すでに国内流通が始まっているVストローム800DE。この国内モデルの発売に先駆けてスズキは、イタリア サルディーニャ島にて「WORLDWIDE PRESS TEST RIDE」を開催していた。いち早く体験した海外仕様のインプレッションをここにお届けしよう!

●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●外部リンク:スズキ

【テスター:谷田貝洋暁】ヤングマシンでは、ガチテスト企画とオフロード試乗記事を担当することが多いフリーランスライター。今回の海外試乗で転倒するまで乗り込んできた(恥!)。おかげであばらと首が痛い。

’23 スズキ Vストローム800DE

ついに国内でも正式発表となったVストローム800DEだが、今回の試乗記はあくまで海外仕様であることを最初にお断りしておきたい。

さてこのVストローム800DE。最大の特徴は最近人気の“オフロード性能が高い"フロント21インチサイズのアドベンチャーモデルということだ。“DE”とはデュアルエクスプローラーの略で、オンロードもオフロードも両方(Dual)楽しめる冒険者(Explorer)ということ。現在、1050と800にこの“DE”仕様があり、両車ともフロント21インチホイールと長めのサスペンションストロークがそのキャラクターアイコンとなっている。

【’23 SUZUKI V-STROM800DE】主要諸元■全長2345 全幅975 全高1310 軸距1570 最低地上高220 シート高855(各mm) 車重230kg ■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 776cc 84.3ps/8500rpm 7.95kgf・m/6800rpm 変速機6段 燃料タンク容量20L ■キャスター28°/トレール144mm ブレーキF=φ310mmダブルディスク+2ポットキャリパー R=φ260mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70-17 ※諸元は欧州仕様

シリーズ初の本格オフ追求モデルは伊達じゃない!〈スズキ Vストローム800DE 海外試乗インプレッション〉

早速ダートセクションで乗り込んでみると予想以上のダート性能に驚かされる。オフロード性能の高いライバル車種同様、パラレルツインエンジンをチョイスしているのだが、思ったよりもその効用が大きく、未舗装路でのマシンコントロールがものすごくしやすいと感じる。

これこそが90度Vツインではなく、パラレルツインを選んだ最大の効用である。内部構造的にも、“スズキクロスバランサー”を使って前後長を短縮化。フロントタイヤを車体側へと寄せられたことでフロント荷重が増し、ダートでのコントロール性を大きく引き上げることができたというわけだ。

その一方、車体に関してはやや剛性が高めな印象。オフロード要素が強めのテネレ700やトゥアレグ660のような路面にしっかり踏ん張るようなしなやかさはない。タイヤパターンが割とロード寄りなこともあってリアがズリズリと流れるテールハッピーなキャラクターなのだ。

そこで登場するのがトラクションコントロールだ。1~3までのモードは舗装路用であり、制御をオフにすることも可能なのだが、特筆すべきなのは“Gモード”である。

Gとはグラベルのことであり、未舗装路専用のトラクションコントロールシステムというわけだ。1~3のモードがスリップダウン防止の安全対策としてのトラコンなのに対し、この“Gモード”ではある程度のスリップを許容しながら走れるような制御を行う。言ってみれば“Gモード”はパワースライドを楽しむためのトラコンになっていたのだ。

テストライドは異例の2日間にわたり、100km以上のダートロードを存分に走らせてきた。

パワースライドを楽しむ余裕を作る“Gモード”〈スズキ Vストローム800DE 海外試乗インプレッション〉

スズキは’14年登場のVストローム1000(現在の1050)で初めて市販車にトラクションコントロールシステムを登用。モトGPマシン由来だというこのトラコンの登場はかなり衝撃的だった。安全装置の意味合いが強かったトラコンの世界に“電子制御で速く走る”という新しい価値観を持ち込んだのだ。

このトラコン、制御が信用できるようになるとABSにモノを言わせてコーナーの奥で超絶減速。そこから無理矢理バイクを寝かし、クリッピングポイントでスロットルをガバ開けすればトラコンが介入して、フロントアップもスリップダウンも起こさずコーナーの出口に向けて最大加速する…なんてトンデモ機構だったが、この“Gモード”はそのオフロード版とも言うべきトラコンである。

コーナーでエイヤッとバイクを寝かし、トラコンを信じてスロットルをガバ開けすれば“スリップダウンしない程度に”パワースライドが楽しめる…という異次元の制御を行ってくれるのだ。これが剛性が高めな車体とのマッチングがよくスライドコントロールしやすく感じる。

スライドするマシンの挙動に慣れてくればスロットルオフによるバックトルクでリアタイヤを振り出し、侵入スライド。そこからスロットルを開けてパワースライドに移行する…なんて離れ業も可能。まぁ、調子に乗ってそんな走りを右へ左へ試していたら、コーナーとは逆向きにスライドしてしまいコースアウトしてしまったことはここだけの話だ。

Vストロームだから当然ロードの走りもイイッ!!〈スズキ Vストローム800DE 海外試乗インプレッション〉

閑話休題。それほどまでにダートが楽しいVストローム800DEだが、予想外なことにオンロード性能も高かったからさらに驚かされた。

フロント21インチホイールのアドベンチャーは、ダートで踏ん張るしなやかな特性を求めるあまり、車体剛性を落としがちだ。これこそがオフロードバイクでロードセクションを攻め込んだ時に感じる不安定感の正体だが、Vストローム800DEは持ち前のやや剛性高めの車体のおかげでロードセクションもきっちり攻め込めるようになっている。

さらにリアにアドベンチャーバイクで主流の18インチホイールではなく、17インチホイールを入れたことによってロードセクションでの旋回性能がアップ。またタイヤに関しても舗装路で安定性が増すようなパターンを採用したことで気持ちよくコーナーを駆け抜けられるのだ。

Vストロームシリーズには、元来舗装路での性能に重きをおいたモデルが多く、それこそがアイデンティティとも言えるのだが、フロント21インチのVストローム800DEであってもその方向性は全くブレていない。

アドベンチャーバイクとは、オフロード性能、高速巡航性能、そして旅の相棒としての快適性の3つの要素のバランスで構成される乗り物だ。オフロード性能だけでも単なるオフ車になってしまうし、ロード性能だけでも未舗装路を“なんとか通過できる”程度のアドベンできない乗り物になってしまう。その点、Vストローム800DEは、ワインディングも未舗装路も、楽しいどころか相当攻め込める“DE”。まさに“デュアルエクスプローラー”の名に恥じないマシンに仕上がっている。

21インチアドベンンチャーの多くが苦手とするロードセクションも手ぬかりなし! 腰を落としてのリーンインもしっかりキマった。高回転までスムーズに回る一方、3000~4000回転の常用回転域では、ツインらしいドコドコ感もしっかり味わえる。Vストローム800DEは旅感もしっかりあるのがいい。

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