今季より世界選手権へ格上げ

 電動バイクのロードレース世界グランプリが『Moto E』です。EVマシンでスピードを競う世界最高峰カテゴリーとして、2019年よりシリーズ戦が繰り広げられており、2022年までの「MotoE World Cup」を経て、今シーズンより「MotoE 世界選手権」へ格上げされました。

2021年シーズンからMotoEクラスに参戦し続けている日本人唯一のライダーが大久保光選手です。

▲2021年シーズンからMotoEクラスに参戦し続けている日本人唯一のライダーが大久保光選手です。

 年を追うごとに盛り上がりを見せ、開催されるレース数も増えています。初年度の2019年は全4戦6レースでしたが、翌20年は全5戦7レースに、21年は全6戦7レース、22年は7戦14レースとなってきて、23年のレース数は史上最多の全8戦16レースがおこなわれる予定です。

 今シーズンはレース格式が上がったことに加え、いろいろと節目の年で特に注目を集めています。というのも、マシンが換わるのです!

マシン供給がドゥカティに

 じつはワンメイクレースとなっていて、22年シーズンまではイタリア『エネルジカ』がマシンを供給していましたが、今季より2026年まで4年間、『ドゥカティ』が担当することになりました。

2023年シーズンから採用されるドゥカティのMotoEマシン『V21L』。

▲2023年シーズンから採用されるドゥカティのMotoEマシン『V21L』。

 その名は『V21』。最高出力150PS(110kW)、最大トルク14.28kg-m(140Nm)を発生し、275km/hもの最高速を誇ります。

 公表されている車体重量は224.5kgとなっていて、カーボンファイバー製のケースを持つ容量18kWhのバッテリーパックは重量110kg。『パニガーレV4』のようにシャーシの剛性メンバーとして機能します。

 また、フロント部には重量3.7kgのアルミニウム製モノコック・フロントフレームを備えています。最新鋭とは、まさにこのことでしょう。

 レースは走る実験室。ホンダ創業者の本田宗一郎氏もおっしゃっておりましたが、開発に取り組むエンジニアたちはそんなスピリットなのでしょう。

ワンメイクレースって面白いかも!?

 ここでふと考えてしまうのが、『Moto E』はワンメイクということ。そうした意味では、レースとして各チーム・各選手の乗るマシンがすべてがイーブンな条件というのは面白いところではありますが、一方でメーカーとメーカーが技術力を競い合うという部分では昔のレースとは少し違う気がします。

大久保選手はMotoEフル参戦に加え、鈴鹿8時間耐久レースやドイツやイタリアでも選手権を走る、言うならば電動とガソリンエンジン、両方のロードレーサーを乗りこなす二刀流ライダーです。

▲大久保選手はMotoEフル参戦に加え、鈴鹿8時間耐久レースやドイツやイタリアでも選手権を走る、言うならば電動とガソリンエンジン、両方のロードレーサーを乗りこなす二刀流ライダーです。

 本田宗一郎氏の時代は、二輪も四輪もオンロードもオフロードでもさまざまなジャンルで企業の持つ技術をすべて注ぎ込み、競い合いしのぎを削る事で互いに高めあっていたのではないでしょうか。それがメーカーにとって有益であり、世間でも役に立つ技術としてフィードバックされていきました。

 レーサーレプリカブームのときも、市場でニューモデルが発売されれば「世界GPで磨かれた技術!」なんていうような謳い文句をよく見かけました。

メーカー同士のぶつかり合いは!?

 もちろん、ワンメイクレースだからといって、技術革新がないなんてことはありません。そしてワンメイクレースならマシンの性能差がなく、ライダーやドライバーの技量による勝負となる面白さも生まれます。出力や重さに差はありませんし、タイヤのせいにもできません。

実力がすべて露わになる!

最速のライダーは誰なのか……!?

 ワンメイクならそれが明確になるかもしれません。最高峰MotoGPクラスはタイヤを『ミシュラン』に統一していますし、Moto2は公式エンジンを『トライアンフ』排気量765ccの4ストローク3気筒と定め、シャシービルダーを『カレックス』『ボスコスクロ』『GASGAS』『MVアグスタ』としています。

 Moto3においては排気量250cの4ストローク単気筒エンジンを『ホンダ』『KTM』『ハスクバーナ』『GASGAS』『CFMoto』が手掛け、タイヤは『ダンロップ』がサプライヤーです。

Ninja ZX-25Rによるワンメイクレース「Ninja Team Green Cup」をカワサキは2021年にスタートさせています。

▲Ninja ZX-25Rによるワンメイクレース「Ninja Team Green Cup」をカワサキは2021年にスタートさせています。

 もっとサーキットを身近に楽しんでいただきたいと、カワサキは「Ninja ZX-25R」のワンメイクレース「Ninja Team Green Cup」を2021年にスタートさせ、今年も全5戦が開催されます。

人より多く練習! そんなことはできない

『Moto E』のハナシから少しずつ逸れていきましたが、ボクがナニを言いたいかというと、究極のワンメイクレースであるということ。

 ドゥカティ『V21』は、3月上旬にヘレス・サーキットでのテストにて各チームに初めて供給され、全9チーム18名のレギュラーライダーたちがそこで初めて走らせることができます。

 開幕前は4月上旬のバルセロナ・カタルーニャサーキットと合わせ、テストは2度だけ。さらにシーズン中もレースウィークの公式テストでしか走行はできません

2023年の『Moto E』は史上最多となる全8戦16レースが欧州各地で開催されます。写真は大久保光選手。

▲2023年の『Moto E』は史上最多となる全8戦16レースが欧州各地で開催されます。写真は大久保光選手。

 これって、とても興味深いことだとボクは思います。どんなスポーツでも、試合に勝つために人より多く練習したり、トレーニングを積み重ねますが、『Moto E』はマシンが同じで、プラクティスの機会も平等。ライダーには適応力が求めらるのです。

 そんな『Moto E』にフル参戦している日本人ライダーがいるってご存知でしょうか? 大久保光(おおくぼ ひかり)選手(Tech3Racing)です。興味津々なボク、アレコレとお話を聞かせてもらいました。

 聞くところによると、電動とガソリンエンジンのマシンとでは走らせ方が違うのだとか。ぜひ動画をご覧ください!

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