トライアンフ ロードスターシリーズのフラッグシップであるスピードトリプル1200RSがモデルチェンジ。グローバル・テスト・ライドがポルトガルのポルティマオで開催されたので参加してきた。見た目に大きな変化はなさそうに見えたが、その中身は別物。体感できる電子制御は、サーキットでも一般道でもライダーを力強くサポートしてくれた。
●文:ヤングマシン編集部(小川勤) ●外部リンク:トライアンフモーターサイクルズジャパン
電子制御満載の驚異のビッグネイキッド
ブレーキングのためにストレートで身体を起こすと、信じられない風圧に襲われてネイキッドであることを意識させられる。超高速域でも絶対的な安定感があり、スロットルを開けると、NEWスピードトリプル1200RSは狙ったポイントにまるで弾丸のように加速していく。
メーターは275km/hを指しているが、直進安定性が高くスピード感はあまりない。1160ccの3気筒エンジンが放つ183psをとても有効的に使えていることは快感でしかなく、一新された電子制御の効果を1本目の走行から体感することになった。
2025年モデルのスピードトリプル1200RSは、ユーロ5+規制に対応させつつ、エンジンのクランク周りを見直すことで前モデルより3ps、3Nm向上。そして電子制御を刷新した。車体のディメンションは既存のモデルから変更されていない。
グローバル・テスト・ライドはポルトガルのポルティマオで行われ、その進化を見せつけられた。トライアンフがなぜこの場所でローンチを行ったのかも明確で、電子制御の理解が深まり、電子制御の恩恵を受けやすいシチュエーションだからである。
今回のローンチは初日がサーキット、翌日が一般道というスケジュール。タイヤは、サーキットはピレリ製ディアブロスーパーコルサSC1、一般道はOEMのディアブロスーパーコルサSP V3。モードは「レイン」「ロード」「スポーツ」「トラック」「ライダー」が用意され、サーキットは「トラック」、一般道は基本的に「レイン」で走行した。
エンジンと電子制御を刷新し、生まれ変わった2025年モデルのスピードトリプル1200RS。222万5000円(ジェットブラック)、227万円(グラナイト/ディアブロレッド、グラナイト/トライアンフパフォーマンスイエロー)
ハンドルが10mmワイド、7mm手前にきたことで、アップハンドルを振り回している感覚が強まり、軽快に操れる。サーキットではピレリ製ディアブロスーパーコルサSC1を履いて走行した。
異形2眼ヘッドライトが現代のトライアンフ ロードスターシリーズの特徴。そのフラッグシップがスピードトリプル1200RSだ。
パワー&トルクを常に有効活用できる大排気量並列3気筒エンジン
2025年はスピードトリプル誕生から30年の節目。その最新モデルであるスピードトリプル1200RSの個性は、異形2眼ヘッドライト、片持ちスイングアーム、そして伝統ともいえる大排気量並列3気筒エンジンだ。
特に並列3気筒エンジンは、トライアンフならではの圧倒的な個性を生み出す重要なファクター。トルク特性を大切にしており、2気筒のようなスロットル操作でトラクションを生み出し、そのままスロットルを開け続けて回転が上がっていくと4気筒のように伸びていく。その際のフィーリングには速さと気持ちよさがバランスし、常にライダーが理想的なパワー&トルクを引き出すことができるのだ。
並列3気筒エンジンの等間隔爆発(クランク2回転で240°→240°→240°)は理論的に見ても振動が少なく、回転バランスがとても良い。並列3気筒は、並列4気筒の等間隔爆発(クランク2回転で180°→180°→180°→180°)よりも爆発間隔が広く、脈動や鼓動が明確。大排気量であることが特にそのメリットを感じやすくしている。
この大排気量3気筒の醍醐味が全てのコーナーの立ち上がりで味わえる。3速でもスロットル操作だけでフロントを浮かし、その挙動はとてもリニア。素晴らしいエンジンと車体、足まわりに最先端の電子制御が加わることで、強烈な安定感を得ている。それは気持ちの良いコーナリングや最高速に繋がり、ネイキッドでここまでいけるか!と思わせてくれるほど。このアベレージを許容してくれるネイキッドは他になかなかないだろう。
しかし、1本目の走行を終えたところでコースはウエットになってしまった。細かい制御を色々とセットアップしてみたかったが、それはまたの機会にとっておこう。
