つい先日、水冷パラツインを搭載する新型Vストローム800DEが正式発表&発売されたが、水冷VツインのVストローム650/XTも最新の排出ガス規制に対応し、まだまだ継続販売中だ。傑作の名を欲しいままにするスズキのミドルアドベンチャー、あらためてその魅力に迫ってみよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:スズキ
【SUZUKI V-Strom650 ABS】■全長2275 全高1405 シート高835(各mm) 車重212kg ■水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ645cc 69ps/8800rpm 6.2kgf・m/6300rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/80R19 R=150/70R17 ●色:黒 白 ●価格:95万7000円
【ライディングポジション】シート高は835mm。ミドルクラスだが無理にコンパクトに設計しておらず、膝の曲がりも緩やかで巡航時に余裕あり。[身長175cm/体重68kg]
Contents
[◯] 設計の古さは感じるが大柄ゆえの長所が多々
Vストローム1000の車体にSV650のVツインを搭載し、’04年に販売がスタートしたVストローム650。’12年に初のフルチェンジを実施し、翌’13年から国内の正規ラインナップに登場している。ちなみに’14年には、ワイヤースポークホイールを採用するXTが追加された。
私がVストローム650に試乗するのは、このXTが登場したタイミングなのでおよそ8年ぶりだ。最新の排ガス規制に適合した645cc水冷V型2気筒エンジンは、相変わらずスロットル微開領域から従順に反応し、トゥルルルッという軽快な鼓動感が実に心地良い。100km/hでの回転数は、トップ6速でおよそ4500rpm。最高出力69psは決して非力ではないが、何となくそう感じてしまうのはシャーシの剛性や安定性が勝っているからだ。裏を返せば、ヤンチャな開け方をしても車体が許容してくれるので、安心感が高いと表現することもできよう。
ハンドリングは、ホイールベースが1560mmと長く、さらにフロントホイールが19インチゆえにクルクルと積極的に旋回するタイプではないが、前後タイヤが太すぎないので倒し込みや切り返しは軽快だ。高速道路で速度が3ケタに近付くと直進安定性が急に強まるが、これはタンデム+荷物満載という欧州での使われ方を考慮した結果だという。Vストローム1000由来のアルミツインスパーフレームを使い続ける理由の一つがこれなのだろう。なお、リアショックのプリロードは工具なしで調整することができるので、荷物を積み込んだ状態でのアジャストも容易。これは非常にありがたい。
腰の収まりのいい位置に座るとハンドルが遠くに感じたり、アドベンチャーとしてはやや狭くて絞りの大きいハンドルバーを採用していたりと、設計の古さを感じる部分は少なくない。また、ライダーエイドな電子デバイスはトラクションコントロールやABS、ローRPMアシストぐらいしか導入されていないが、とはいえ距離を稼ぐほどアドベンチャーバイクとしての資質の高さを実感できる。今なお輝きを失っていない稀有な存在だ。
[△] スクリーン調整がネジ。シガーソケットも不満
ウインドスクリーンは高さを3段階に調整できるが、ボルト4本を取り外して固定位置を変える方式なので時間を要する。また、アクセサリー電源はシガーソケットなので使いにくい。今回のモデルチェンジのタイミングでUSBタイプにしてもよかったのでは?
[こんな人におすすめ] 新型800DEとは狙いを異にする、650の魅力不滅
フロント19インチかつ401cc以上のミドルアドベンチャーで、しかも100万円以下となるとこのVストローム650が唯一となる。下半身を含む適度な防風効果と振動の少なさ、ギャップ通過時のショック吸収性など、今もなお旅バイクとして優秀だ。
スズキVストローム650ABS ディテール写真解説
スズキVストローム650ABS スタイリング
【人気のスタイリングは変更なし】’17年のモデルチェンジで現在のスタイリングに刷新され、平成28年排出ガス規制に対応しつつ66→69psにアップしたVストローム650。今回の排ガス規制適合後もその最高出力を維持しているのは立派だ。ワイヤースポークホイールのXTは、エンジンアンダーカウルとナックルカバーを標準装備し、車重は3kg増となる。
スズキVストローム650ABS エンジン
【スモールVツインの名機】645cc水冷90度V型2気筒エンジンは、令和2年排ガス規制適合により最大トルクの発生回転数と燃費が変化。選択式トラクションコントロールやローRPMアシストは引き続き採用する。
見た目こそ変わらないが令和2年排ガス規制に適合。
スズキVストローム650ABS 足まわり
【積載中に調整できるプリロードが○】ブレーキディスク径はフロントφ310mm、リアφ260mmで、前後にABSを採用。フロントフォークは非調整式、リアショックは油圧式プリロードと無段階の伸び側減衰力アジャスターを備える。
ラバー付きのステップバーを採用。タンデムステップも形状こそ異なるがラバー付きであり、防振に妥協していないことが分かる。
スズキVストローム650ABS 主要装備
ウインドスクリーンはボルト4本で固定されており、高/中/低の3段階に高さ調整可能だ。純正アクセサリーで可変バイザー付きのツーリングスクリーンを用意する。
【メットロックが超便利】ハンドルの左側にあるヘルメットロックが非常に使いやすい。スズキイージースタートシステムを採用する。
電圧計/瞬間&平均燃費計/航続可能距離計/温度計/水温計などを表示する多機能メーター採用。
前後一体型のシートはキーロックの解除で取り外し可能だ。純正アクセサリーでローシートとハイシートを用意する。タンク容量は20Lと大きめ。
グラブバー兼リアキャリアを標準装備。純正アクセサリーで用意される各種トップケースの装着時にも活躍する。メーターパネルのアクセサリーソケットは定格12V36Wまで。
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