’84年にデビューを果たし、20年にわたるロングセラーとなったGPZ900R。トップガンの第1作と続編を観て、また乗りたくなった人も多いハズだ。その足跡を改めてプレイバックしよう。

●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●外部リンク:カワサキモータースジャパン

世界最速機としてデビュー、特に日本で人気絶大だった

空冷直4のZ1系に代わる次世代の旗艦として、カワサキが総力を結集したマシンこそGPZ900Rだ。

同社初のDOHC4バルブ水冷直4とダイヤモンドフレームで軽量ハイパワーを実現。最高速250km/h超を達成し、当時の世界最速機に君臨した。このイメージが、トップガンにおける戦闘機パイロットの愛機にも相応しかったのだろう。

軽快な走りから「ニンジャ」の愛称が与えられ、北米ではNinjaが正式名称に。なお当初の車名は「z」が小文字だったが、’86年型から大文字の「Z」に変更。マイナーチェンジのみで生産を継続した。歴代の車体色で最も多いのは、初期型イメージの赤×灰、青×銀だ。

日本には当初、逆輸入車として上陸したが、’91年型から日本仕様を設定。何度も生産終了の噂はあったが、トップガンや漫画『キリン』などの影響か、特にモデル終盤では日本で好セールスを維持した。しかし排ガス規制の強化で、海外仕様を含めて’03年でファイナルに。惜しまれつつ20年の歴史に終止符を打った。

初期型と翌年型は『z』が小文字だった──A1[1984]

’83年秋のパリショーで発表され、’84年から市販化。空冷4気筒のGPz1100に代わる新旗艦だった。初代の車体色は、赤×灰、青×銀の2カラー。北米仕様は赤×灰のみだった。欧州一般仕様は115psで、米国とカナダは110ps。仏など一部で馬力が低い仕様もある。

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(欧州仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

主要諸元■全長2200 全幅750 全高1215 シート高785 軸距1495(各mm) 車重228kg(乾燥)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 908cc 内径72.5mm×行程55.0mm 圧縮比11.0 115ps/9500rpm 8.7kg-m/8500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量22L■ブレーキF=Wディスク R=ディスク■タイヤF=120/80V16 R=130/80V18 ※諸元はA1欧州仕様

【現代的エンジンの先駆けだった】カワサキ初の水冷DOHC4バルブを完全新設計。サイドカムチェーン方式でコンパクト化を果たし、1軸2次バランサーによる低振動化やフレームの簡素化も実現した。現代に通じるメカをいち早く採用していたのだ。

【シャーシも最先端!】エンジンを剛性メンバーとするダイヤモンドフレームにアルミサブフレームを組み合わせ、剛性と軽さを両立。足まわりは最新のリンク式モノショック=ユニトラックサスだ。最高速のみならず、コーナリング性能も絶賛された。

北米仕様はアップハンでステップ位置が前寄り。反射板とサイドカバーのNinjaロゴが特徴だ。

トップガン風の黒×赤とライム登場──A2[1985]

登場2年目は色変更を実施。より直線的な塗り分けとなり、欧州は赤×銀、青×銀を設定した。北米では赤×銀のほか、トップガンカラーに似ている黒×赤が登場している。ただし劇中車よりサイドカウルとタンクの赤い面積が大きい。南アフリカ仕様に登場したライムグリーンは、この年だけ設定された特別色だ。後期生産分からはシリンダーヘッド周辺が改良された。

●エボニー×ファイアークラッカーレッド(北米仕様)

●ライムグリーン×ポーラーホワイト(南アフリカ仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

●ファイアークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

ラインを太くしたトリコロールを3色設定──A3[1986]

弟分のGPZ400/600Rと同様のカラーを採用。ラインが太くなり、Fフォークのアウターとキャリパーが銀色になった。欧州版は黒×赤、青×銀、赤×白の3色を設定。北米では赤×白のみ販売された。同年GPZ1000RXが登場したためか、欧州仕様の車名がGPzからGPZと大文字表記に。

●エボニー×ファイアークラッカーレッド(欧州仕様)

●ファイアークラッカーレッド×パールアルパインホワイト(北米仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

GPZ1000RXと共通イメージに──A4[1987]

