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リアルクラシックのベーシックカブに対してネオクラシックのC125
スーパーカブ生誕60周年にあたる2018年に発売されたスーパーカブC125は、初代スーパーカブC100の外観を現代にオマージュしたモデル。バイク界の生きた化石、リアルクラシックモデルとして人気を誇るスーパーカブシリーズにおいて、スーパーカブC125は徹底的にネオクラシック路線を狙っており、外観こそカブ最初期のC100のスタイルだが中身は最新鋭。カブだと思って走り出すと面食らう部分があって驚いた。
まず、カブと言えば鋼板プレスフレームにフロントボトムリンクサスというイメージしかないなら、現在のスーパーカブシリーズはパイプフレーム+テレスコピックフォークを採用しているので、その時点で大きな進化を感じるだろう。C125はそれらに加え、スーパーカブとしては最大排気量のエンジンだけでなく、キャストホイールとフロントディスクブレーキを採用しているのだ。
実際に走り出すと、動力性能や車体のフィーリングはカブのそれではなく完全なスポーツバイク。接地感は限界の高さからくる硬質な手ごたえが感じられ、ディスクブレーキは制動力とフィーリングにおいて大きな差を付けている。もちろん速さもカブ110に対して1.7PS上回ることから、明確な速度の違いとなって現れるのだ。
C125はカブではないようでやっぱりカブ!
C125は、「なんという洗練度合い!」と思わず心のなかで叫ぶほどいい走りを見せてくれるので、もはやカブじゃないかも!? というのが第一印象だ。だが、乗っているうちに「やっぱりカブだな」と納得させられるのは、特徴的な排気音のおかげだろう。新聞配達や郵便配達で聞き慣れたエンジンサウンドをC125も奏でており、加えてロータリー式の名残を持つシフト操作も強くカブを感じさせてくれる要素だ。
C125など、クラッチ操作を必要としないカブのミッションは、走行中に頻繁に上げ下げするのに向いておらす、特にシフトダウンは回転を合わせるにもレスポンスがもっさりしているのでMTスポーツ車のようにスパッスパッとはいかない。また、恐ろしく粘る&遠心クラッチでエンストしないエンジンのおかげで走りがのんびりモードになってくるのだ。C125が遠心クラッチ式を採用するのは、MT車よりも楽で操る楽しさもあるちょうどいいところを目指しているのが分かる。
C125はこのようにカブの伝統を重んじながらもユーザーへの配慮が行き届いていて、カブに乗ると特に欲しくなるギアポジションインジケーターがメーター中央に配置されているのは「ネオクラシック最高」と思わされた瞬間でもある。カブのエンジンはもっさりとしているために何速か分からなくなることがあり、迷わずに済むのはありがたい。
スーパーカブのパッケージを貫いたが故のプラス要素とマイナス要素は?
スーパーカブC125の開発者は60年の伝統を振り返り、カブシリーズの個性を「独創の車体パッケージ」と結論づけており、要素としてライダーや燃料タンク、エンジンといった重量物を車体中心に配置することによる軽快な取り回し性や、低重心のエンジンやフレームによる乗り降りしやすさ、クラッチ操作が不要なイージーオペレーションなどを挙げている。
C125は、これら基礎の部分をフル活用しつつリノベーションした古民家のような存在。昔ながらの佇まいを見せつつ空調や風呂、トイレなどが最新といった具合に新築よりも付加価値が高い物件と言えるだろう。だが、基礎はかつてのままなので街乗りでは無段変速のスクーターよりも俊敏性に欠ける場面や荷物の収納がないといった不便さも受け入れる覚悟が必要だ。
現在でも現役のビジネスバイクとして利用されるスーパーカブは、60年前は利便性においても頂点の存在で、当時売れていたモデルの10倍にあたる月産3万台体制を敷いたにも関わらず、大量のバックオーダーを抱えるほどの人気になったという。一方、現在の交通事情においてカブシリーズはゆとり系と言える存在。ビジネスバイクも多様化し、新聞・郵便配達ではベンリィやベンリイe:を見かけることも多い。そんな時代にC125は、付加価値をウリに趣味の乗り物として存在感を発揮しているのだ。
2020年型スーパーカブC125主要諸元
・全長×全幅×全高:1915×720×1000mm
・ホイールベース:1245mm
・シート高:780mm
・車重110kg
・エジン:空冷4ストローク単気筒SOHC124cc
・最高出力:9.7PS/7500rpm
・最大トルク:1.0㎏m/5000rpm
・燃料タンク容量:3.7L
・変速機:4速リターン(停止時はロータリー式)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=70/90-17、R=80/90-17
・価格:40万7000円