オフロードテイストのデザインや装備に加え、余裕のある車格で人気のクロスカブ110。2022年型でベース車のスーパーカブ110に合わせてモデルチェンジを敢行した。
そこで、旧型スーパーカブ110のオーナーが新型カブに続いてクロスカブ110も試乗。乗り味がより洗練され、コミューターの枠を越えた走りを見せてくれた!
●取材協力:ヤングマシン

キャリパーとサス、二次減速比はクロスの独自設定

先日、新型スーパーカブ110(JA59)と自分の愛車である従来型(JA44)を比較試乗し、洗練された乗り味に驚いた(『新旧スーパーカブ110比較試乗、購入して4ヶ月で新型が出た旧型オーナーのジャッジはいかに?』参照)。
これをベースとする新型クロスカブ110はどう変化したのか、興味津々で試乗してみた。既に市本センセイの試乗記事があるが、合わせて読んでいただければ幸いだ。

まずはモデルチェンジのおさらいから。変更点は新型スーパーカブ110に準じており、ロングストローク化された新設計エンジンをはじめ、キャストホイール+フロントディスクブレーキ、ABSなどを獲得。ただし、スーパーカブ110のフロントキャリパーが1ポットなのに対し、2ポットを採用する。
また、ロングストローク設定やギア比などの変更点もSTDと同一だが、2次減速比はスーパーカブ110の2.500に対し、2.642とローギアードだ。
さらにサスストロークは元々長かったが、新型のFサススプリングはスーパーカブより62.4mmロングに。内部にブッシュを追加し、フラットダートにも対応できる減衰力設定としている。

↑新型クロスカブ110は、ブルー(写真)グレー、ツヤ消しグリーン、くまモンブラックの4色設定。価格は従来型から2万2000円増の36万3000円(くまモンは37万4000円)で、2022年4月14日に発売された。

 

↑ガード付きのLEDヘッドライトやレッグシールドレスの外装が特徴。ホイールやリアキャリアをブラック仕上げとし、精悍な印象だ。スーパーカブ110より62・4mm長いFサススプリングを採用し、内部にブッシュも追加するなど、様々な路面での走りを想定している。

 

↑空冷単気筒は、旧型のボア50×ストローク55.6mmに対し、ボア47×63.1mmと大幅にロングストローク化された。令和2年排ガス規制をクリアしつつ、最高出力8psは同一。最大トルクは0.90kg-mで0.3kg-mアップした。カタログ燃費も66.7→67km/Lに向上している(WMTCモード)。

 

↑フロントはスーパーカブ110より10mm太い80mm幅のセミブロックパターンタイヤを履く。従来型と同じIRC製GP-5をチューブレス化した。フロントのブレーキキャリパーは2ポット。

カッチリした乗り味で車格も余裕たっぷり。スーパーカブとも一線を画す

いざ乗ってみると、以前試乗した従来型クロスカブ110とも、新型スーパーカブ110とも違う乗り物と感じた。
元々クロスカブ110は厚みのあるシートやロングサス、幅広のバーハンドルを備え、スーパーカブ110よりライポジに余裕がある。従来型クロスカブを試乗した際は、テスターの体格(身長177cm体重66kg)にもマッチし、長時間走行がラクなのが印象的だった。ただ基本的にはスーパーカブの延長線上にある、やわらかい乗り味のコミューターと記憶していた。

ところが、新型は乗り味が非常にカッチリした立派なバイクに仕上がっている。大柄な車格と相まって、原付2種(125cc)以上のモーターサイクルに乗っているような新感覚だ。

これはキャストホイール化に加え、新型スーパーカブ110とも異なるサス設定の恩恵が大きいようだ。制動時の姿勢変化を抑制し、乗り心地の向上を狙ったのはスーパーカブ110と同様ながら、よりストロークが長く、1サイズ太いブロックパターンタイヤとの相性が抜群。タイヤが路面を捉え、安心感と余裕のある乗り心地が素晴らしい。