カラー変更のみで、基本的に前年型を踏襲。赤×銀と青×銀の2色が投入された。シルバーのラインが走り、車体下部を銀色で塗り分けた車体色は、GPZ1000RXと同じイメージ。ニンジャシリーズとしての統一感を出したのだろう。最高出力はカタログで110ps表記となる。

●ファイアークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(欧州仕様)

ブラックメインのカラーが初めて登場──A5[1988]

同年のGPZ1000RXと共通のフロントディスクを採用。穴の数が増え、放熱性を高めた。車体色は前年と同じ赤×銀、青×銀に加え、新色の黒×灰を追加。ホイール色も変更し、黒から赤または白とした。

●エボニー×パールコスミックグレー(欧州仕様)

ゴールドが際立つ、シブい黒×灰がデビュー ──A6[1989]

ゴールドのホイールとラインを与えたブラック×グレーが新登場。英国仕様では、冷却水を利用したヒーター付きの温水キャブレターを採用した。他にA5と同じ、青×銀に白ホイールを履いた仕様もある。

●エボニー×パールコスミックグレー(欧州仕様)

ビッグマイナーチェンジで足まわり強化──A7[1990]

Fフォークからアンチノーズダイブ機構を廃止し、φ38→41mmに大径化。前輪も16→17インチ化したほか、キャリパーはFが対向4ポット、Rが片押し2ポットと足まわりが充実した。メーター、ハンドル、バックミラーも新形状だ。車重は234kgに増加し、最高出力は108psとなった。

●ファイアークラッカーレッド×エボニー(欧州仕様)

●エボニー×パールコスミックグレー(欧州仕様)

ついに待望の国内仕様がデビューした──A8[1991]

国内ではカワサキ初のオーバー750として日本仕様を設定。マフラーやカムシャフトなどが変更され、フルパワーの108ps&8.5kg-mに対し、86ps/9000rpm、7.3kg-m/6500rpmと低中速重視の設定。シートベルトが付き、リヤフェンダーが短いのも特徴だ。カラーは欧州と同じ2色設定。

●エボニー×パールコスミックグレー(日本仕様)

●ファイアークラッカーレッド×エボニー(欧州仕様)

初期型カラーの赤×灰、青×銀が復活──A9[1992]

A9は日本仕様のみで、初期型と同様の2カラーが復刻。色味も初代A1と全く同じだが、アッパーカウルにNinjaロゴを大きくあしらい、サイドカバーにA7から採用した筆文字風のGPZが踊る。黒いFフォークアウターと金色ホイールも特徴だ。海外ではA8が継続販売された。

●メタリックポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(日本仕様)

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(日本仕様)

国内も温水キャブ採用、欧州はラストに──A10[1993-1997]

日本仕様のA10は、前年の2色を継続採用したが、ホイールを金色→グレーに変更。A6英国仕様と同様の温水キャブレターを導入した。以降5年間、モデルコードが変更されず生産が続いた。輸出仕様はA10からドイツとオランダ仕様のみとなり、これが最後の欧州向けとなった。

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(日本仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(日本仕様)

5年ぶりの変更、A2で人気のライムが登場──A11[1998]

モデルチェンジがないまま販売され、「既に生産終了した」との噂もあったが、’97年秋の東京モーターショーでライムグリーンのニンジャが登場。翌年2月にA11として投入された。ライムはA2と白の色味が異なり、ラインに反射素材を採用。赤×灰ともにA10よりラインが太くなった。

●ライムグリーン×パールアルペンホワイト(日本仕様)

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(日本仕様)

A7以来、久々に足まわりをグレードアップ──A12[1999]

足まわりを重点的に熟成。Fフォークにチップガードを備え、トキコ製6ポットキャリパーを採用した。リアショックは初期型以来のエア加圧式から近代的なガス封入式に。タイヤもついにラジアル化した。さらにステップとチェンジペダル、キーシリンダーも改良している。

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(日本仕様)

●ライムグリーン×パールアルペンホワイト(日本仕様)

注目度バツグン、個性派イエローがデビュー──A13[2000]

国内向けはA12のまま’02年頃まで販売され、生産終了となった。一方、A11 から登場した108psのマレーシア仕様の生産は続き、’00年にA13がリリースされている。仕様変更はないが、歴代初でA13にのみ設定されたイエローが登場。従来と同じ赤×灰もラインナップされた。

