「バイクが好きです」

そう聞くと、なんとなく嬉しくなります。

お、仲間ですね。どんなバイクに乗っているんですか? 普段はどこを走っているんですか?

そんなふうに、話が広がることもあるでしょう。

でも、話しているうちに「あれ、思っていた感じと違うな」となることもあります。

自分はツーリングの話をしたかったけれど、相手はカスタムの話に夢中。こちらは愛車の写真を見せたかったのに、向こうはサーキットのタイムが気になっている。

どちらも、バイクが好き。

ただ、その「好き」の向いている先が、少し違うのです。

同じ「乗るのが好き」でも、楽しみ方はいろいろ

ひとくちに「バイクに乗る」と言っても、その目的はさまざまです。

サーキットで、もっと速く走れるようになりたい。

まだ見たことのない景色を求めて、遠くまで走りたい。

休日の朝、近所をひと回りするくらいがちょうどいい。

おいしいものを食べに行くために走る人もいれば、行き先を決めず、気の向くままに走る人もいます。

お気に入りのバイクに乗って、ちょっと注目を浴びたい。そんな気持ちだって、あるでしょう。

一人で走るのが好きな人も、仲間と走るのが好きな人もいます。

一日で何百kmも走って満足する人と、短い距離でも十分に満足する人。走った距離は違っても、それぞれに楽しい休日だったなら、それでいいと思うのです。

荷物を積んでキャンプへ。いつものカフェでひと休み

キャンプツーリングが好きな人もいます。

テントや寝袋、調理道具などをバイクに積んで出かける。積載量や固定方法を考えながら、限られたスペースに荷物を収めていく。その準備から、すでに楽しいという人もいるでしょう。

荷物を積み終えた愛車を見ると、いかにも「これから旅に出るぞ」という姿になっている。

あれは、ちょっとワクワクしますよね。

走った先でテントを張り、食事を作って、外で一晩を過ごす。翌朝、そばに停めたバイクを見ながら、今日はどこへ行こうかと考える。

そんな時間を楽しみに、バイクに乗る人もいるのです。

一方で、お気に入りのスポットやカフェに立ち寄るのが好きな人もいます。

いつもの場所にバイクを停め、コーヒーを飲みながら愛車を眺める。

「やっぱり、この角度から見ると格好いいなあ」

なんて思いながら、ひと息つく。

遠くまで行かなくても、泊まりがけでなくても、その時間があるだけで「今日はバイクに乗ってよかった」と思える。

バイクで出かける楽しさには、降りてから過ごす時間も含まれているのでしょう。

乗るのと同じくらい、触っている時間が好き

バイクをイジるのが好き、という人もいます。

パーツを選んで、自分で取り付ける。使い勝手をよくしたり、好みの姿に近づけたりする。その過程が楽しいのでしょう。

もちろん、安全に関わる作業には知識や技術が必要です。でも、自分のできる範囲で手を入れたバイクには、また違った愛着が湧くものです。

洗車や、磨くことが好きな人もいます。

以前取材した人で、雨予報の日には絶対にバイクを走らせず、ツーリング中に雨が降ってしまったら、帰宅後に全部バラバラにして清掃し、組み直すという猛者もいました。

そこまでやるのか、と驚きます。

自分にも同じことができるかと聞かれれば、なかなか難しい。でも、その人にとっては、きれいな状態に戻すところまでがバイクの楽しみなのかもしれません。

ピカピカになった愛車を眺めて、満足する。

走っている時間だけでは測れない「好き」もあるのです。

写真を撮りたい。誰かと集まりたい

愛車の写真を撮るのが好きな人もいます。

一眼レフや高性能なスマートフォンを使って、バイクと風景を一緒に撮る。光の向きや構図を考えながら、お気に入りの一枚を残す。

撮った写真をSNSにアップして、同じ趣味の人とやりとりする。それも楽しみのひとつでしょう。

走りに行ったついでに撮る人もいれば、撮りたい景色があるから走りに行く人もいます。

また、集まることが好きな人もいます。

オフ会やイベントで、たくさんのバイクが並ぶ光景を見る。普段は画面越しに交流している人と会う。愛車を前に、あれこれ話す。

あの高揚感が好き、という気持ちも分かります。

一人で静かに走りたい人には少し賑やかに感じられても、その場を楽しみにしている人にとっては、大切なバイクの時間なのです。

中には「買うのが好き」という人もいる

これは少し意外に感じるかもしれませんが、バイクを買うことが好きな人もいます。

値上がりを期待する投機目的ではなく、純粋に、買うときのワクワク感が好きなのだそうです。

次はどんなバイクにしようか。

気になる車種を調べ、実車を見て、あれこれ悩む。そして購入を決めて、納車を待つ。

確かに、あの時間には独特の楽しさがあります。

一台を長く乗り続ける人もいれば、いろいろなバイクに乗ってみたい人もいる。眺めているだけで嬉しい人だっているでしょう。

同じバイク趣味でも、お金や時間をかけたいところは、人によって違います。

自分の「好き」を、誰かの採点基準にしない

こうして並べてみると、「バイクが好き」という言葉の幅は、ずいぶん広いものです。

だからこそ、ときどき話が噛み合わないこともあるのでしょう。

「もっと走ればいいのに」

「磨いてばかりで、何が楽しいの?」

「また買い替えるの?」

自分の楽しみ方を基準にすると、ついそんなことを言いたくなるかもしれません。

でも、本人はその付き合い方で、十分に楽しんでいるのかもしれないのです。

もちろん、交通ルールを守り、周囲に迷惑をかけないことは大前提です。そのうえで、どこに楽しさを感じるかは、それぞれでよいはずです。

相手と同じ趣味になる必要も、同じ熱量で付き合う必要もありません。

「自分はやらないけれど、そういう楽しみ方もあるんだね」

そのくらいに受け止められれば、お互い気持ちよく話せるのではないでしょうか。

たった六文字の中に、いろんな楽しさが詰まっている

そもそも、一人の中にいくつもの「好き」があってもいいのです。

走るのが好きで、磨くのも好き。キャンプに行くのも、いつものカフェで過ごすのも楽しい。仲間と集まりたい日もあれば、一人になりたい日もある。

昔は遠くまで走ることに夢中だったけれど、今は近所をのんびり走るのが楽しい。そんな変化だってあるでしょう。

「バイクが好き」

たった六文字ですが、その中身は人それぞれです。

次にバイク好きの人と会ったら、「何に乗っているんですか?」に加えて、「どんなことが楽しいですか?」と聞いてみるのも面白そうです。

思いもよらない答えが返ってくるかもしれません。

自分では気に留めなかったパーツへのこだわりや、旅先で過ごす時間の楽しさ。話を聞くことで、初めて気づく魅力もあるでしょう。

「なるほど、そこが面白いんだ」

「今度、自分もやってみようかな」

そんなふうに、誰かの「好き」が、自分の楽しみを広げてくれることもあります。

私自身、いろいろな「好き」の方向性を持った人たちと話をすることが、刺激になっています。

同じバイクの話をしているのに、自分の知らない楽しみ方が、まだまだ出てくる。それが面白いのです。

だから私は、

「バイクが好き」

なのです。


(おしまい)

 

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