もちろんフロントの2ポットキャリパーも、スーパーカブ110よりカッチリしたタッチで一段とスポーティ。剛性の高い足まわりと大柄な車格が相まって、車体だけなら250cc級のスリムなネイキッドを走らせているような不思議感覚。それでいて車重は107kgなので110らしい軽快なハンドリングも兼ね備え、コーナリングでの安定感はスーパーカブ110を上回っている。

↑スーパーカブ110より幅広いアップハンドルと厚みのあるシートを採用。やや腰高で110ccらしからぬリラックスしたライポジだ。シートはお尻が疲れにくいので、いずれ自分の愛車に流用したいと思った。足着きは両足がベッタリ。テスターは身長177cm体重66kg。

 

↑新型スーパーカブ110のライポジ。クロスと見比べると、ヒザの曲がりがキツく、ハンドルも低いためコンパクトな印象。シート高はクロスより46mm低い738mmなので、足着きに不安がある人には有利だ。

最高出力はスーパーカブ110と同じなのによりパワフルな印象

エンジンに関しては、スーパーカブ110と同様、スーッと滑らかに回転が上昇し、音と振動が控えめ。2速以降の守備範囲が広く、高回転まで引っ張って加速できるので、とても乗りやすく上質な印象だ。
4速60km/hで旧型はエンジンから微振動が伝わってくるが、新型はほぼ振動がなく静か。3速で走れてしまうほど余裕がある。

しかも、最高出力や最大トルクがスーパーカブ110と変わらないのに、若干パワフルな印象だ。2次減速比をスーパーカブから変更し、わずかにローギアードとしているため、スロットルを開けた際のパワーの立ち上がりが一段と力強い。
さらにカバーレスのためか、カブ独特の“ドゥルーン”としたサウンドがよく聞こえる。新型スーパーカブはこの音がやや薄味になっていたが、クロスカブはテイストもしっかり確保しているのだ。

ちょっとしたフラットダートも試してみた。スポークホイールと比べて乗り心地が硬いかな、と思っていたが、何ら問題はなく、2ポットキャリパーの安心感も高い。また、ぬかるみでリアタイヤがスタックした場面でも、ヒョイと持ち上げて脱出できた。大型ではこうもいかず、気軽にオフロードに立ち寄りできるのは110ならではだ。

【結論】ロングツーリングはもちろん、街にダートにOK、しかも安い!

ベース車のフラットな出力特性と60km/hでのクルージング性能に、リラックスした車格や安定した乗り心地が加わった新型クロスカブ110。ロングツーリングの適性は、スーパーカブ110よりハッキリ上だろう。街中などの小回りはカブ110の方が得意だろうが、かといって街乗りが苦手なわけでもない。まさに万能選手だ。

カブ系の中では、同じくアウトドア向けのハンターカブがスポークホイールなのに対し、クロスカブはパンク修理が簡単なキャストホイールなのが長所。価格もハンターカブの44万円から7万7000円安い。また、同じくキャストホイールのスーパーカブC125と比べても7万7000円安く、ライポジも一段とゆったりしている。やや独特なスタイルが気に入れば、クロスカブ110は多くのユーザーを満足させてくれる1台になるだろう。

 

↑メーターもスーパーカブ110と同様、液晶パネルを追加した。待望のギアポジションをはじめ、時計、トリップ、積算計、平均燃費を表示可能。この装備もツーリングに重宝する。

 

クロスカブ110【JA60】主要諸元
・全長×全幅×全高:1935×795×1110mm
・ホイールベース:1230mm
・シート高:784mm
・車重:107kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc
・最高出力:8.0PS/7500rpm
・最大トルク:0.9kgf-m/5500rpm
・燃料タンク容量:4.1L
・変速機:自動遠心4段リターン(停止時はロータリー式)
・ブレーキ:F=ディスク R=ドラム
・タイヤ:F=80/90-17 R=80/90-17

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