ライダーが増え、バイクが売れている今、その背後にある不安や不満を払拭するために、各界のトップはどう考えているのか? 2022年1月に自民党二輪車問題対策プロジェクトチーム(以下PT)の2代目座長に就任した三原じゅん子参議院議員に、誰もが楽しさを享受できる持続可能なバイクライフをこの先も実現するための考えについて尋ねた。

●取材/文:ヤングマシン編集部(Nom) ●写真:田中淳磨 ヤングマシン編集部

【三原じゅん子】参議院議員/自民党オートバイ問題対策プロジェクトチーム座長/自民党モータースポーツ振興議連事務局長。平成22年7月第22回参議院議員通常選挙・全国比例区にて初当選、平成28年参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて2回目の当選、令和4年参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて3回目の当選。http://www.miharajunco.org/

高速料金問題は自民党PTの1丁目1番地。12年かかって一歩進んだと思います

2022年4月3日からスタートした“ETC二輪車定率割引”。土日祝日限定/事前に専用サイトで自分のETC機器を登録/片道100km以上の走行が必要などの条件付きとはいえ、高速料金が正規料金の8分の5(37.5%割引)=普通車の半額になるということで、日ごろ不当に高いと思わざるを得ない高速料金を払ってきたライダーたちは積極的にこの制度を利用。利用件数は、割引開始から3カ月経過した6月末時点で約14万5000件に達した。

料金が適正と思えれば、ライダーも積極的に高速道路を利用するという事実が浮き彫りになり、現在は軽自動車と同じ枠組みにされているバイクの高速料金を、普通車の半額というバイク専用の料金設定とすべきだという声がライダーの間で巻き起こっている。

定率割引の条件

ETC機器を装着していること
片道100km以上の走行
NEXCO中日本の「速旅」に会員登録
専用サイトで個人情報やETC機器管理番号、ETCカード番号などを登録
同サイトで利用日を申請

上の2つの利用証明書は、筆者が定率割引のテストをした際のもの。関越道・練馬→伊香保間の料金が上下で変わっている(下が定率割引料金)のが分かる。また、帰路は都合で青梅で降りたため、走行距離が100kmに満たず、割引が受けられなかった。

この4月から自民党PTの2代目座長に就任した三原議員は、このライダーたちの声をどう受け止めているのだろう。

「高速料金については、逢沢先生(編注:初代PT座長の逢沢一郎衆議院議員)のときから我々の強い思いは一切変わっていなくて、4輪の普通車の半額にするんだということを1丁目1番地として取り組んできました。

私も自民党オートバイ議連に入って13年目になりますが、この問題をずっとやってきて、国交省もNEXCOも2輪の料金を下げてほしいという我々の訴えを頑なに拒んできましたが、2022年4月から定率割引という形で普通車の半額がやっと実現したんです。

12年かかりましたけど、まずは第一歩かなと思っています。2017年に2輪車ツーリングプランがスタートして、やっと少し進んだと思っていましたが、やはり定率割引でさらに大きく進んだ。いま、日本自動車工業会やAJ(全国オートバイ協同組合連合会)などが定率割引に関するアンケートを取っていると聞いていますが、その結果が秋以降に出てきます。また、定率割引を行なったことで高速道路の収支に変化が起こっているのかどうかも、NEXCOから出てきます。ただ、割引になったとはいえ、高速道路を使うライダーが増えているのですから、収支はそんなに変わっていないのではないかと思っています。

11月27日(編注:北海道は10月30日)で今年の実施期間が終了しますから、ライダーのアンケートや収支の結果などのデータを踏まえて、PTで本年の総括をして、2023年4月からの新たな定率割引の形を提言していきたいと思っています」

平日も利用できるなど、もっと使いやすくしたい

定率割引はありがたいが、土日祝日限定ではなく平日も含んでほしい、片道100kmという適用走行距離ももっと短くしてほしいなど、ライダーの間には定率割引の使いにくさを指摘する声も多く挙がっている。

「土日祝日のみ適用という条件も検討しないといけませんね。今年の利用状況から判断しなければいけませんが、定率割引を平日に適用しても高速道路の収支には影響はないんじゃないかと思っています。走行距離にしても、30kmとか50kmというところで調整する必要があると思っています。私たちPTはそういう方向で進めようという気持ちで一致していますので、いきなりは難しいかもしれませんが、平日の適用と走行距離の低減を目指していこうと思っています」

