冒険心と気軽さのバランスがいいのよ

僕は出不精だ。バイクで走るのはもちろん好きだが、それ以上に1日中、家でゴロゴロして過ごすのも好きなのだ。

たとえば休日の前の晩。「明日は何しようかな? 早起きしてツーリングにでも行こうか」と、毎回考えている。そう、毎回である!! しかし実際には、朝9時前くらいに起きて朝食を食べ、コーヒーを飲みながら新聞を読んで……なんてやっている間に10時をとっくに回っている。

「あぁ~、もうこんな時間だ。着替えなきゃ……あ、テレビが面白い!」

そうしてダラダラダラダラしていると、時刻はとっくに11時を過ぎ……「そろそろお昼ご飯かな」。

こんな感じで、結局1日中何もしない日が多い。じつに多いのだ!

いや、正確には何もしていないわけではない。インスタグラムなどのSNSに上がっているツーリングや林道やカスタムバイクの写真を見て、バイク気分を盛り上げている……ベッドでゴロゴロしながらね。

そう、僕は出不精なのだ! 毎週末ごと「出かけたい」とは思っているが、「さあ、これからバイクに乗るぞ!!」と考えるうちに、準備だなんだかんだと面倒臭くなってしまう……。

だけどこれって、逆に言えば、考える間もなくサクッと出かけられれば解決するのではないか。

そう、サクッと出かけられるバイクといえば、スクーター! ……なのだが、正直、スクーターのスタイリングは好きではない。あくまでも個人的な好みの問題だが、自分で所有するならSRやXR BAJAといった、いかにも「バイク!」なスタイリングに惹かれるのだ。

そこでADV160である。そのスタイリングはたしかにスクーターだ。だけど、フロントマスクやテール周り、跳ね上がったマフラーからはアドベンチャーツアラーらしさをビンビンに感じる。

テーパータイプのハンドルや真四角のLCDメーターもおおいに気分を盛り上げてくれるし、専用に開発されたブロックタイヤも見逃せない。

それでいてスクーターの利便性も健在。シート下トランクの容量は約29Lでヘルメットを収納可能で、フロントインナーボックスも装備。もちろんトランスミッションはオートマチックで、気軽なイージーライドが可能だ。

もちろんスクーターだって、出かける前には準備が必要だ。だけど、バイクの出し入れは軽くてカンタン。荷物もシート下トランクに詰め込めばOK。何よりオートマというのがお気楽で、出発前の心理的プレッシャーをグッと軽くしてくれる。それでいて見た目は無骨なアドベンチャースタイルなのだ。出不精だけどバイクの満足感は得たいというワガママ放題な僕にピッタリではないか!

 

趣味と実用のいいとこ取り

本当にADV160は僕にとってぴったりなバイクなのか? 僕がバイクに求める要素はいろいろあるが、今回の「出不精解消要素」に絞って考えていくと……

・所有欲を満足させるスタイリング
・サクッと出かけたくなる気軽さ
・気が重くならない車体の軽さ
・走り出したらどこまでも行きたくなる走りの楽しさ

の4点だ。では、ADV160の詳細を見ていこう。

その気にさせるライディングポジション

ADV160は中央が太く、グリップ部は細くなるテーパーハンドルを採用。幅が広めで、ハンドルを押さえつけながら乗る様はまるでモトクロッサーかモタードのよう。それでいて足元はステップボードなのでライディングポジションの自由度は高く、ツーリングや街乗りも快適にこなしてくれる。

アドベンチャーツアラーにしか見えないフロントマスク

エッジの効いたフロントカウルにデュアルタイプのLEDヘッドライトを装備。タフなイメージはどこまでも走るアドベンチャーツアラーそのものだ。

また、2段階で高さを変えられるウインドスクリーンは快適性を高めつつ、デザインのアクセントにもなっている。

 

リアビュー&マフラーも無骨

跳ね上がったマフラーや、X型発光ラインによって「クロスオーバー」をイメージしたテールランプなど、リアビューもフロントに負けず劣らず無骨かつスポーティなデザイン。

 

タコメーターも装備したLCDメーター

ラリーマシンやアドベンチャーツアラーを思わせるスクエア形状のLCDメーターもお気に入り。タコメーターを装備しているのも高ポイントだ。

また、電圧計や燃料、平均燃費に時計など、小ぶりながらも必要な情報がしっかりと表示されている点も嬉しい。

 

4バルブ156ccへ進化したエンジン

前モデル・ADV150が水冷4ストロークOHC2バルブ149cc単気筒だったのに対し、ADV160は水冷4ストロークOHC4バルブ156cc単気筒へ進化。高い環境性能を維持しつつ、最大トルクと最高出力をともに向上している。

また「Honda セレクタブル トルク コントロール」を新たに装備。雨の日やダートでも心強い味方になってくれるだろう。

 

オフロード感を高める専用タイヤ

タイヤはADVシリーズのために専用に開発されたもの。ブロックパターンながら舗装路でも安定して走ることができるし、もちろんマシンの雰囲気も二倍増し!! やっぱり足元は大切ですからね~。

ウェーブタイプのブレーキローターは防汚効果や放熱効果に優れ、見た目の印象もアップ。

 

スマートキーは「気軽なライディング」には外せない

ポケットに入れたままでキーのON/OFFやハンドルロック操作ができる「Honda SMART Keyシステム」を採用。

街乗りもツーリングも、より気軽に楽しめるのは嬉しい限り!!

