2021年は8800台のセールスを記録した人気の秘密はどこにある?

ヤマハのアクシスZは2017年にデビューした原二スクーター。あまりクローズアップされることはないが、筆者の中でその存在が気になりだしたのは最近で、販売台数が好調なこと。このジャンルでロングセラーを誇るホンダのリード125よりも売れており、その理由を知りたくなったのだ。

二輪車新聞の推定によるとリード125は2020年に6000台、2021年は5400台に減っている一方で、アクシスZは2020年は6700台、2021年は8800台へと販売を伸ばしている。この台数は、2021年に小型二輪でトップを獲得したSR400以上で、間違いなく国内でヤマハのベストセラーである。

なぜアクシスZとリード125を比較するかというと、車両のコンセプトが似ているからだ。シグナスXのようなスポーツでもなく、PCXのようなセンターフレームでもない。この2台は、昔ながらのステップスルーのベーシックモデルで、共にシート下容量が大きい点が比較対象になるのだ。

かなり似ている二台になぜ差が現れるのだろうか? 以前、当サイトでリード125に試乗した経験も踏まえてアクシスZに実際に乗ってみた。いくつか「なるほど、これかな」と感じた部分があるので、解説してみたい。

2017年にデビューしたヤマハのアクシスZ。アクシストリートの後継にあたるが、スズキのアドレスV125に対抗したトリートから、リード125の利点を取り入れたコンセプトでその地位を確立した。

身長170cmのライディングポジションは、少し小ぶりな印象。ホイールベースは1275mmでNMAXよりも65mm短く、その分小回りが効く設定だ。

体重65kgで足着き性はわずかにかかとが浮く。両足が接地するリード125よりも10mmシートが高いのが実際に分かる。

アクシスZの価格は24万7500円でシグナスXよりも6万8200円安い

やはり、最も差がつくのは価格となる。リード125は31万5700円でPCXの35万7500円と少し差があるが、快適性重視ならPCXに目移りする。また、スポーツスクーターのシグナスXは33万5500円なのでこれも価格面で接近している。一方、リード125の魅力であるシート下の大スペースは、トップケースをすればカバーできてしまうのだ。

その点、アクシスZは24万7500円というリード125を6万8200円も下回る価格で、ライバルは24万5300円のディオ110クラスになる。それなら排気量が大きいアクシズZに軍配があがるのは自然な流れ。8.7PSのディオ110に対して8.2PSのアクシスZはスペック上で劣勢だが、走りはディオよりも力強く排気量とトルクで上回っている印象だ。

アクシスZのエンジンは空冷2バルブ125ccで、同じ125ccで比較すると他の水冷モデルや4バルブエンジン搭載車に速さでは敵わない。それでもわずか100kgという軽量な車重が有利に働いていおり、決して遅い訳ではない。また、アクシスZの足まわりは前後10インチの小径ホイールなので安定性が足りず、パワーがあっても生かし切れないだろう。

それでも10インチがいいなと思える場面があったのが意外だった。リード125は12インチホイールでかなり小回りが効く方だと感じたのだが、アクシスZの10インチは当然それ以上。車体も軽いので市街地での自在感はかなりのものだった。

エンジンは空冷2バルブ124ccで、NMAXやシグナスXとも異なる系統。最高出力は8.2PSと低めだが、ロングストローク設計でフィーリングは力強い。

アクシスZのセールスポイントは37.5Lを誇るシート下の容量。リード125の37Lを上回っているから驚きだ。ヘルメットが2個収容可能というが、底が浅めなので高さのあるヘルメットは収納が難しい。

超好バランスのアクシスZ、現行型は2021年モデルがラスト

もちろん10インチホイールにはネガな部分もあり、14インチなどの大径ホイールに比べると荒れた路面で車体の挙動が大きめに発生してしまう。その分扱いが難しくなるのだが、アクシスZは軽量なのでそうした場面での安定性も許容範囲にある。サスペンションにもコシがあり、荷重のかかる高速コーナーも安定していた。パワーが控えめで速度域が低いのがこの高バランスに結びついているのだろう。

新鮮だったのは前後非連動のブレーキで、今時のコンビブレーキを採用していない。つまり普通の前後独立ブレーキなので、一般のバイクと同じ感覚で走行できるのだ。バイクの扱いに慣れているならこちらの方がありがたい。ただし、2021年10月以降の生産車はブレーキの規制に対応する必要があるので、これは2021年型までの特徴となるだろう。

昔ながらの小径ホイールやブレーキを含めてシンプルで好コスパのスクーターというのがアクシスZの立ち位置だ。こだわっているのは使い勝手で、ジェットヘルメットが2個収容可能なシート下スペースがあり、他にもコンビニフック、シャッターキーなど必要な装備はきっちり用意されている。

さらに足着き性も…と書きたいところだが、これはリード125と同等か少し悪い印象だった。シート高はリードの760mmに対してアクシスZは770mm。小径ホイールなのに何故? と思うが、その分シート下容量を増やす、サスストロークを確保するといった全体のバランスを重視したのだと思われる。

価格や走り、使い勝手などあらゆるバランスが超絶妙なアクシスZは、毎日の足に最適な一台だ。

フロントにはディスクブレーキを採用し制動力は十分。ABSやコンビブレーキもないシンプルな前後独立タイプだ。

リアブレーキはドラム式。リアサスは1本仕様で調整もできない。サスはソフトすぎずしっかり荷重を受け止めるが、ダンパーの効きはあまり感じられない。

シートは前後長666mmと長めの設計でシート下容量の拡大と二人乗りに配慮。タンデムステップはワンタッチで出し入れができるので便利だ。

B4サイズのビジネスバッグがすっぽり収納できたのは驚き。リード125では同じバッグを寝かさずに収納できたが、アクシスZは底が浅めなので写真の通り。

ヘッドライトやポジション灯、ウインカーの配置など、リード125を意識していそうなデザイン。LEDを使っていないのも今では珍しい。

尖ったテール周りもリード125に似ている。グラブバーにはオプションのリアキャリアを取り付けるネジ穴が用意されている。

フロントにはポケットとD字形のコンビニフックを装備。キーシリンダーはシャッター付きで、給油口もハイマウントタイプを採用する。

ハンドル幅はあまり広くないのですり抜けがしやすく、スイッチはウインカー操作もしやすかった。

メーターはアナログで距離計と燃料計付き。インジケーターにはエコランプもある。

2021年型アクシスZ主要諸元

・全長×全幅×全高:1790×730×1145mm
・ホイールベース:1275mm
・シート高:770mm
・車重:100kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124cc
・最高出力:8.2PS/6500rpm
・最大トルク:0.99kgf-m/5000rpm
・燃料タンク容量:5.5L
・変速機:Vベルト式無段変速/オートマチック
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=100/90-10、R=100/90-10
・価格:24万7500円

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