土日祝日に加え平日にも適用、走行距離も大きく短縮されるとなると、“いつでも/どこでも普通車の半額”というバイクユーザーの願いが叶うことになる。

「そうです、そうなるとずっと私たちPTが主張してきたいつでも/どこでも普通車の半額がほぼ現実になるわけです。そんな状況になったら、国交省もNEXCOもいつまで2輪専用料金の設定はできないと拒み続けるのかと。バイクの料金を普通車の半額にしても、収支は変わらないじゃないかということを突き付けて、国交省やNEXCOが折れざるを得ない状況を作っていくしかないのだろうと思っています。

私たちPTにとっては、高速料金が一番の課題でありまして、まずこれをクリアしないと次に進めないんです。高速料金以外にも、いまバイクを取り巻く問題は山積しています。駐車場問題もしかり、免許制度についても考えていかないといけない。そして、環境問題も待ち構えています。そういう問題に対して、メーカーの考えやユーザーの気持ちなどをしっかりと受け止めながら対処していかなくてはいけないと思っています」

いつでも/どこでも普通車の半額を実現するために、我々ライダーができることはなんだろう。

「やはり積極的にいまの定率割引を使っていただくことが何よりだと思います。ただ、バイクのETC普及率も徐々に上がってきてはいますが、まだ少ない。定率割引を受けるにはETC機器を装着しなければいけないわけですが、2輪用機器の価格やセットアップ料金が高いのがネックになっていますよね。そのために購入助成金を出すということになってはいますが、なかなかあの金額(編注:’22年1月から6月まで行われたETC車載器購入助成キャンペーンでは1万円だった)ではバイクのユーザーさんが付け切るには至っていませんね。ですから、助成金についても力を入れてやっていきたいと思っています。そうすることで、私たちもライダーのみなさんに『高速道路を使ってください!』と胸を張って言えるようになると思っています」

PT座長に就任後の2022年1月に開催された『二輪業界の明日を考える座談会』で、高速二人乗りなど数々の規制緩和に尽力した現オートバイ政治連盟会長の吉田純一氏(右)/現AJ会長の大村直幸氏(左)とともに就任の決意を語った。

今年の結果をしっかりと総括して、より進化した定率割引を訴えていく

今後、高速料金、定率割引に関して、自民党PTはどのように動くのだろうか。

「2023年の4月から新たな定率割引を実現することを目指すとなると、今年の11月には動き出さないといけませんね。そして、1月には今年の定率割引の結果をしっかりと総括して、4月からどうするかを決めないといけません。継続することがもっとも大事だと思っていて、1回だけやって止めちゃうとか、間が空いちゃうというのは、ユーザーを一番がっかりさせることなので、とにかく継続することを優先して、そのうえで平日の適用/距離の短縮など、先ほど申し上げたような形に進化させようと考えています。

2022年7月の参議院選挙のときも、街頭で『バイクのことをお願いしますね』と何回言われたか。三原=オートバイと思ってくださっている方がたくさんいて、『高速の料金のこととか、ありがとうございます』などと声をかけてくださって、関心を持っていただいているのがすごく嬉しいです。いま新しいライダーがどんどん生まれていますけど、高速道路の料金が割高だとか、駐車場がないとか、なんだかバイクって使いにくいと思われたくないですよね。こんなに楽しいものはないと思ってもらえるのがバイクなのに、乗り始めてみたら『あれ? 使いにくいなぁ』と感じさせるのは嫌ですね。日本には4大メーカーがあるのに、いつの間にか販売台数もどんどん下がってきていることを考えると、これは根本から取り戻していかないといけないと思っています。12~13年前に高速道路料金のことを始めたときは、国交省もNEXCOもまったく動きませんでしたが、今回、こうやってしっかり動きが出てきた。同じようにほかの問題に関しても頑張っていこうと思っています」

自民党PT2代目座長の三原議員の今後の発言や行動を、ライダー全員で注視して応援していきたいと思う。

三原議員の提言

平日にも定率割引の適用
走行距離を短縮
ETC助成の促進

〈余談〉三原じゅん子さん、ヤングマシンに登場す!

人気の女性タレントと読者代表がデートをするという設定の、本誌の人気長寿企画「ぶぁいくdeでいと」(’84年3月号~’86年12月号まで連載)に、タレントをしていた当時の三原じゅん子さんも登場してくれていた。担当は筆者だったはずだが、さすがに昔過ぎて記憶にない…。

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