●パールクロームイエロー×ブラックパール(マレーシア仕様)

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(マレーシア仕様)

人気の高いA6のブラック×グレーが復活──GPZ900R A14 / A15[2001 / 2002]

A14もマレーシア仕様のみで、2年ぶりにライムグリーンを設定。さらに人気が高かったA6 の黒×灰が久々に追加された。翌年、マレーシア仕様はA15となり、排気ポートに新気を導入して排ガスを再燃焼させる2次エア導入装置・KCAを採用。車体色はA14から継続の2色設定だ。

●エボニー×パールコスミックグレー(マレーシア仕様)

●ライムグリーン×パールアルペンホワイト(マレーシア仕様)

ついにラスト! 初期型風ながら少し異なる──GPZ900R A16[2003]

主に日本へ入荷していたマレーシア仕様だったが、輸入車の騒音規制が強化され、ついに同年6月で生産終了を迎えた。車体色は初期型をイメージした赤×灰、青×銀の2カラー。Kawasakiロゴが白く、赤×灰は側面のゴールドラインが濃いのが特徴。青×灰はA10以来となるが、同じカラーで赤ストライプが太く、ゴールドホイールを履くのはA16のみだ。国内にはファイナルエディションとして入荷され、輸入元のブライトが特製エンブレムを同梱した。

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン(マレーシア仕様)

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー(マレーシア仕様)

人気を博した国内版『GPZ750R』

国内には排気量上限750ccの縛りがあったため、リッター級の海外仕様はナナハン化されて日本に登場した。GPZもその例に漏れず、900をボア、ストロークともダウンし、748.1cc化したGPZ750Rが’84年3月に導入された。

基本的な車体構成は900と共通ながら、キャブレターを900のCVK38に対して小径のCVK32とし、Vレンジのタイヤを装着。国内向けは77psだが、92psの海外向けも存在した。

まだ逆輸入車が高嶺の花で、日本での実質的な旗艦がコイツだった。ところが、’86年に後継のGPX750Rが登場し、わずか3年で生産終了。ただし人気は高く、3年で1万台超を販売したと言われる。特に初期型の黒×赤はマーヴェリック号に最も近いカラーであることに注目だ。

日本独自の黒×赤を導入──G1[1984]

’84年3月にまず900と共通の赤×灰、750独自カラーの黒×赤を設定。同年7月に青×銀を追加し、計3色をラインナップした。最もトップガンカラーに近いのが、この初期型750の黒×赤で、色味はもちろん、サイドカウルとタンクの塗り分けともほぼ同じだ。

●ファイアークラッカーレッド×メタリックグレーストーン

●エボニー×ファイアークラッカーレッド

主要諸元■全長2185 全幅775 全高1215 シート高780 軸距1500(各mm) 車重228kg(乾燥)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 748cc 内径70.0mm×行程48.6mm 圧縮比11.0 77ps/9000rpm 6.5kg-m/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量22L■ブレーキF=Wディスク R=ディスク■タイヤF=120/80-16 R=130/80-18 ●当時価格74万8000円

限定版を含め、充実の4カラーが選べた──G2[1985]

欧州仕様900のA2と同じ赤×銀、青×銀の2カラーを設定。価格は1万円高となった。さらにグリーンショップ(カワサキ正規取扱店)の限定車として、オリジナルカラーの2色を発売。限定のライムグリーンは、900のA2南アフリカ仕様とほぼ同じだが、エンブレムは異なる。ブラックは限定モデル第2弾で300台が販売された。

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー

●ファイアークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー

●ライムグリーン×ポーラーホワイト(グリーンショップ限定車)

●エボニー×パールコスミックグレー(グリーンショップ限定車)

国内にいち早く導入されたのはライムグリーン。黒の外装は900のA5とほぼ共通だが、こちらの方が発売は早く、黒ホイールとNinjaロゴが特徴だ。

黒×赤は専用、青×銀を先行採用──G3[1986]

スロットルワイヤーが2段式となり、スイングアーム形状を変更。ポジションランプに代わって車幅灯が採用された。価格は76万5000円にアップ。G3独自の赤×黒のほか、900のA4に先駆けて採用された青×銀を設定。前年の限定車に続き、Ninjaロゴを大きく配した。

●ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー

●ファイアークラッカーレッド×メタリックブラック

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