強烈すぎるほどボリューミーなカウル

 ハーレーダビッドソンの2022年モデルが発表され、いま話題沸騰となっているニューモデルがあります。その名も「ローライダーST」です。

ジャーン!


 ファンならまず注目したのが、フロントにボリューム感たっぷりで備わっている大柄すぎるフェアリング。いかがでしょうか、ものすごい存在感ではありませんか!
 単純にカッコイイのと同時に、オールドファンは歓喜したのでありました。そう、“元ネタ”となるレジェンドモデルがあり、こうしたやたらと大きなフェアリングを身にまとっていたのです。それがコチラ「FXRT スポーツグライド」です!

ジャーン!!


 1982〜92年頃までラインナップされ、ハッキリ言ってしまうと当時は「ハーレーらしくない」と不人気でした。なので比較的短命に終わり、ここ日本でも馴染みのないカタチ・スタイルではないでしょうか。これが昨今、カスタムシーンで熱視線を浴び、通称「RTカウル」と呼ばれ大・大・大人気に! そんな熱きトレンドを受けての新型登場なので、コアなファンも大興奮というわけです!!

 なお、こちら92年式の「FXRTスポーツグライド」のノーマルストック状態は超レア。たいへん貴重な車輌を撮影させていただいたのは、埼玉県さいたま市にあります「ピットインアメリカンモーターサイクル」のご協力の賜物であることを報告しておきます。

ミルウォーキーエイトエンジンとは!?

 さて、いったん「FXRTスーパーグライド」のハナシは置いといて、ニューモデルである「ローライダーST」について説明いたしましょう。まずエンジンは「ミルウォーキーエイト117」と名付けられた1923ccもの排気量を持つVツイン。


「水冷になった」とか「DOHC化された」とか、いろいろなニュースが流れていますが、それはまた別モデルのエンジンのハナシで、主軸モデルのVツインエンジンには伝統の“空冷”、“挟角45度”、しかも“OHV”方式、トランスミッション別体式のオーソドックスな機構がしっかりと受け継がれています。

「ミルウォーキーエイト」エンジンは4バルブ(2気筒合わせると8バルブ)化され、2016年の夏に発表された新しいパワーユニットです。当初は107キュービックインチ=1745ccと、114キュービックインチ=1868ccの2本立てでしたが、「ローライダーST」が積むエンジンは117キュービックインチ=1923cc化されています。

排気量を示すのは“cc”じゃない!?

 もうおわかりでしょう、「117」っていう数字はアメリカで使われるキュービックインチ=排気量を示すもので、「ミルウォーキーエイト」の先代にあたる「ツインカム」でも110、103、96、88などと末尾につけられ、その排気量がわかるようになっています。


 では「ミルウォーキーエイト」ってなんでしょう。ミルウォーキーはハーレーダビッドソン創業の地であり、1903年以来ずっと本社を構える地名なんです。そしてエイトは“8バルブ”であることを誇示しているのですね!

モノサスペンション採用で走りがスポーティ

「ローライダーST」のシャシーは2017年の夏に発表されたもので、1984年から使われてきたソフテイルフレームを大刷新し「NEWソフテイルフレーム」とも呼ばれるものです。

 シート下にモノショックを隠し、リンクレスでスイングアームマウント。スポーティな走りを実現します。フロントサスペンションにはインナーチューブ径43mmの倒立式カートリッジフォークを採用し、前輪ブレーキはダブルディスク仕様。ホイールはアルミキャスト製で高剛性を誇り、“走り”の性能も追求した「ハイパフォーマンスクルーザー」あるいは「スピードクルーザー」などと呼ばれるモデルとなっているのです。

ハーレーにフルフェイスは昔ではあり得なかった!?

 ハーレーといえばゆったりのんびり走る、というイメージを覆し、「アグレッシブに走ろうぜ」っていう新ジャンルのニューモデルです。今回の「ローライダーST」に限らず、昨今のハーレーに見られるトレンドで、たとえば世界観を演出するメーカー発信のビジュアルでも、ライダーたちはこうしたハイパフォーマンスクルーザーでは、ハーレーではお馴染みのジェットヘルメットではなく、フルフェイスを被っていたりしてスポーティなムードを演出しています。
 さて、ちなみにボクは「ウィズハーレー」という専門誌に編集長として携わっていますが、試乗インプレッションなどで誌面に登場するとき、ほぼ必ずと言っていいほどフルフェイスヘルメットを被っています。

初代ローライダーSを米国カリフォルニアで乗る青木タカオ。

▲写真は2016年に初代ローライダーSを米国カリフォルニアで乗ったときのもの。

 今回説明した「ミルウォーキーエイト」エンジンや「NEWソフテイルフレーム」のジャーナリスト向け試乗会がアメリカで開かれ、いち早くニューモデルたちに試乗させていただく機会をハーレーダビッドソンジャパンのご協力のもと得られましたが、そこで感じるのはやはり本社スタッフ開発陣たち、そしてさらに欧米のジャーナリストたちもハイパフォーマンスクルーザーに乗るときはフルフェイスであることで、こうした移り変わりはハーレーの海外試乗で2013年頃から感じたことでした。

 どっちが良いとか悪いではなく、「ローライダーST」はそんな従来路線を覆すスピードクルーザーであり、フルフェイスでスポーティに走りたい人にも、ジェットヘルメットでゆったり走りたい人にも、オススメのモデルとなっています。

 あっという間に長文となってしまいましたので、今回はココまで。そのルーツモデルである「FXRT」は次回以降にまたご紹介いたしましょう。最後はボクが手掛けるウィズハーレーYou Tubeチャンネルで、ぜひ「ローライダーST」の動画をご覧ください。公式PVも見ることができ、その世界観がわかると思います。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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