「イチバン速いヤツは誰か?」その問いは、欧州で300km/h自主規制が始まった’01年以降ほぼ意味を持たなくなったが、近頃はまた様相が変わってきた。『ヤングマシン』誌が長年に渡って取り続けてきた実測結果を刮目せよ!
●まとめ:ヤングマシン編集部(沼尾宏明)
※当記事に掲載されている各テストは、路面状況/気温/ライダーなどが異なり、厳密な同一条件ではありません。すべて参考数値とお考えください。また、『ヤングマシン』本誌以外の計測データが一部含まれています。ご了承ください。 |
Contents
- 17年ぶりに大台突破が出現。バトル再燃なるか?
- 第1位〈311.5km/h〉スズキGSX1300Rハヤブサ[’99]:速すぎた禁断の世紀末覇王。メーター読みで325km/h!
- 第2位〈306.17km/h〉BMW S1000RR Mパッケージ [’20]:現役スーパースポーツが伝説に迫る!
- 第3位〈305.88km/h〉ドゥカティ パニガーレV4S[’18]:久々の大台超えに拍手喝采!
- 第4位〈301.1km/h〉カワサキ ニンジャZX-12R[’00]:意地のラスト300マシン
- 第5位〈298.99km/h〉カワサキZZR1400 [’11]:牙を研ぎ続けた14Rの前身
- 最高速トップ20:1000cc級フルカウル車のみ名を連ねる結果に
- 最速マシンヒストリー:’90年に300km/h時代が開幕。後半にバトルが激化
17年ぶりに大台突破が出現。バトル再燃なるか?
’90年代末期に激化したトップスピード勝負は、’01年に欧州で”待った”がかかり、自主規制で300km/h速度リミッターが装着される事態に。以降はその精度や最高速までの到達速度を争うバトルとなってきた。
そのキッカケとなったのが、’99年にデビューした初代ハヤブサである。量産公道バイクとして初めてノーマルで300km/hの壁を突破。そのあまりの速さが欧州委員会で問題視され、メーカーは自主規制として”300オーバー”を自ら封印したのだ。
そんな伝説のマシンである初代ハヤブサの最高速は、311.5km/h。’99年の計測から22年間、いまだ1位に君臨し続けている金字塔だ。
しかしながら’18年以降に異変が起きている。リッタースーパースポーツなどに採用されるレース用モードで”300超”を出せるBMW S1000RRやドゥカティ パニガーレV4が登場。滑り込みで規制前に間に合った’00 ZX-12Rなど過去のスピードスターや、リミッターにより300直前で頭打ちになっていた’00〜’10年代のマシンを尻目に、大台を突破したのだ。クローズド限定にせよ、再び記録更新の芽が出てきたのは歓迎すべきだろう。
最高速で重視されるのは、トップエンドでの馬力はもちろん、空力性能だ。特に270km/hあたりから速度が高まるに従い、空気抵抗が2次曲線的に増えてくる。この領域では、風洞実験などで導き出した空力カウルが必須。多少のパワーアップや軽量化より、いかにライダーが乗った状態で空気を整流できるかが記録に関わってくる。
第1位〈311.5km/h〉スズキGSX1300Rハヤブサ[’99]:速すぎた禁断の世紀末覇王。メーター読みで325km/h!
’99年に投入された初代ハヤブサが、ストック状態で300km/hを悠々と突破。175ps+ラムエアに加え、ライダーと一体化する曲線エアロフォルムが記録に貢献した。’01年以降に300km/hリミッターが導入された影響もあり、現在に至るまで記録は破られていない。
※伊『INMOTO』誌’99年の計測データ
【’99 SUZUKI GSX1300R HAYABUSA】
スペインの試乗会では、レッドゾーンまで余裕を残しながら、メーター325km/hを記録。後発のZX-12Rよりも余裕で大台超えを連発するほど、飛び抜けた速さだった。
実測300を目指し、各部の形状と位置を綿密な風洞実験で検証。シングルシートカウルはリヤの乱流を抑える。メーター文字盤には「350」まで目盛りを刻む。
第2位〈306.17km/h〉BMW S1000RR Mパッケージ [’20]:現役スーパースポーツが伝説に迫る!
