バイク関連の特ダネを追い続けてきてウン十年。ニュースの鬼“沼尾”が気になったネタを深堀りする。
今回は「バイク盗難」がテーマ。2020年の盗難件数は9018件で、記録が残っている1967年以降、初めて盗難認知件数が1万件を下回った。
これはビッグニュースなのだが……!?
Contents
ピーク時の25分の1、コロナ禍が影響か?
筆者はバイクを盗まれたことがある。1990年の冬、大学生だった。自宅マンションの下(自転車置き場)に停めていたゼファー(400)が……バイクカバーだけになっている!? 一瞬「バイクが縮んだ?」と思ったが、「駅前かどこかに停めたままだったっけ?」などと脳が事態を認識してくれない。
しばらくして、ようやく盗まれたんだ、と理解して交番に被害届を出した。初めて手に入れたバイクを盗まれた時の動揺と落胆した気持ち、そして怒りを今も忘れられない(2週間後、警察から連絡があり、河川敷で鬼ハン+フタコブシートになって放置されているゼファーを発見したという……)。
――前置きが長くなったが、バイク盗難件数は年々減少している。
警察庁が公表した犯罪統計によると、昨年('20年)のバイク盗難認知件数は前年から2237件減(19.9%減)の9018件で、ついに1万件を下回った。
これはいい意味で驚くべき数字だ。
統計が残る1967年以降、一時期を除いてバイクの盗難件数は増加し続け、'88年には20万件を突破。翌'89年には最大の27万1083件を記録するに至り、以降も20万件超を維持し続けた。
ところが、'00年の25万3433件をピークに減少へと転じ、毎年前年比20%程度と大幅に減少していく。'06年には10万件を割り、'09年に微増したものの、以降は11年連続でマイナスとなり、ついに'20年は1万件を割り混んだのだ。
これは統計が残る1967年以降、最も低い数字で、1万件を下回るのも初。20年前と比べ、実に25分の1、5年前の3万5486件と比べても4分の1にまで減っている。
ちなみに自動車盗も減少し、前年比1933件減(約27%減)の5210件だった。
なお、バイクを盗んだ泥棒の検挙率は16.5%で、前年から5%ダウンだった。一方で検挙人員は増えており、+47人の841人。うち少年は48人増の773人だった。
減少した理由は不明だが、考えられるのはやはりコロナ禍。国外への行き来がおいそれと出来なくなり、盗難バイクの海外輸出がしにくくなった、などの理由が思いつく。少年の盗難が増えたのは、ヒマを持て余しての気晴らしか、それともカネになるとでも考えたのだろうか。
エッ、3割がそんなミスで盗まれてる!?
ただし、いくら減ったとはいえ、1日に約25台のバイクが日本のどこかで盗まれている計算になる。こう考えると決して油断できない数字だ。
そこで、どんな状況で盗まれているのか、統計から分析し、防犯に役立てたい。敵を知り、己を知れば百戦危うからず、というヤツだ。
まず知っておきたいのは、「カギがかかっていない状態」で盗まれたバイクが3割を占めるという事実だ。
東京都(警視庁)での'20年のデータによると、バイク盗難995件のうち「キーなし」の状態が68.3%、「キーあり」の状態が31.7%となっている。ウッカリとキーをメインスイッチなどに挿したままバイクを離れて盗まれた人が、3割を数えるのだ。
つまり、しっかり施錠すれば、3割(東京都の場合315台)のバイクが盗まれずに済む。これは非常に大きい。
「水曜の夕方、住宅」が最も危ない!
続いて、盗まれた場所を見ていこう。以下は、全国における最新のデータ('19年現在)で、警察庁の「令和元年の犯罪」が出典となる。
これによると、約半数が「住宅」(一戸建、中高層、その他)で盗まれている。ショッピングセンターなどの「駐車場」は3割、「道路上」は約1割。多くは自宅に駐車している間に盗難されており、路上でゆきずりの犯行ではなく、計画的な臭いがする。出先も油断できないが、普段の防犯が問われるのだ。
バイク盗難発生場所(認知件数 '19年)
盗まれた場所 | 件数 |
一戸建住宅 | 1531 |
中高層(4階建以上)住宅 | 1839 |
その他の住宅 | 1805 |
月極駐車場 | 215 |
駐車場 | 3014 |
道路上 | 1144 |
盗まれた曜日では、「水曜」の537件が最多。2位は「月曜」(530件)。最も少ないのは「火曜」(484件)だ。「土日」どちらも各487件で、「不明」は7710件。
週の真ん中が多いのは偶然なのかわからないが、曜日で大きな変化はない模様。盗みたい時に盗んでいるのかも?
盗まれた時間帯も判明した。犯行は深夜のイメージが強いが、最も多いのは「18~20時」。その周辺の「16~18時」「20~22時」もほぼ同様で、夕方が魔の時間帯と言える。
その後は減り、「0~2時」にまた増えている。
盗難発生時間帯(認知件数 '19年)
時間帯 | 0~2時 | 2~4時 | 4~6時 | 6~8時 | 8~10時 | 10~12時 |
件数 | 59 | 40 | 20 | 13 | 23 | 40 |
時間帯 | 12~14時 | 14~16時 | 16~18時 | 18~20時 | 20~22時 | 22~24時 |
件数 | 48 | 51 | 64 | 66 | 60 | 40 |
なぜ? 少年に迫る勢いで団塊ジュニアが……
泥棒の年齢層も判明した。被疑者(犯罪の疑いをかけられた捜査対象者)の2071人中、20歳未満が914人(うち16歳が最多)。他の年代は50代まで50~200人の範囲となるが、「40~49歳」の781人が飛び抜けて多い!
いわゆる団塊ジュニアと少し上の世代にあたるわけで、バイク好きが多いと思われる。この年代にプロの窃盗犯が多いのかも知れないが、いい大人が……と呆れてしまう。
最後に都道府県別のワースト10を挙げよう。
盗難が最も多いのは大阪で、唯一の2000件台。大阪はワースト1の常連で、ひったくりなどの犯罪も多い。これに続いたのは、神奈川、東京、埼玉と関東の首都圏。逆に、最も盗難が少ないのは、山形の2件。同率2位は青森、秋田、鳥取の3件だ。
都道府県別 盗難認知件数ワースト10('19年)
1位 | 大阪 | 2021 |
2位 | 神奈川 | 1573 |
3位 | 東京 | 1133 |
4位 | 埼玉 | 802 |
5位 | 兵庫 | 756 |
6位 | 千葉 | 742 |
7位 | 愛知 | 578 |
8位 | 福岡 | 567 |
9位 | 静岡 | 369 |
10位 | 京都 | 384 |
なお、最新データによると、全国で'21年1~7月のバイク盗難件数は4533件。前年同期比で1025件マイナス(18.4%減)となっており、'21年はさらに最少記録を更新することになりそうだ。
<まとめ>件数が減ったにせよ、慢心は禁物
自分の敷地内にガレージを設置できれば盗難される確率は大きく減るだろうが、日本の住宅事情を思えば、十分な防犯が難しいのは事実(自分もマンションの自転車駐輪場に停めている……)。それでも、なるべく周囲からバイクの存在を見せないようにし、複数のロックで心理的に少しでも「盗みにくい」と思わせるのが肝要だ。ちなみに、私が以前盗まれたゼファーもハンドルロックしかしていなかった。
何より、盗まれるのを恐れて、バイクに乗るのをためらったり、諦めたりするのは残念すぎる。盗難件数が減っているのは喜ばしいが、いつか「盗難ゼロ」の世の中が来て欲しい。