’22年は「三ない運動」という概念について再び強く問われる1年になりそうだ。なぜなら、「成人年齢を18歳に引き下げ」と「電動キックボードは16歳以上免許不要」という2つの大きなルール改訂が行われそうだからだ。「大人とは?」「モビリティとは?」について、根本的に大きく変わろうとしている。

●文/まとめ:ヤングマシン編集部(田中淳磨)

再び三ない運動が議論に?

まずは、2つのルール改訂について説明する。’22年の4月1日には、いま18歳/19歳の若者が新成人となる。’18年に選挙権年齢や憲法改正国民投票の年齢が「18歳以上」に引き下げられて話題となったが、働き手の減る少子高齢化においては当然の流れと言えるだろう。

民法において、明治時代から約140年間も続いてきた「成年年齢は20歳」という決まりは、法律の範囲の内外において様々な制限や決まりごとと関わってきた。今回の民法改正では、女性の結婚できる最低年齢が16歳から18歳に引き上げられるが、飲酒や喫煙、競馬など公営競技に関わる年齢制限はこれまでと変わらず20歳のままだ。18歳で成年となれば、高校生であっても、親の同意の必要なく携帯電話を契約し、ローンを組み、クレジットカードを作り、部屋を借りることができる。18歳と言えば、大型二輪免許や普通自動車免許を取れる年齢でもあり、これまで三ない運動等の既存の概念にならって方針を定めてきた教育委員会の考え方や各校の校則にも影響を与えるだろう。

もうひとつのルール改訂は、さらに直接的で大きな影響を及ぼしそうだ。これまでは原付一種と定められてきた電動キックボードだが、’21年12月に警察庁から道交法の改正案が示された。それによると、20km/h以下で走行するものであれば、16歳以上なら運転免許を不要とする方針を示したのだ。道交法上は自転車と同じ扱いになるというが、ナンバープレートやサイドミラーは必要とされている。また、懸念となっていたヘルメットについては努力義務となり、ノーヘル走行も容認される方向に…。さらに、6km/h以下に制御できるなら歩道も走れるというから、ずいぶんと思い切った規制緩和になりそうだ。なお、15歳以下については公道走行はできない見込みだ。

こちらは16歳以上ということで、ほとんどの高校1年生が免許不要の自走モビリティである電動キックボードに乗れることになる。これまでの小さな自走パーソナルモビリティは、シニアカーなど一部の特例を除けば原付一種等の車両区分となり運転免許が必要だったが、この改正案が通れば、近い将来、国内で初めて免許不要の自走パーソナルモビリティが誕生し、多くの高校生が移動手段として選択する可能性が出てきたのだ。

ルール改訂がもたらす変化

現在の道路交通システムでは、モビリティに乗る以上、ある程度の危険やリスクがつきまとう。子供(未成年)を守る責任があるからと大人(保護者)が始めたのが三ない運動だが、18歳を大人とするならば、高校3年生でもバイクや自動車に自由に乗ってよいのか? 免許もいらずに16歳から電動キックボードに乗ってよいのなら、バイクはどうなのか? 大人として権利が拡大される18歳の自由と責任、免許がいらない=道交法を学ぶ機会のほぼない16歳が公道に出ることに関しての権利と責任はどうなのか、問われることになる。

警察庁の法改正案が通れば、街中や観光地にシェアやレンタルの電動キックボードがあふれるだろう。道路交通法をまともに学ぶ機会のない16歳以上の高校生にとって、この状況はどうだろうか? 教育現場や地域の警察といった機関は対応に追われそうだ。

2輪業界からの参入も始まっている電動キックボード。ヘルメットが努力義務となっても着用の推奨に取り組むのだろうか?

埼玉県での高校生講習会の様子。免許のない高校生に対してどう対応するのか。成人年齢の引き下げも様々な影響を及ぼすだろう。

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