かつての50cc版モンキーに比べるとまるでビッグバイク?

2017年に惜しまれながらも生産終了したモンキー(50cc)に代わる存在として翌年デビューしたモンキー125は、誰もがモンキーと認識できるスタイルを持ちながらサイズを大幅に拡大。2017年の東京モーターショーで初めてその姿を見た時は、思わず「デカっ!」と口から出てしまった。また、そういった声も多く聞かれた。

数字でも見てもモンキー125が大きくなったことは明確で、ホイールベースが約1.3倍、車重は約1.5倍に拡大。まるで中型バイクが大型バイクになったくらいの成長ぶり。さらに排気量と最高出力は2.5倍以上と大きく伸ばしており、サイズ以上に走りもビッグになって帰ってきたのだ。

モンキーは、直接的には平成28年排ガス規制に対応することが難しかったことで生産終了している。だが、実際には違う理由もあるという。1960年代からのレジャーバイクブームでクルマに車載できることがセールスポイントになり、折り畳み可能なハンドルなどを採用したが、これが現代のホンダの基準では許容できなくなっていたのだ。

こういった安全面や海外マーケットの需要なども含めて総合的に検討した結果、125ccという世界基準の排気量が選ばれ、様々な体格のライダーが快適に走行できるディメンションや安全面に配慮した構造を採用。それでいて、モンキーらしいスタイルを徹底して再現したために、デカっ! と驚く巨大モンキーになったのだ。

2017年に従来の50ccモンキーが生産終了して2018年に125ccサイズで復活したモンキー125。試乗したモデルは4速で最新型は5速ミッションを採用してこの9月に発売された。

以前の50ccモンキーと比べると余裕のある普通サイズのライディングポジションとなったモンキー125。見ての通り身長170cmが跨っても窮屈さはない。

足着き性は、シートの幅が広めでクッションも分厚いが体重65kgで両足がべったり接地する。

ソフトな乗り心地でリラックスできるモンキー125、本気で走ると結構速い

だが、走ってみるとモンキーの感覚が残っているのに気付く。モンキーは、他にはない小さなサイズと目線の低さで、30km/hでも倍くらいのスピード感がある。895mmという極端に短いホイールベースから慣れないと直進安定性にも不安があり、それがスピード感が増す要因となるのだ。

モンキー125は、走り出した瞬間「この緊張感!」とモンキーを思い出させてくれる。だが、その印象はすぐに慣れて分からなくなってしまうくらい微妙なもので、過去にモンキーに乗ったことがないライダーは気付かないだろう。それでも片鱗だけもモンキーの走行感覚があるのは意図的に残した隠し味に思える。

基本的にモンキー125の走行フィーリングはとても自然で、125ccのミッション付きバイクとして走る・曲がる・止まるは申し分ない水準。その中でモンキー125ならではなのが、超ソフトなシートと柔らかい足回りと言える。兄弟車であるグロムの硬質なシートなどとは異なる感触なので、これだけでノンビリ走ろうという気分になってしまう。

このソフトさのために荷重がかかるコーナーでは安定感がもう少し欲しくなり、決してスポーツバイクとは言えないのだが、エンジンを高回転まで回すと結構元気に走れて楽しめてしまう。モンキー125はカブ系のエンジンではあるが、マニュアルミッションを採用することでライダーを育てる意図が垣間見れる部分でもある。

先代グロム譲りの空冷4ストOHCエンジン。最高出力は9.4PS/7000rpmと控え目ながら十分な性能に感じられる。

フロントは倒立フォークにディスクブレーキ、ABS仕様も用意されたモンキー125。ブレーキ性能にも安心感がある。

リアブレーキもディスクだがABSはフロントのみ対応となる。スイングアームやクッションスプリングも各色ボディと同色に塗装されており見た目にも楽しい。

125ccなのに二人乗り不可、利便性を犠牲にしても“らしさ”を選んだ

現代の安全基準に合わせてサイズが大きくなり、同時に動力性能も大幅に向上したモンキー125。フロントには倒立フォークを採用し、前後ディスクブレーキまで装備している。フレームはバックボーン式でこれはスポーツバイクのグロムがベース。装備も大幅にアップデートされ「もはやモンキーじゃない!」と思う向きもあるだろう。

それでもモンキー125が紛れもなくモンキーに見えるのは、台形シルエットを保っているからだ。台形の上底は短くする必要があるためシートは極力短くしなければならず、これを乗車定員を1名とすることで解決。同時に積載性も犠牲になったが、タンク容量はグロムと同等を維持している。

さらにモンキーらしさを再現するためにタイヤにもこだわっている。タイのビーラバー製のタイヤは扁平率を高めることでボリュームを持たせ、12インチのホイールサイズでもタイヤをひとまわり大きくすることができた。さらに溝の深いタイヤパターンとすることで、ブロックタイヤを履いていたモンキーのイメージに近付けているのだ。

おまけに前後ライトやウインカー、メーター、ミラーなど全て丸型にこだわったデザインとし、アップタイプのマフラーもきっちり再現することで誰がどう見てもモンキーと言えるスタイルとなった。50cc時代と同じようにライダーを選ばず、その愛くるしい見た目だけでワクワクしてしまう楽しいバイクだ。

大きくなってもモンキーらしい台形シルエットを保つためシートは短めに。座り心地の良さから、ウェルカムプラザ青山(トップ写真)のカフェの椅子に使われている。

メーターはシンプルな単眼のデジタル表示。燃料計やトリップメーターはついているが、時計がない辺りがスクーターとは異なる用途を物語っている!?

モンキーらしくライトは丸型としたがLEDに進化。ハイ/ロー切り替え式で外周にライン発光LEDのポジション灯がついている。

テールランプも当然丸型で、ウインカーを含めてフルLEDになっているのはやはり趣味性が高いところだ。

モンキー125がこだわった台形シルエットのイメージ。

2020年型モンキー125/ABS主要諸元

・全長×全幅×全高:1710×755×1030mm
・ホイールベース:1155mm
・シート高:775mm
・車重:105/107kg
・エジンン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124cc
・最高出力:9.4PS/7000rpm
・最大トルク:1.1㎏m/5250rpm
・燃料タンク容量:5.6L
・変速機:4速リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/80-12、R=180/80-12
・価格:40万7000円/44万円

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事