2023年5月20日、21日に、栃木県のモビリティリゾートもてぎにて、「2023 Hertz FIMトライアル世界選手権第3戦 大成ロテック日本グランプリ」が開催された。
スポンサーなどの関係でえらく長い大会名だが、ようは世界各国を回りながら開催しているトライアルの世界選手権の第3戦が日本で行われたってワケ。しかも、このコロナ禍で日本でトライアル世界選手権が行われるのは実に4年ぶりのこと。
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バイクが宙を舞う! トライアル世界選手権
競技の内容は……なんて難しいことは抜きにして、とにかく選手たちの超絶技巧を視覚的に楽しめるいうのが、このトライアル競技の素晴らしいところだ。
通常のロードレースだと、選手のプロフィールに乗るバイクのカラーリングなどを把握し、レース中も実況中継に耳を傾けながら目の前を通る選手たちを観るのはもちろん。モニターや電光掲示板などで選手たちの順位や動向を把握……なんて感じでレース観戦初心者には状況がつかみにくく、かなりハードルが高く感じることもあるだろう。だけどトライアルはそうじゃない。
目の前を走る選手が“難所を足をつかずにうまく越えられるかどうか?”この一点だけに集中して、「おお、越えた! すげぇ!!!」と盛り上がっていればいいだけなので非常にわかりやすい。
それに変わるがわるやってくる選手を観ていると、自ずとレベルの違いがわかるようになる。今大会では、「トライアル2クラス(青ゼッケン)」、「トライアルGPウーマンクラス(紫ゼッケン)」、「トライアルGPクラス(赤ゼッケン)」の3カテゴリー、56人の選手たちが参戦。赤ゼッケンの「トライアルGPクラス」が世界最高峰のクラスとなる。
まぁ、クラスによって通る場所の難易度がそもそも違っていたりするのだが、同じクラスの中でも上手い選手は後から走る仕組みになっているので選手の技術の違いがものすごくわかりやすい。
トライアル観戦のここが面白い! -超絶技巧-
繰り返すようだが、やっぱり世界レベルのトライアル競技の見所は選手たちの超絶技巧である。世界レベルの競技者にこんな例えをするのは失礼かもしれないけど、カンフーなんてやったこともないし、よくわかってない人がジャッキー・チェンの映画を観て、そのカンフーアクションを単純に楽しめるように、トライアルもムズかしいこと抜きに選手たちの動き、それだけで十分楽しめる。
バイクに乗った選手が、岩の上をぴょんぴょんと跳ねながら移動したり。人の背丈くらいの岩に飛び付いて登り越えたりするのが単純に面白いのだ。
選手たちが繰り出すアクションを観ているだけで楽しくなってくる。それに面白いもので選手の動きを観ていると、だんだん目が慣れてくる。「あ、この人さっきの選手より安定していてうまい!」とか、「この選手、失敗も多いけどなんだかアクセルの開けっぷりがよくて小気味よい動きをする!」なんてことがなんとなくわかるようになる。そうなればしめたもので、お気に入りの選手を見つけて応援するのが面白い。
トライアル観戦のここが面白い! -めちゃくちゃ選手との距離が近い-
他のバイク競技と違い、速度域の低いトライアル競技は、観客との距離がものすごく近く、かぶりつきで観られるのが大きな特徴だ。
ヘルメットがオープンタイプなこともあって選手たちの顔が見え、観る場所によっては選手たちの掛け声や息遣いまで聞こえるくらい。クラッチレバーの使い方や体重移動の仕方なども非常によく見える。
それに成功すれば笑顔になったりホッとしたり、逆に失敗すれば露骨に悔しそうにする表情がものすごくよくわかる。それだけに観客も感情移入しやすく楽しめるのだ。他の選手が失敗するような場所を成功させたり、華やかな動きをする選手には自然と拍手や声援が起こり、失敗すれば一緒にため息をつく。そんな一体感が味わえるのもいい。
トライアル観戦のここが面白い! -お手軽-
今回、僕も世界トップレベルの技術が観られるチャンス!と2日間会場に通い詰めたんだけど、驚くのはその観戦の手軽さだ。
なんせ前売り券を購入すれば、なんと2日間行われるトライアルを見放題。しかも、価格は高校生以上で2023年大会の場合5,300円。このほかにモビリティリゾートもてぎの駐車券が必要だけど、こちらも通しで2,000円とお買い得。つまり7,300円で世界トップレベルの技が2日間も観れてしまうのである。
ちなみに今回、このページに掲載している写真は全て一般観戦エリアから僕が撮影したもの。一般観戦チケットでもこのくらいの至近距離で選手たちの超絶技巧を見られるのだから、観に行かない方がもったいないというわけだ。
“やさしい”トライアル競技の見方
目の前を走る選手たちの超絶技巧を観ているだけで楽しいトライアルだが、全部とは言わないまでも、ルールや仕組みを多少理解しておくとさらに楽しめるようになる。そんなトライアル観戦を楽しむためのルールをちょっとだけ紹介しよう。
①セクション内の決められた場所を走る。
②地面に足をついてはいけない。
足を付くと1点の減点対象。1〜2回までの足つきは加算されるが、3回以上は何回足をついても減点3のままで加算されない。
③落車してはいけない。
転倒するのはもちろん、バイクから降りてしまうと5点の減点対象。減点1や減点2を目指して落車するくらいなら、何度でも足をついて減点3で確実に回ろう……なんて戦略上の駆け引きも成り立つのだ。
④停止したり後ろに下がったりしてはいけない。
近年加えられたルールで、より難しい条件を加えることでより競技性がアップ。ただ停止の判定は難しいらしく、「なんで? 今のは停止じゃないよ!? 」って感じで選手がオブザーバー(審判)に抗議することも。写真は、まさかのところで後進してしまい5点減点となったアダム・ラガ選手(GPクラス/TRRS)。
⑤競技は減点制。
①から④以外にも色々ルールはあるけど、これらを破ると減点対象。1セクションあたり最大5点減点が課せられ、競技を終えた時点でポイントが最も少ない選手が優勝となる。同点の場合は、より少ない時間で全セクションを回った選手の勝ち。ちなみに減点なしでセクションをクリアすることを“クリーン”と呼ぶ。
トライアルは、これらの主要ルールを踏まえて観戦するとより競技が楽しめる。ちなみに競技中はオブザーバーと呼ばれる審判数人がライダーの動きをチェック。指の本数で減点を数えているので、観客からも現在の減点状況がよくわかる。
……なんてウンチクたれてみましたが、難しいことは考えずその場に行って観るだけで、子どもから大人まで、誰もが「この選手すげー!」と楽しめるのがトライアル競技の魅力。ぜひあなたもトライアル観戦してみませんか? 今年はコロナ禍の影響で4年ぶりの開催となったけど、例年5月下旬にこの栃木県のモビリティリゾートもてぎで日本グランプリが行われるのが恒例なので、来年の予定をあけておこう!