2021年にエンジンがオールニューになったスーパーカブC125

スーパーカブの誕生60周年にあたる2018年に、初代スーパーカブC100(50cc)をオマージュしたスタイルで登場したのがスーパーカブC125。V字形の通称「かもめハンドル」や赤いシートなど、初代C100のスタイルを再現したカブのネオクラシックモデルで、スマートキーやディスクブレーキなど現代的な装備を採用していたのも特徴だった。

エンジンはカブ系で最大排気量となる空冷単気筒125ccを搭載し、9.7PSの最高出力はスーパーカブ110の8PSを上回るスペックを発揮。ハイグレードな足まわりとともにワンランク上の走りでスーパーカブ110に大きな差を付けていた。その分価格も当時のカブ110に対して11万5000円(税抜)アップとなる37万円(税抜)に設定された。

そして、2021年9月にスーパーカブC125がモデルチェンジを実施。新エンジンでロングストローク化され、圧縮比を高めることで最高出力が向上。さらに、令和2年排ガス規制にも対応している。また、従来は非装備だったABSを標準装備し、2021年10月からの二輪ブレーキ規制もクリア。ちなみに新採用のABSはフロントのみの1チャンネル仕様となっている。

カラーリングは、初代C100にちなんだブルーを継続し、新たにレッドが設定された。郵便カブを彷彿とさせる赤いカラーリングは満を持しての登場と言えるだろう。価格は3万円(税抜)アップの40万円となり、同系エンジン搭載のモンキー125やCT125ハンターカブ、ダックス125と横並びとなっている。

新型スーパーカブC125。外観の変化は特になく、エンジンが新型となりABSを標準装備。新型のみの赤のカラーリングは2018年発売されたスーパーカブ60周年記念車にも似ており、カブファンの支持が高そうだ。

身長170cmのライダーによるライディングポジション。自然な姿勢で街乗りからツーリングまで幅広い用途に対応できる。ニーグリップできないが、なぜか不安はない。

体重65kgの足着き性は両足のかかとが接地。シート高は新旧で不変の780mmと決して低い部類ではないが、スリムな車体が足着き性の向上に貢献している。

スーパーカブC125を新旧比較すると、微妙ながら新型に軍配

新型スーパーカブC125に乗ってみると、相変わらず走りの良さが際立っている。C125は従来型に乗った時に書いたように完全なスポーツバイクだ。ハンドリングのレスポンスに優れたカッチリとしたフィーリングで、コーナリングの限界も高そうだ。また、フロントディスクブレーキはタッチも制動力も一般的なスポーツバイクのレベルにある。

基本的にシャーシは従来型から変わっていないため、同じ印象になるのは当然のこと。しかし、エンジンがオールニューになってもその違いがよく分からないのは意外だった。試乗後にスペックを調べてみると、パワーはわずか0.1PS向上しただけで、ミッションは1~4速まで全て同じ変速比だったのだ。

厳密には1次/2次減速比が異なるため完全一致とはいかないが、パワーバンド7500rpmで1~4速の理論最高速は新型が38km/h、61km/h、82km/h、102km/hなのに対し、従来型は37km/h、60km/h、81km/h、102km/hとほとんど変わらない。新旧スーパーカブC125の違いはABSの有無が最も大きな違いと言ってもいいだろう。

しかし、比較すると「新型の方が良かった」というのが結論。まず、わずかだがメカノイズが低減されているように感じられるのが好印象で、さらにロングストロークエンジンのパワーフィールが心地いい。この特徴は、同系エンジンの新型モンキー125の方が5速MT+トルク型スペックで分かりやすかったが、スーパーカブC125でもその素性を感じられた。

新型スーパーカブC125のエンジンはタイのスーパーカブ110をベースに発展したものだ。モンキー125と同系だが、最高出力はモンキー125の9.4PS/6750rpmに対し9.8PS/7500rpmと高回転・高出力化されている。

装備が接近した新型スーパーカブ110に対してスーパーカブC125のアドバンテージは?

そして、気になっていたのは2022年に発売された新型スーパーカブ110との違いだった。なぜかと言うと、新型110は、C125と同じフロントディスクブレーキと前後キャストホイールを装備し、シャーシはほぼ同じ仕様に追い付いているためだ。これにより、C125の存在意義も薄れてしまうのではないかと考えたのだ。

しかし、新型カブ110に乗ってみるとその走りはスタンダードカブシリーズの域を出ないものだった。確かにディスクブレーキの採用でかつてのドラムブレーキによる"カックン"としたフィーリングは解消された。また、キャストホイール化によるチューブレスタイヤの採用はパンク時の対応を考えると非常に心強い装備と言える。

それでも新型110の走りがC125のスポーツバイクのようなフィーリングになっていないのは、サスペンションの違いが大きいだろう。C125はサスストロークが確保されている上、しっかり減衰力が働いているのだ。対して、新型110のサスは従来型そのままという印象で、バネっぽいチープな走りが、これはこれでカブらしいというものだった。

装備が接近したのに反してこの2台の価格差は、12万5000円(税抜)と逆に1万円も拡大している。ともにディスクブレーキとキャストホイール&チューブレスタイヤを装備しているので、新型カブ110のお買い得感は高まったと言える。それでも新型カブC125の価値は色褪せるものではなく、オンロードカブ最高峰の高級感と走行性能は熟成されているのだ。

フロントディスクブレーキにはABSが追加された。キャストホイールとチューブレスタイヤは従来からの装備で銘柄はIRC製NF63B。これは新型スーパーカブ110にも標準装備されることになった銘柄だ。

リアブレーキはドラムでABSは非装備。タイヤはチューブレスのIRC製NR94Lというのも従来と変わらず。同じものを新型スーパーカブ110も標準装備することになった。

シートは110よりも厚みが抑えられ、形状もなめらかに形作られたもので高級感もある。シート高は新型110よりも42mm高くなっているが、C125の方がスリムな感じだ。キャリア面積はカブ110の半分程度しかなさそう。

リアキャリアは小ぶりだが、積載性は及第点。キャリア四隅に荷掛けフックがあり、ゴム紐が掛けやすいよう配慮されていた。

シート下には3.7Lの燃料タンクが設置されている。シートはイグニッション連動でロックも可能。タンク前方には二つのヘルメットホルダーが用意されている。対してカブ110は車体右側にキー式のメットホルダーが一つある。

初代スーパーカブC100をモチーフとした通称"カモメハンドル"がスタイリッシュ。ヘッドライトやウインカーはLEDを採用している。

縦長のテールランプやウインカーも初代スーパーカブC100をモチーフにしたデザイン。灯火類などスタイルは従来型を踏襲している。

従来型から踏襲のスマートキー。キーをポケットに入れておくだけで操作できるので楽チン。アンサーバック機能もある。ちなみに新型110は物理キーを継続採用している。

オンロードタイプのカブはハンドル幅も広くなく、すり抜けも困らない。ハンドルスイッチ類も美しくデザインされている。

二重円のメーターは内側に液晶を配置し、ギアポジションインジケーターや燃料計、時計、距離計を表示。メッキの淵にある四角いボタンが切替スイッチだ。

2021年型スーパーカブC125主要諸元

・全長×全幅×全高:1915×720×1000mm
・ホイールベース:1245mm
・シート高:780mm
・車重:110kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc
・最高出力:9.8PS/7500rpm
・最大トルク:1.0kgf-m/6250rpm
・燃料タンク容量:3.7L
・変速機:4段リターン(停車時はロータリー式)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=70/90-17、R=80/90-17
・価格:44万円

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