いろいろ間に合わなかったけど、救済措置で運用!?

▲「自社で作ってみました」と特定原付のナンバープレートと一般原付のナンバープレートを掲げるglafit社鳴海禎造社長 ※glafit社主催メディア向け勉強会にて


7月1日、いよいよ改正道交法が施行され、新たな車両区分である「特定原付(特定小型原動機付自転車)」の運用が始まりました。

ところが、専用ナンバープレート(正方形)の製造や自賠責保険の電子化(車両に保険証の積載スペースがないため)、シェアリング車両の保安基準対応などが間に合わないままで施行されるというバタバタな一面ものぞいています。

▲特定原付のナンバープレート(右)は正方形です。自賠責保険のステッカーも貼りつける必要があります


ですから、しばらくは救済措置として、ナンバープレートはこれまでの原付一種のものでもOK、自賠責保険も同じくOK、シェア事業者の車体もしばらくはそのままでOKということになっています。

▲シェアリング事業者の電動キックボード。これまで原付一種のナンバープレートが付いていましたが、しばらくはこのまま運用されそう


なんか、かなりユル~いスタートを切ったように見えますが、それだけ急激なスピードで施行に向かったということですね。

さて、今回の道交法改正については、ベンチャー企業等への対応として型式認定制度に加えて「性能等確認制度」が新設されたり、開発・販売・納車(車体受領)時にかなり厳しいルール(安全対策)が定められるなどしています。免許不要ということで、道交法についてのテストや運用ルールの動画視聴などが課せられているんです。

【関連記事】
原付一種が「特定」と「一般」に分離! 電動キックボード等の新区分「特定原付」は7月1日施行!

それらの細かな部分はまた別の記事にて紹介したいと思いますが、今回、特にお伝えしたいことはコレ。

“特定の”歩道を6km/hで走れる特例特定原付とは?

▲車体前後の最高速度表示灯(緑色のランプ)を点滅させて、最高速度を6km/hにできるものが特定原付に含まれる特例特定原付車両です ※glafit社主催メディア向け勉強会にて「電動サイクル」に試乗する男性


特定原付の中に含まれる「特例特定原付」です。7月1日から、これまでの原付一種は、一般原付(一般原動機付自転車 ※従来の原動機付自転車)と特定原付の2つの区分に分かれました。

しかし、実は、特定原付という区分の中に、さらに特例特定原付(特例特定小型原動機付自転車)というものが例外として規定されたのです。

●新しくなった原付の車両区分と見分け方のポイント
同じようなキックボードの形をしていても車両区分が異なります。また、出力等によっては一般原付に収まらず原付二種等になるものもあります。

車両区分 年齢
制限
原付
免許
ヘルメット 速度制限 走行場所 最高速度表示灯 見分けるポイント
特定原付 16歳以上 不要 努力義務 最高で20 km/h 車道・自転車道 車体前後の緑色ランプの点灯 緑色ランプの点灯
特例
特定
原付
16歳以上 不要 努力義務

最高で6 km/h
※歩道走行モード時。通常走行時は最高20km/h

車道・自転車道・特定の歩道(自転車歩行者道など自転車が走れる歩道) 車体前後の緑色ランプの点滅 緑色ランプの点滅
一般原付 16歳以上 必要 義務 30 km/h
※法定
車道 無し 右のミラー


特例特定原付は独立した車両区分という扱いではありません。特定原付の条件を満たした上で、歩道走行モードを備えた車両だけが特例特定原付として例外規定され、自転車歩行者道(自歩道)などの“特定の歩道”を走ることができるのです。

その際には、以前から報道されていたように、車両前後に装備された緑色ランプの最高速度表示灯を点滅させ、最高速度は6km/hとなります。

▲正方形のナンバープレートと緑色のランプが特定原付の目印。さらに自転車歩行者道などの走行時に緑色ランプが点滅していれば、特例特定原付車両ということです

特定原付は歩道は走れない!! “特例”との大きな違いとは?

