12月4日、5日の両日、東京都がEVバイクのイベントを盛大に開催した。イベントレポートは前編・後編にわけてお伝えするが、その前に、これほど大規模なイベントを開催した理由とその背景について説明しよう。

脱炭素都市を目指す、東京都のゼロエミ施策

東京都は2050年までにCO2の排出を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」の実現を目指している。脱炭素都市を目指すべく練られた「ゼロエミッション東京戦略」ではロードマップを作成し、「東京都気候変動適応方針」「プラスチック削減プログラム」「ZEV普及プログラム」を策定している。

ZEV(ゼロエミッションビークル)とはEV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)、FCV(燃料電池自動車)といった、純然たるガソリンエンジンではない環境負荷の低い車両を指しており、バイクで言うならEVバイク、FCバイクがその範疇に含まれる。

東京都はこうしたバイクを「ゼロエミバイク」と呼んで、購入補助金を用意するなど普及に力を入れ、「2035年までに都内で新車販売されるバイクの非ガソリン化」を目指しており、これまでにもEVバイクの啓発イベントや離島でのEVバイク活用実証実験などを実施してきた。

一方のバイク業界も「2050年までにカーボンニュートラルを実現」するという政府方針に貢献すべく、コミューター領域における交換式バッテリーの共通化(国内4社による電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム)、交換式バッテリーのシェアリング実証実験を各地で進めている。

国内外バイクメーカーの最新EVバイクが展示

今回のイベントは「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」と銘打ち、国内メーカーを中心にEVバイクの展示や試乗会、EVバイクのメリットを周知するようなステージイベントなどが行われた。会場となった東京国際フォーラムには、老若男女を問わず多くの来場者が訪れて活況を呈していた。それでは、会場の模様をご紹介しよう。

展示スペースには、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、aidea、プロト、トヨタといった国内メーカーや、BMW、KTMといった海外メーカーらが最新モデルを展示して話題となっていた。

●ホンダブースには注目の最新モデル「ジャイロキャノピーe:」

ベンリィe:(2輪)」「ジャイロe:(前1輪、後ろ2輪の3輪スクーター)のほか最新モデルである「ジャイロキャノピーe:(ルーフ付き3輪スクーター)」も含めて法人向けのEVバイクを展示した。これらのモデルは、バッテリーリサイクルを行なう社会的責任の観点から、バッテリーの回収に協力できる法人事業者に限定してリース販売されているモデルだ。

現在、ホンダのEVバイクラインナップには
個人向けのEVバイクがないため(2024年までに発売予定)、一般向けの展示内容ではないかもしれないが、高性能の電動化ユニットや汎用性の高い着脱式可搬バッテリーシステム「ホンダモバイルパワーパック」はデリバリー業界関係者のみならず一般の来場者からも注目を集めていた。
ジャイロキャノピーe:にも採用されている電池容量を増大させた新型バッテリー「ホンダモバイルパワーパック e:」は採用を希望する他社製品への供給も予定されている。

●電動トライアルバイク「TY-E」のデモ走行も披露したヤマハ

ヤマハブースでは、テレビでおなじみの原付一種クラス「E-Vino」と電動アシスト自転車、さらには電動トライアルマシンである「TY-E」を展示。TY-Eでは展示のほか、ヤマハファクトリーレーシングチームの黒山健一選手によるEVトライアルショーも行なわれた。2018年からFIMトライアル世界選手権「TRIAL E クラス(電動マシンのみのクラス)」に参戦しているTY-Eと黒山選手は、初出場した第1戦フランス大会で優勝するなどポテンシャルの高さを世界に見せつけている。
特設ステージで行なわれたトライアルショーでは、黒山選手の軽快なトークに加え、ジャックナイフで風船を割ったり、一本橋を渡ったり、アクロバティックなジャンプを披露したりと軽量でトルクフルなTY-Eの性能を存分に引き出したアクションを披露し、客席は大いに盛り上がっていた。

●EV二輪研究車に人垣ができていたカワサキブース

カワサキブースでは、旧Ninja250をベースとした電動ファンバイク「EV二輪研究車」が大注目を浴びていた。まだまだコミューター(スクーター)タイプが多いEVバイクの中で、モーターサイクルタイプの車両は一段と目を引くのだ。4速マニュアルトランスミッションを搭載しているということで、「電動=変速機なし」の概念を打ち破る可能性を秘めている注目の研究車両だ。充電規格はCHAdeMO(チャデモ:日本主導の世界的な急速充電規格)ほか家庭用100V電源でもプラグイン充電ができる仕様だという。航続距離は約100kmとされている。
また、クラウドファンディングで先行テスト販売されるやいなや、あっという間に目標達成したことでも話題の電動3輪車「ノスリス」も注目を浴びていた。ノスリスには電動アシストタイプとフル電動タイプがあるが、今回はフル電動タイプを展示。車両区分はミニカー登録なのでヘルメットはいらないが(そりゃ、かぶったほうがいいに決まってる)普通自動車免許が必要になる。原付免許や自動二輪免許といったバイクの免許では運転できないので注意。最大速度は40km/hで航続距離は65kmだ。

小池百合子都知事もEVバイクにまたがりアピール!

カワサキのEV二輪研究車には小池百合子都知事もまたがった。黒のライダース(革ジャン)でキメてるなぁと思ったら、どうやらこのためだったようだ。自身のオリジナルカラーリングが施されたヘルメットをかぶってポーズ! 国内の4メーカーにEVバイクを開発・販売するように要望してきた小池都知事だが、そろそろモーターサイクルタイプを御所望なのかも。
キャスター時代には局のスタジオまでスクーターでバイク通勤をし、自民党時代にはオートバイ議員連盟のメンバーでもあった小池都知事。2005年の環境大臣時代に「クールビズ」という言葉を定着させたようにPRの上手な政治家として知られているが、モビリティ革命の荒波の中で「ゼロエミバイク」を定着させられるかどうかは、今後の都の柔軟な普及施策にかかっているだろう。
(後編に続く)

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