’19で全面刷新された直4スーパースポーツは、メーター読みで310km/h、実測でも大台を突破した。走行モードはサーキット専用の”レース”で、実測トップとなる214psのハイパワーも功を奏した格好だ。いずれハヤブサの大記録を抜くか? ※JARIにて計測(’20年4月号)
第3位〈305.88km/h〉ドゥカティ パニガーレV4S[’18]:久々の大台超えに拍手喝采!
1100ccで214psを叩き出す’18年型のパニガーレV4Sも大台を突破。速度による点火カットがなく、ZX-12R以来久々に”壁”を超えた記念碑的マシンだ。ウイング付きの現行型は未計測なので、ぜひテストしたい! ※JARIにて計測(’18年8月号)
第4位〈301.1km/h〉カワサキ ニンジャZX-12R[’00]:意地のラスト300マシン
最速の称号を奪還すべく’00年に誕生。初代ハヤブサ超えの178psで、ウイングまで備えた。加速はハヤブサを凌駕したが、最高速はギリギリ300台。’00初代のみ350km/hメーターだ。
※伊INMOTO誌・’01年の計測データ
第5位〈298.99km/h〉カワサキZZR1400 [’11]:牙を研ぎ続けた14Rの前身
ZX-12Rの発展型として開発。新作の1352ccユニットを搭載し、’08以降は190psをマークした。最高速までの安定感が素晴らしく、300km/hリミッターも自然かつ精度が高い。※JARIにて計測(’11年9月号)
最高速トップ20:1000cc級フルカウル車のみ名を連ねる結果に
20位圏内にノンカウルはランクインせず。’01年以降はリミッターで290km/h台に留まるが、本来の実力なら大台を超えそうだ。なお国内仕様には180km/hリミッターが装備されてきたが、近年は大型車を中心に非採用のケースもある。
▲最高速トップ20 (※は米CYCLEWORLD誌が測定)
※番外1〈322.85km/h〉カワサキ ニンジャH2R [’15]:またも裏1位はコイツ!
クローズド専用のRは、賞典外ながら300km/hさえ余裕でオーバー。18年にはボンネビルでほぼノーマルのまま337.064km/hを記録している。川崎重工の航空宇宙カンパニーが協力した空力カウルがミソだ。
※番外2〈180.0km/h〉カワサキ ニンジャZX-25R [’21]:さすがの4発。まだ伸びる!
メーター読みは187km/hで、実測では180km/h。ピーク域では1万8000rpmのレブリミッターが時折作動する。マフラー交換と最終減速比ロング仕様なら実測191km/hまで伸びた。
〈参考〉バイク最速のギネス世界記録は605.697km/h。心臓に隼ターボ×2を抱く!ギネス世界記録に登録されているバイクの最高速は、’10年9月、伝統のボンネビル最高速アタックでマークされた。ストリームライナーと呼ばれるロケット型のカウルをまとい、ハヤブサの1299cc直4をターボ仕様にして2機搭載! 馬力は1000psオーバーだ。 |
最速マシンヒストリー:’90年に300km/h時代が開幕。後半にバトルが激化
大きく立ちはだかっていた「300」超えが現実的になったのは’90年。147ps+ラムエアの初代ZZ‐R1100(C1)が登場し、実測280km/h、カスタムで大台という状況が実現した。’93年にはツインラムエアのD型が登場し、不動の人気を獲得する。ちなみに空力の関係で最高速は若干C型が上回っていた模様だ。
’90年代前半はカワサキ=世界最速の時代だったが、’96年にホンダが”世界最高性能”を謳うCBR1100XXスーパーブラックバードを投入。メーター読み300/実測290と大台突破が目前に迫った。その3年後、実測で大台を楽々超える初代ハヤブサがスズキからデビューし、名実ともに最速王に君臨することとなる。
【’90 KAWASAKI ZZ-R1100】CBR1100XX以前の王者。速さだけでなく、扱いやすさなどの魅力を兼備し、ロングセラーを重ねた。【’96 HONDA CBR1100XX】当時最強の164psで登場。振動低減のバランサーや前後連動ブレーキなど快適性も追求した。 【’99 SUZUKI GSX1300R HAYABUSA】GSX-R1100の後継として登場。174psの大パワーに加え、俊敏な運動性能も大きな魅力だ。【’00 KAWASAKI Ninja ZX-12R】世界初のモノコックバックボーンフレームでスリム化。航空力学によるカウルと178psが自慢だ。
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