▲「普通自転車歩道通行可」の標識が立ち、例外的に自転車が走行できる歩道。特定原付は走行禁止、特例特定原付は歩道モードで走行できます

 

▲「普通自転車歩道通行可」の道路標識。特例特定原付を歩道モードにすれば走行できますが、歩行者優先であることを忘れないこと


6月26日、JEMPA(一般社団法人日本電動モビリティ推進協会)の会長を務めるglafit株式会社の鳴海禎造社長は報道陣を集めたメディア向けの勉強会で「誤った情報が拡散されている」ことを危惧していると述べました。

▲メディア向け勉強会で説明するglafit社の鳴海禎造社長(左)とOpenStreet社の工藤智彰社長(右)


これまでの報道では、特定原付が「歩道も走れるようになる」と伝えられることが多く、この表現では「全ての歩道が走れるように聞こえてしまう」からです。

前述したように、特定原付は一切の歩道は走れません。自転車歩行者道といった自転車の走行が許可されている一部の歩道を、歩道走行モードに切り替えた特例特定原付だけが走れるというのが正解です。これが特定原付と特例特定原付の運用上の最大の違いです。

▲原則は車道走行ですが、自転車同様に特定原付・特例特定原付車両も「普通自転車専用通行帯(自転車レーン)」を走行できます

特定原付は、電動キックボードだけの区分ではない!

▲モーターサイクルタイプの特定原付「電動サイクル」は原付スクーター市場に大きな影響を与えるでしょう


特定原付は電動キックボードだけの車両区分ではないのですが、この点についても偏った報道により勘違いが生まれているようです。glafit社は、OpenStreet社(モビリティシェア事業国内No.1)とのシェアサイクル事業での提携においてモーターサイクルタイプの特定原付(特例特定原付)車両「電動サイクル」を開発・採用することに合意しています。

その理由には、国内の道路環境が電動キックボードの小径ホイールには適していないということ、さらには数km走っただけで体の負担が大きい電動キックボードより、シートに座れるモーターサイクルタイプのほうが体への負担が少ないといった理由でした。

glafit社は、電動サイクルをシェア事業者向けのみならず、一般販売向けにも生産する計画です。

ペダル機構のある車両は公道を走れない!

なお、モーターサイクルタイプでも、ペダル機構(電動アシスト機構を含む)により、人力を動力とできる車両は特定原付車両としては公道を走行できない決まりとなりました。

人力が動力となる機構は走行速度を制御しきれないからです。

型式認定制度も、今回新しく制定された「性能等確認制度」も国交省の主管で、道路運送車両法の範疇です。そして道路運送車両法上の原動機・加速装置に人力装置は含まれません。道路交通法上、ペダル機構は問題なくても道路運送車両法上で違法となれば公道走行で摘発の対象となるのです。

今後、技術的な問題をクリアして、20km/hや6km/hで正確に制御できるペダル機構が開発される可能性もなくはありませんが、現状ではそういった製品はありません。

▲ペダル機構のあるものは特定原付の性能基準を満たしていても、特定原付としては公道を走行できません

東京都が、わかりやすいリーフレットを作成!

特定原付と特例特定原付については、東京都がとてもわかりやすいリーフレットを作成しているので、ぜひご覧ください。

●東京都「電動キックボードの新しいルールについて」

4月11日、東京都は、シェアリング事業者の株式会社Luupが会長を務めるマイクロモビリティ推進協議会と電動キックボードの安全な利用の促進について協定を締結しています。なお、電動キックボードによる実証実験は道交法改正前の6月30日に終了しています。

▲特定原付の普及はシェアリング事業が鍵を握っています。運転のルールや交通安全について周知やPRなどで連携を進めています


新しいルールを周知するためのリーフレットのほか、今後は交通安全イベントの共催、情報提供や意見交換を実施していくとしています。マイクロモビリティの本丸は東京都ですから、連携活動に期待したいですね。

▲株式会社Luup 岡井大輝社長「四輪ドライバーや歩行者、町内会の人たちにも正しいルールを理解してほしいです。放置駐車も考えなければいけないので、事業者と自治体が連携して啓発を行っていくことが重要だと考えます」


「正しい知識で正しく乗れば安全なんだ」という認識が広まり、バイクも含めたパーソナルモビリティを正しく有効に活用できる社会になってほしいものです。

●警視庁「特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)に関する交通ルール等について」


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