ヤマハ「XSR125」が12月8日に発売された。これに先がけ、ヤマハ渾身の125ccクラスをイッキ試乗できるメディア向け試乗会が開催されたので、天然のヤングマシン脳を持つと言われる“ミヤケン”がレポートをお届けする。エキスパートの丸山浩さんによるインプレッション(ヤングマシン1月号に掲載!)とは異なる切り口で、フルサイズ125ccを大いに語る!
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヤマハ
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バイクの本当の楽しさを教えてくれるのがフルサイズ125
「あの山の先まで行ってみたいなあ……」。高校生の頃の僕は、窓の外はるか彼方に連なる丹沢山系を眺めて授業もろくすっぽ聞いていない、そんな生徒だった。3ナイ全盛期だったので夢が叶ったのはようやく卒業してしばらく経ってからのこと。中免は取ったけど50ccの次に手にしたのはフルサイズの125だった。
なぜ125を選んだのか、理由は簡単だ。あらゆる面でコスパが良かったから。まだ10代の貧乏学生には任意保険をファミリーバイク特約で節約できるのは大きかったし、高速道路代を払ってのツーリングなんて贅沢すぎた。でも、この下道ツーリングがとにかく楽しくて新鮮だった。
ミニバイクサイズだと途中で辛さに負けそうな距離でもフルサイズなら頑張れちゃう。険しい山でもペースを落とさぬパワーの使い方やコーナーでのバイクらしい動き方・操り方、下道ならではの頻繁に変わる路面状況や天候の変化、そういった初めてのことに感動しながらときには戸惑いながら辿り着いた先は普段住んでいる街とはまるで異なる空気を持った別の街。休憩でコインを入れた古びたジュースの自販機すらなんとも言えない達成感やトリップ感を覚えさせてくれた。僕はバイクの本当の楽しさをフルサイズ125に教えてもらったと思う。
と、いきなり自分語りで恐縮だが、そんな風にぜひとも若い人たちに乗ってもらいたいフルサイズ125の新型がヤマハから3機種も一気に登場した。その中で最も人気が出そうなのが、このXSR125。先代XSR900と同系のレトロスポーティなそのデザインは、カッコよく自分を見せたいけれど周囲を威嚇するような悪目立ちはしたくないというスマートな雰囲気を求める若い人たちの感性とうまくマッチしそうだ。賑やかな街中から緑豊かなツーリングシーンまでどんな場所でもきっと溶け込んでくれるはず。
車格は僕が乗ってた頃はもちろん近年のフルサイズ125と比べてもワンクラス以上立派になっている。小排気量だと丸形鋼管で構成されていることが多いメインフレームはXSRでは見た目も強そうなデルタボックスタイプとなっており、フロントフォークも倒立タイプ。スイングアームも角材みたいに安っぽくなくアルミ製の凝った形状になっているなどある意味250クラスより贅沢だ。
ちょっと遠目で幅広いハンドル、厚み・硬さ・幅があって腰高感の強いシート、そしてボリュームあるタンクでヤマハの新型125・3機種内では最も大柄に感じられたライポジ。ダブルシートなので前後にゆとりがあり自由度も高い。足着きは両足指先といった感じだ。【身長165cm/体重55kg】
さらに燃料タンクのボリュームある形状も特徴的。125クラスの多くはその軽量さを活かすあまりタンクや車体をスリムにしすぎてニーグリップが窮屈になりがちだったり、そもそもタンクを太ももでホールドできないものも少なくないが、XSR125は自然な感じで窮屈さは皆無。長距離を走るときやワインディングでマシンを操るときにも大きく役立ってくれる。このタンクに前方やや遠目にセットされたワイドハンドルと厚めで幅も広いシートが組み合わされていることでライポジ全体も125クラスとしては大柄となっていた。