1994年に登場したスピードトリプル900。当時のスーパースポーツであるデイトナ900からカウルを排除し、ネイキッドの新たなトレンドを築いていった。
1160ccのDOHC4バルブ並列3気筒エンジン。最高出力は183ps/10750rpm、最大トルクは128Nm/8750rpm。クランク周りを見直すことで前モデルより3ps、3Nm向上した。
ストリートファイターを牽引してきたトライアンフのスピードトリプル。そのスタイルはサーキットでもよく映える。
ライディングモードは「レイン」「ロード」「スポーツ」「トラック」「ライダー」を用意。「ライダー」は様々な設定を任意で選べるモード。電子制御サスペンションのセッティングも行える。標準装備のMy Triumphコネクティビティシステムは、ターンバイターンナビゲーション、電話や音楽のコントロールを可能にする。
並列3気筒エンジンは、同排気量の並列4気筒よりも幅が狭い。それが軽快なハンドリングに貢献し、豊かなトルクは立ち上がりで2気筒のようなトラクションを発揮。そのキャラクターを生かした走りの組み立てをするとさらに面白さが増すのだ。
スポーツネイキッドから馴染みやすいロードスターに変身
翌日の一般道も残念ながらウエット。ライディングモードは「レイン」を選択。モードによって出力特性はもちろん、トラクションコントロール、ABSの介入度はもちろん、サスペンションの動きも変化する。
スイッチ一つでバイクを自分好みに仕上げていくトレンドはとても良い。速さを追求するだけでなく、悪コンディションでの不安や不満も解消でき、シチュエーションに応じて理想のバイクに乗り換えたような面白さを簡単に味わえるからだ。
しかし、寒い。メーター内の温度計は9〜13℃あたりを行き来し、冬装備を想定していなかった僕は極寒。オプションのグリップヒーターを最大限に活用する。昨日は完璧なスポーツネイキッドだったが、今日はとことんライダーに寄り添うロードスターだ。ツーリングユースにも一瞬で馴染み、昨日のハイスピード域での振る舞いが信じられなくなる。今回は使用しなかったがクルーズコントロールも標準装備。乗降の際の全ての操作がスイッチで済むため、雨だとキーレスもありがたい。
フロントフォークはオーリンズ製φ43mm倒立。SmartEC3 OBTiシステムで走行中に連続的に減衰力を変化させる。キャリパーはモノブロックのブレンボ製Stylema。
リアのモノショックもオーリンズ製。SmartEC3 OBTiシステムを搭載。
アンダーブラケットにはマルゾッキ製のステアリングダンパーも装備。
ブレンボ製のセミラジアルマスターシリンダーは、とてもコントローラブル。レバー位置だけでなくレシオ調整も可能で、電子制御式のサスペンションとも相性が良い。
よく動くサスペンションやコントロール性の高いブレーキは峠でもバイクを簡単に信頼させてくれる。ライダーの操作がきちんとバイクに伝わり、繊細な前後の荷重配分は電子制御サスペンションがサポートしてくれるイメージ。サーキットでもそうだったが、スピードトリプル1200RSの電子制御はいざという時にサポートしてくれるものでなく、ライダーが積極的に使うものなのだ。
ただし「レイン」でもかなりの速さがあるし、サスペンションもスポーティな味付けなので、キャリアの浅いライダーなら「ライダー」モードにもっとよく動くサスペンションのセットを入れておくのもいいだろう。もちろんタンデムマップや、もっと尖ったサーキットマップを用意するのもいいと思う。要はライダーの理想のバイクを追求できるということだ。
他メーカーにリッターオーバーの大排気量ネイキッドは少なくなった。だからこそ、久しぶりに味わうビッグネイキッド感がとても新鮮に映った。スピードトリプル1200RSは、最新電子制御とのタッグでネイキッドを次の領域へと到達させた。それはまさにスピードトリプル30周年にふさわしい進化である。
撮影時はたまたま晴れ間が出るが、一般道の走行は終始ウエット。欧州の難しい路面でもスピードトリプル1200RSは常に安定のトラクションを披露。
前モデルよりもハンドルは10mmワイドになり、7mm手前となり自然なポジションを約束。シート高は830mm。小柄なライダーは、通常時は両足を着くより片足を着いてバランスを取るのが無難だ。筆者は身長165cm、体重68kg。
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