埼玉県で開催されている「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」について掘り下げる。今回は、”後援”という名目で実技と座学を教えている埼玉県警察本部交通部交通総務課(以降、県警)に話を聞いた。

●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)

――県警としての関わりと役割について教えてください。

講習会には、埼玉県教育局からの後援依頼に基づいて協力しています。交通安全教育の実施者として運転免許取得が可能な年齢に達した高校生に対し、将来にわたり交通事故の加害者となったり被害者になったりしないよう、交通社会の一員としての事故を起こした場合の責任や2輪車の特性や基本的な交通ルール/運転技術を習得させる役割を担っていると認識しています。

――以前の交通安全教育と三ない撤廃以降の現状はどうでしょう。

以前より、埼玉県教育委員会等と連携して高校生に対する自転車/2輪車講習に関わっていましたが、令和元年以降は三ない運動の実質的解禁/講習実施体制検討委員会の立ち上げ等を経て、各機関が継続的に講習に携わっているため、関係各機関の連携が強まり、座学および実技のカリキュラムが一律となり、事故防止のための体系的かつ効果的な教育内容になっていると感じています。

――講義では、何を伝えたい/伝えるべきとお考えですか?

受講生は、二輪(原付)運転免許保有者として、道路交通の場に参加して間がないため、たとえば事故現場での対応や、事故を目撃した時の措置要領など、必要な対応能力が備わっていないことが多いです。

交通ルールを守ることはもちろんですが、講義では交通事故の悲惨さ、万が一の場合の事故現場での正しい対応などを伝えるよう心がけています。特に、すべての講義において”心のブレーキ”の大切さを伝えるようにしています。

――県警の取り組みに関する成果や指標について教えてください。

成果については、講習開始から3年が経過し、講義/実技ともに必要なカリキュラム(座学講習の内容/実技の課題内容)の大枠を構築することができたと考えています。

指標については、受講した生徒の安全運転に対する意識が改善され、結果として交通事故の減少につながることと考えていますが、いまだに高校生の2輪車乗車中の重大事故も発生しており、長期的に見ていく必要があると思います。

――モニタリング委員会での立場と視点、委員会から講義に反映した内容について教えてください。

指導検討委員会では、本職が委員として、座学及び実技の講義状況を踏まえた意見を述べる立場です。なお、委員会において”実技と講義の連携”について意見が出たことから、令和3年度の座学講義では、実技で体験できない出合い頭や右直事故の危険性などを、動画危険予測トレーニングシステム(KYT)を通じて体験させるようにしました。

――実感されている課題と、関わり方も含めて今後の展開について教えてください。

埼玉県警察本部として、埼玉県内の、特に2輪車の交通事故発生状況を分析し、未然防止に必要な情報を県民に伝えるとともに、交通安全教育に反映させたいと考えています。

――ありがとうございました。

【交差点での安全確認が重要】’20年中に埼玉県内で発生した2輪車の関係する重傷/死亡事故は494件で、道路形状では交差点がもっとも多く339件(68.6%)、事故類型では車両相互の出合い頭が200件(40.4%)、次いで右折時が127件(25.7%)。県警は「交差点での確実な安全確認が事故防止上重要」と考えている。

【被害軽減のための装具の重要性を体感】県警によると、死亡事故(33件)の損傷部位では、頭部が15件(45.5%)、次いで胸部が13件(39.4%)であることから、あご紐を締めるなどヘルメットの正しい着用と、ボディプロテクター着用等の被害軽減のための対策が極めて重要であることを伝えている。代表者へのエアバッグベストの作動/展開体験も実施。

【地域の警察官からの思いも】秩父地域の開講式で講話を行なった秩父警察署交通課指導係の山村卓也警部補。参加生徒にとっては幼稚園や小学校にて講話を受けてきたおまわりさんで、「白バイの山ちゃん」とも呼ばれる。10月17日に秩父の高校生がバイク事故で亡くなったことを受け、涙ながらに安全運転を訴えた。

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