シートはそこそこ硬めだがゴツゴツしているのではなく高級カスタムシートのようなクッション感となっており、ここにはかなりの贅沢さを感じ取れるはずだ。ただ大柄なぶん、足着きも身長165cmの僕で両足指先が接地するくらいとオンロード125としては高めになってしまった。XSR125に乗りたいと思っている小柄な女性ファンは不安かもしれないが、そこはご心配なく。XSR125のリアサスはリンク構造なのでローダウン化も容易だ。既に海外ではカスタムパーツも存在している。
125ccだと薄味になりがちなエンジンも十分に力強い
さて、走り出すと立派な車格に負けずエンジンもけっこうパワフルだった。低回転からしっかりトルクがあり、そこからスロットルを開けた際の回転上昇もなかなかに速くてスムーズ。そして7400rpmを境に吸気側カムが切り替わる可変バルブ機構=VVAを備えているため高回転域まで回しても頭打ち感が少ない。MAX15psと聞くと物足りなく思える人がいるかもしれないが、ストリートで必要なパワーをどの回転域でも効率よく引き出せるようになっている。
このVVAが切り替わるところでは明確な特性変化は起きず自然な感じでつながっていくが、メーターのギアポジションインジケーター横にVVA作動を知らせるマークが点灯するので初心者でも回してやったぜという達成感は得やすいはずだ。マフラーサウンドについては、音質・音量とも静かすぎず・うるさすぎず、しかし125クラスだと薄くなりがちだった脈動感の力強さもちゃんと出していて見事なまでに“適度”。最初は単気筒であることを活かし、もっとパンパンと弾けるような感じがあってもいい気がしたが、それだとスロットルの使い方など自ずと走りの幅を狭めてしまう。
音についてはカスタムマフラー(純正オプションにもアクラポヴィッチ製があるぞ!)でそれぞれの好みを手に入れるという選択肢があるので“吊るし”の状態ではこれで正解だ。他にエンジンで印象的だったのはアシストスリッパ―クラッチによる操作の軽さ。125だからもともと軽いのだがそれに輪をかけている。またトランスミッションが6速あるのも、流れの速いバイパスなどでずいぶん楽に感じられるのと同時にガソリン代が高い昨今、燃費面でも貢献してくれるはずだ。
バイクの乗り方を学べる安心感
ハンドリングは車重137kgから来る軽快感とともに前後17インチのフルサイズホイールが大排気量まで直結するバイクの教科書的ライディングスタイルを作り出していた。XSR125は兄弟車となるYZF-R125やMT-125よりフロントタイヤの幅がワンサイズ太めなのとハンドルバーが遠目になるのもあって、その2車と比べるとややマイルドだが、そのぶん安心感は高い。
インに切れ込んだりアウトにはらみがちなところもなく、ナチュラルにラインをトレースできる。またゆとりあるライポジは自由度も高いので、身体を入れてリーンイン、今度は逆にオフ車のようにリーンアウト、ついでにスタンディングとやってみたが、どれも一通りイケてしまうのでいろんな走り方の勉強までできそうだ。
MT-125やYZF-R125よりも安定寄りなキャラクターが馴染みやすい。
そしてバイクに身体を預けて一緒に曲がる基本のリーンウィズに戻ったところで、その優秀ぶりを再確認。この「マシンに身体を預ける感」は口で言うと簡単に聞こえるが125クラスだと実は結構難しい。タンクのホールド感はもちろんのこと、サスペンションの良さも大事だ。その点、XSR125の倒立フォークは見た目だけでなく性能も十分で、コーナー手前のブレーキングではしっかり踏ん張り、フワフワせずスムーズな旋回につなげていってくれる。
かなりハードなブレーキでも捩れるような弱さ感が一切なく、マシンの向きをしっかりキープしてくれるのには、僕が乗っていた頃のフルサイズ125と隔世の感があった。バンク角も思った以上に深い。XSR125でバイクの乗り方を覚えたら、上の排気量にステップアップしていった後でも随分ラクだろうなあと感じさせられた。
使い勝手の不足はカスタムの余地でもある
