クルマの場合、ドアを開けて乗り込んでしまえば、運転している人の姿はほとんど見えません。
極端な話、パジャマで運転していたとしても、すれ違う人にはたぶん分からない。
では、バイクはどうでしょう。
フルフェイスヘルメットをかぶって、上下パジャマで走っている。
……かなり異様です。
つまりバイクは、「乗っている人が全部見えてしまう」という乗り物です。
バイクは「人が乗って完成する」乗り物
バイク単体のデザインは、とても美しいものです。
タンクの形、エンジン、フレーム、ホイール、マフラー。メーカーのデザイナーが考え抜いた形がありますし、オーナーが自分好みにカスタムしている場合もあります。
でも、公道を走るバイクには必ず人が乗っています。
ヘルメットをかぶり、ジャケットを着て、グローブをして、ブーツを履いている。その姿まで含めて、周囲の人にはひとつの「バイク」に見えているのではないでしょうか。
バイクとライダーは、文字どおりむき出しです。
だからこそ、
バイクは格好いい。じゃあ、乗っている自分はどうだ?
と、振り返ってみてもいい気がします。
バイクはピカピカ。服はボロボロ?
休日の朝。
洗車して、ワックスをかけて、ホイールまできれいにする。カスタムパーツも付いていて、自分のバイクを眺めながら「やっぱり格好いいなあ」と思う。
よく分かります。
でも、ちょっと、自分の姿も鏡で見てみる。
ジャケットはヨレヨレ。ブーツはボロボロ。グローブには穴が開きそう。
バイクはあんなに大切にしているのに、自分の装備は何年もそのまま。
……なんてことはないでしょうか。
もちろん、古いウェアが悪いという話ではありません。長年使った革ジャンなんて、むしろ新品にはない味があります。
ただ、バイクと同様に、服や装備も消耗品です。
ファスナーはきちんと閉まるか。ブーツのソールは減っていないか。縫い目は傷んでいないか。プロテクターはちゃんと機能しているか。
バイクのオイルやタイヤを確認するように、たまには自分が身につけているものも点検してみたいところです。
高価なウェアを着ればいい、という話ではない
ここで誤解してほしくないのですが、「高いライディングウェアを買いましょう」という話ではありません。ブランド物である必要もないし、全身を最新モデルで固める必要もありません。
まして、
「ライダーならこういう格好をするべきだ!」
なんて決まりもない。
ハーレーに乗っているから革ジャンじゃなきゃいけないわけでもないし、アドベンチャーバイクだから全身ラリーウェアじゃなきゃいけないわけでもない。
カジュアルでもいい。アウトドア系でもいい。クラシックでもいい。自分が好きな服装でバイクに乗ればいいと思います。
ただし、そこにはひとつ条件があります。
バイクウェアは、ファッションであり安全装備でもある
バイクでは、人間の体が外に出ています。転倒したとき、クルマのように車体が守ってくれるわけではありません。
だから、格好よさよりも先に安全性があります。
ヘルメット、グローブ、長袖、長いパンツ、足を守れる靴。できればプロテクターも使いたい。
長いストラップや裾など、風で大きく暴れたり車体に巻き込まれたりしそうなものは避けたい。暑さや寒さで運転に集中できなくなるような格好も考えものです。
とはいえ、難しく考える必要はありません。
安全に走れる範囲の中で、好きな格好を楽しむ。
それでいいと思うのです。
バイクウェアって、ファッションであると同時に、安全装備でもあるんですよね。

「バイクに似合う」より「自分が気に入っている」
バイクと服装を合わせるのも楽しいものです。
「今日はこのジャケットにしよう」
「このヘルメットなら、このバイクに合いそうだ」
そんなことを考える時間も、バイク趣味のひとつだと思います。でも、「このジャンルのバイクだから、この格好をしなければ」というところまでいくと、ちょっと窮屈です。
自分が気に入っている。
着ていて気持ちがいい。
そして、安全にバイクに乗れる。
まずはそれで充分。
そこへ少しだけ清潔感やサイズ感を意識すると、ずいぶん印象は変わります。

道の駅では、けっこう見られています
ツーリングへ行くと、道の駅やサービスエリアに立ち寄ることがあります。
そこにはライダーだけではなく、家族連れ、お年寄り、子ども、プロドライバーなど、いろいろな人がいます。
バイクにまったく興味がない人もいるでしょう。
逆に、「あのバイク、格好いい!」と見ている子どもがいるかもしれません。
そのとき、バイクから降りてきたライダーも当然見られています。服装がビシッと決まっていても、駐車場所を無視したり、大声で騒いだり、周囲に迷惑を掛けていたら格好よくは見えません。
結局のところ、格好いいライダーって、服だけじゃないとも思います。
バイクの扱い方だったり、周囲への気遣いだったり、ちょっとした立ち居振る舞いだったり。そんなところまで含めて、ライダーの「姿」なのだと思います。
せっかく格好いい乗り物に乗っているのだから
バイクって、格好いい乗り物です(これはもう、ひいき目込みで言わせてもらいます)。
だったら、そこに乗る自分自身のことも少しだけ気にしてみる。安全に走れる服装で、自分なりに格好よく。そしてバイクを降りたあとも、ちょっとだけ格好よく振る舞う。
道の駅ですれ違った誰かが、
「ライダーって格好いいな」
「自分もバイクに乗ってみたいな」
と思ってくれたら…。
もしかしたら、その人がいつか免許を取って、今度は自分がバイクに乗る側になるかもしれません。 そうやって、バイクを好きな人がひとり、またひとりと増えていく。 バイク文化って、案外そんな小さな「格好いいな」から続いていくものなのかもしれません。
せっかく格好いいバイクに乗っているんです。
乗っている自分自身も、ちょっとくらい「格好よくありたい」と思う次第です!
(おしまい)