 

シート下トランク容量は29L

スクーター最大のメリットと言ってもよいシート下トランク。ADV160は29Lの容量を備えていて、ヘルメット+様々な物を収納可能。

他にUSB(Type-A)ポート付きのフロントインナーボックスもある。

 

ヒールグリップでスポーツ走行も安心

ADV160のフレームは多くのスクーターと同じくアンダーボーンタイプ。ただし、旧モデルのダブルクレードルを受け継ぐ高剛性タイプ、しかも新開発フレームとなっている。

そのためフットスペースはフラットではないが、その代わりにヒールグリップができるのがメリット。車体をしっかり安定させることができるので、ワインディングやダートでも心強い。

 

唯一の減点ポイントは跨り方!?

前述の通り、ADV160のフットスペースはセンタートンネルによって左右に分かれている。そのため、前から足を通して座ることができず、通常のバイクのように足を挙げて跨らなければならない。

スクーターの便利さのひとつに「サッと座れること」があると思っている僕にとって、これだけがガッカリしたポイント。でも、それによって安定した走りが楽しめるのだから、仕方がないと納得はできる。

 

高速道路もダートもそれなりに楽しめて、街乗りやワインディングはサイコー!

実際に走ってみると、ADV160がスクーターとアドベンチャーツアラーの良さを持ち合わせていることに、あらためて気付かされる。

まず跨ってみると、旧モデルよりも15mmダウンのシート高780mmによって、足付きは良好。幅の広いハンドルが“やる気”を盛り上げる。

走り出すと、156ccエンジンは街中で不足を感じることはない。ライディングポジションは自由度の高いものなので、のんびりと走ることも、ちょっと“攻めた”気分を味わうことも可能。買い物ではどっしり座ってスクーター気分、ツーリングではハンドルを押さえつけるようにしてアドベンチャー気分という風に、シーンに合わせて気分の盛り上げ方を変えると、より正しくADV160を楽しんでいる気になる(笑)。

今回は房総半島にツーリングに行ってきたので、アドベンチャー気分で試乗だ。

ワインディングではフットスペース後方に足を下げてヒールグリップ。ハンドルを押さえつけるようにして、コーナリングをクリアしていけば、スポーツバイク顔負けの走りが楽しめる。と言いつつも156ccのエンジンなので、パワーもそこそこ。安全な範囲で満足できるのも嬉しい。

さらに今回は高速道路も走行。125ccクラスと比較されることが多い軽二輪コンパクトスクーターだが、この差はやっぱり大きいといえよう。

とはいえ、100km/h巡航は正直辛い。80~90km/hほどで巡航し、たまに追越車線に出て、すぐに走行車線へ……という使い方がメインになるだろう。80km/hで走行車線をのんびり走っている分には不快な振動もほとんどなく、快適に走ることができた。「攻めのワインディング」に対し、「高速道路はあせらずのんびり」が正解のようだ。

新設計フレームとサスが非常に良くできていたのも好印象。高速道路ではギャップ越えでも安定していて、ハイスピードでも変な挙動はなし。ワインディングでも路面追従性の良さに感心した。

スクーターはバイクに比べると接地感や安定感に不安があるが、ADV160では非常に高い安心感のなかで走ることができた。

そしてそれは、今回ちょっと入ったフラットダートでも同じこと。サスの良さが際立ち、「Honda セレクタブル トルク コントロール」の効果も相まって、多少のダートならグイグイ走っていける。

結論。ADV160は荷物を積んで気軽に走り出せて、自由度の高いライポジとATによるイージーライドが可能。コンパクトな車体は気遣いせず、軽くて取り回しもラク! それでいて随所のアドベンチャーらしさが所有感を満足させてくれて、ワインディングもダートも楽しく走れるスクーターということが分かった。

まさに、「気軽に冒険心を満たしてくれる週末の最高の相棒」といえるもの。これなら僕の出不精も治っちゃいそうだ!

【SPECIFICATIONS】
全長×全幅×全高 1950×760×1195(mm)
シート高 780mm
車両重量 136kg
燃料タンク容量 8.1L
水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒
排気量 156cc
最高出力 12kW(16PS)/8500rpm
最大トルク 15N・m/6500rpm
タイヤサイズ F:110/80-14・R:130/70-13
47万3000円(税込)

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