンは独創的で、年に一度のカスタムの祭典「ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー」は海外からも熱視線を浴びているのです。
大物ゲストは日本が誇るカスタムビルダー
そんななか、超のつく“大物”といえるゲストのひとりがSHINYA KIMURA(木村信也)さん。世界に名だたる日本を代表するカスタムビルダーで、2006年からは拠点を海外に移し、米国カリフォルニア・ロサンジェルス郊外にてCHABOTT ENGINEERING(チャボエンジニアリング)をスタート。著名なハリウッドスターなど、世界中から熱心なファンがカスタムバイクをオーダーし、唯一無二の作品がリリースされ続けています。
木村信也さんは琉球大学にて昆虫を研究し、卒業後は「レッドバロン」に就職。退職後、愛知県岡崎市にて「ゼロエンジニアリング」を立ち上げたのは1992年のことで、93年以降は日本にいながら海外のカスタムショーで数々のアワードを獲得するなどし、その名を世界に知らしめました。
その姿はBMWモトラッドのブースにありました。普段はなかなかお会いすることのできないカスタム界のレジェンドとあって、トークショーで登壇すると、集まったファンたちもその言葉を一語一句聞き逃すまいと耳を傾けます。
R18をベースに唯一無二のカスタム
今回、BMWモトラッド本社開発チームからのオファーによって、『R18』をベースにカスタムを手掛け、ドイツ語で鯨を意味する『THE WAL』(ザ・ヴァル)が完成に至りました。
いかがでしょうか、この唯一無二の世界観。これが木村信也さんがつくるカスタムバイクです。ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショーにて本邦初公開の予定でしたが、カリフォルニアで発生した港湾のストライキにより車両を積んだ船の出航が大幅に遅れ、間に合いませんでした。
しかしながら、たいへん光栄なことに、インタビューさせて頂く機会をBMWモトラッドジャパンのご担当者に頂戴しましたから、感激もひとしお。記者として、いいえファンとして、あれこれと長い時間、質問攻めにしてしまったのでした。
怪獣や怪人に魅了された幼少期
木村:趣味もバイクだし、仕事もバイク、けっこうバイクだけなんですよね。特にアメリカへ行ってからは、みんなで飲みに行ったりすることもそんなになくって。こもって仕事をしたり、自分のバイクを乗りに行ったりですね。それは無理やりではなく、わりと自然にそうなります。
青木:子どもの頃、どういうものを見ていらっしゃったのでしょうか?
※木村信也さん:1962年、東京の下町で小さなネジ工場を営む父と書道家の母の間に、5人兄妹の末子として生まれた。
木村:幼稚園の頃は自動車がすごく好きで、兄貴におぶわれて国道に行って、通るクルマを見てたりとか……。カタチにとらわれる子どもだったので、テレビを観れば、ウルトラマンや仮面ライダーの怪獣や怪人の造形に興味を持ったり、あぁだこうだって子どもながらに言ったりして、自分で怪人を描いたりもしていましたね。
青木:特にお好きだったのは?
木村:どうだろう、ウルトラマンだったらやっぱりバルタン星人。ウルトラセブンだったらキングジョーとか、自分なりにデザインの良し悪しがあるんで、そういうのって原点になってるのかもしれないですね。
絵を描く感覚で手が進む
青木:新しいインスピレーションみたいなのは、どういうところから受けるのでしょうか?
木村:う〜ん、よく聞かれるのですが、何かそのために資料を読んだりとか、わざわざ自分で調べたりとかは、あまりないんですよね……。本を読んだり、写真集を見たり、美術館へ行ったり、普段好きなことではありますが、そうしたことを直接仕事に結びつけるというよりかは、自分の中で消化して、そこからまた分解してつくり直して表現するみたいな感じですかね。
青木:カスタムの完成形はどのようにして思い描くのですか?
木村:僕の場合、例えばバイクを1台つくるのに最初に設計図を書いたり、デッサンしたりはしないのです。おもむろにつくりはじめて、つくっている最中は自分がどういうバイクをつくっているかは、よくわかっていないのです。なにかに取り憑かれていると言うと、カッコ良すぎるかもしれないけれど、勝手にスイッチが入って、バーっとつくって、ある程度できたら、ちょっと引いてみて嫌だったらまたつくり変えるという感じなのです。
青木:ほほぉ〜、なにかが降臨してくるのですね?
木村:絵を描くみたいな感覚で、鉄を切ってアルミを溶接して削っていう作業をしています。もし、最初に絵を描いちゃったら、すぐに飽きちゃうと思うのです。
プラモデルは完成させたことがない
青木:なるほど。プラモデルとか、つくり方に関する説明書があると、嫌になってしまうのですね?
木村:プラモデルは子どものときに散々買いましたけれど、結局最後まで作りきれないんです。なんか、飽きちゃうっていうか……。
青木:オートバイメーカーのラインで「この通りに作りなさい」って言われたら、「ちょっと勘弁してくれ」ってことなのかもしれませんね……!?
木村:勘弁してくれっていうか、多分できない! 能力がないんだと思います。他の人の方がいいですね。そういう能力に長けている人は、いくらでもいますから。僕はね、なんか人に言われたものを、その通りにつくるっていうことはすごい苦手ですし、つくり方に方法論があるわけじゃないんで、ただこういう、なんとなくモヤモヤした形をだんだんと、自分の手を動かしながらはっきりさせていくっていうだけなんですよね。
同じものはつくれない
青木:過去にたくさん名作がありますが、「あれと同じものをつくって欲しい」とオーダーされたら?
木村:それは全然面白くないし、できません。僕はプロなので、その人のため、そのお客さんのためにつくっているので、それと同じというのはその人に対して失礼ですしね。
青木:やっぱり、向こう(アメリカ)の方が面白いですか? 刺激がいろいろとあるとか、こういう煩いのがいないとか? もっともっとお話を聞きたいのですが、帰国するっていうのはまだ先になりそうでしょうか?
木村:うん、天気がいいからね。それかなっ! バイクに乗れる日が多いっていうだけで、バイク乗りとしては得ですからね。“倍” 生きられるようなもんだからね。(笑)
青木:あぁ、それで(天候が安定している)西海岸なんですね! バイクに乗るため、向こうへ行きたいっていうのがホンネで、日本がもう嫌になっちゃったとか、そういうのはあまりないのでしょうか?
木村:えぇ、そうですよ。まぁでも、疲れたのはあるかもしれないですけれども、そんなふうに自覚があったわけではないので……。なんせ飽きっぽいから、また急に飽きて「じゃあ。ヨーロッパ行こう」とか「イギリスに行こう」とか、思うかもしれませんよ。
青木:カルフォルニアにいる間に、別のところへ移ろうと思ったことは?
動画で声や仕草も見て欲しい!
カスタム界のレジェンド木村信也さんは、穏やかに、インテリジェンスに言葉をひとつずつ選んでお話してくださいました。ロングインタビューの模様は動画にて収録いたしました。ご興味があれば、ぜひぜひご覧ください。言葉が聴こえにくい場合は、You Tubeの字幕オンをおすすめいたします。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。