もちろん気になったところが無かったわけではない。そのひとつがブレーキだ。XSRだけフロントのブレーキキャリパーとマスターシリンダーがYZFやMTとは別のものとなっておりディスク径も少し小さくなっているが問題はそこではない。制動力自体にほとんど差は感じられず通常のストリートなら十分なレベルだ。それより気になったのは指を4本使ってしっかりした制動操作を行うには、手が小さい人や女性にはレバーがやや遠くに感じられたこと。気になった人は純正オプションとしてアクティブ製のアジャスター付きレバーがあるので安心のためにも真っ先に試してもらいたい。
もうひとつは色んな楽しみ方ができそうでシートも荷物を積みやすそうなフラット形状なのに荷掛けフックが見当たらないことだろうか。シート裏に荷掛け用ベルトループが収納されていることを期待したがそれも無し。タンデムステップステーにはフックをかけられそうだが、それだけでは不足だ。
こちらも純正オプションにリアキャリアが用意されているが、XSRでぜひとも初めてのちょっと頑張るツーリングに挑戦してもらいたい僕としてはノーマルのままでもレインウェアなど簡単な荷物くらいは積めた方が嬉しかった。まあ、リアフェンダーを裏から覗くとレールやフックを共締めできそうなボルトも見えるし、そこは工夫次第で何とかなるのかも。上手い方法やパーツが見つかったらXSR仲間作りを兼ねてSNSなどユーザー間で積極的に情報共有していくのもいいかもしれない。
普段の街乗りから遠くに見える山の向こうまで片道200kmくらいの初めてのロングツーリング、そしてノンビリ走りから元気なワインディング走行までと高速道路以外だったら1台で何でもこなしてくれそうで夢が広がるXSR125。そうそうドレスアップでもっとカッコ良いスタイルを追及してみるのにもピッタリだ。ヤマハの付けたキャッチコピーも“15年後にも笑える、今日この瞬間”。XSR125で体験できるひとつひとつが、きっと貴方のバイク人生で忘れられない出来事になっていくんだと思う。
YAMAHA XSR125 のスタイリング
YAMAHA XSR125 のスペック
車名 XSR125
認定型式/原動機打刻型式 8BJ-RE46J/E34LE
全長×全幅×全高 2030×805mm×1075mm
軸距 1325mm
最低地上高 170mm
シート高 810mm
キャスター/トレール 25°30′/88mm
装備重量 137kg
エンジン型式 水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ
総排気量 124cc
内径×行程 52.0×58.7mm
圧縮比 11.2:1
最高出力 15ps/10000rpm
最大トルク 1.2kgf・m/8000rpm
始動方式 セルフスターター
変速機 常時噛合式6段リターン
燃料タンク容量 10L
WMTCモード燃費 49.4km/L(クラス2、サブクラス2-2、1名乗車時)
タイヤサイズ前 110/70-17
タイヤサイズ後 140-70-17
ブレーキ前 油圧式ディスク
ブレーキ後 油圧式ディスク
乗車定員 2名
価格 50万6000円
色 青、橙、黒、銀
発売日 2023年12月8日
YAMAHA XSR125 のディテール
アップライトなポジションのバーハンドルに丸型液晶メーターの組み合わせ。モノクロ反転表示の液晶ながら円周タイプのタコメーターを備え、燃料残量計や時計も完備する。
ボリュームのある燃料タンクに厚みのあるシートでゆとりのあるライディングポジションを実現。体格によっては大柄に感じるかも。
7400rpmを境に吸気側カムが切り替わる可変バルブ機構=VVAを備えた水冷単気筒エンジンは、低回転トルクと高回転パワーを両立する。カムタイミングだけでなくプロファイルそのものが切り替わるタイプだ。マフラーからのサウンドは力強いが、やかましくはない。
ヘッドライトとテール&ストップランプはLED。ウインカーはオレンジバルブにクリアレンズを組み合わせたものだ。
フロントにはφ37mm倒立フォークを採用。リアサスペンションはリンク式で、アルミ製スイングアームを奢る。
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