12月4日、5日の両日、東京都がEVバイクの大規模イベント「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」を開催したのでレポートする。各社が最新のEVバイクを展示したほか、ゼロエミバイクの普及を進めたい小池百合子都知事も来場し、YouTuber芸人のフワちゃんと一緒にステージイベントも行なうなど気合十分! イベント開催の背景や趣旨については、前編のこちら「EVバイク大集合! 東京都がゼロエミバイクの普及を促進!<前編>」を併せて読んでほしい。

新興の国内EVメーカー「aidea」がスゴい!

aidea(アイデア)というブランドを御存じだろうか。これまでは電動スリーターである「AAカーゴ(下写真の中央3台)」が日本マクドナルド、ドミノピザ、ピザクック、DHLジャパン、日本郵便等のデリバリーバイクに相次いで導入されるなどして話題となっている新興の国内EVメーカーだ。ラストワンマイルや脱炭素社会といった課題解決に最適なモビリティとして、防災分野も含め、様々なカテゴリーで評価されているのだ。
そのaideaがこのイベントで世界初公開を行なったのがAAカーゴの前輪を2輪化した「AA-i(エーエーアイ)」だ。CASEの潮流の中で次々に登場する“新たなモビリティ”の中では、超小型モビリティとEVバイクとの中間という位置付けになる。まさに超コンパクトな4輪パーソナルモビリティの登場だ。こうした4輪モビリティはモーターショーなどのコンセプトモデルで各社から提案されていたが、EVバイクをベースとしたもので、ここまで開発が進められたモデルはなかった。
AA-iの車両区分はいわゆる“ミニカー”となり、バイクの免許では運転できず、普通自動車免許が必要になる。また、足回りには左右独立懸架式サスペンションを採用し、コーナリング時には前後輪ともにリーンする独特のシステムを採用する。走行中の衝撃吸収性能も高く、段差を乗り越える時やコーナリング時でも転倒の不安がない走行安定性が魅力で、装着タイヤによっては不整地でも走破性を発揮しそうだ。
1回の充電による航続距離は73~123km(30~60km/h定地走行時)とされ、VtoH(ビークルトゥホーム)性能も併せ持つので、7.7kWhの大容量リチウムイオンバッテリーによって、災害時などの非常時には2人世帯の一般家庭に換算して約1日分の電力供給ができる。また、車体サイズがコンパクトなので、小型乗用車の駐車スペースであれば、4台も駐車可能。発売時期や価格はまだ未定だ。
と、ここで終わらないのがAA-iの凄いところ。何がスゴイって、AA-iは現在も研究開発が進められていて、GPSやICTを活用した自動運転・遠隔操作に対応し、人や物を無人で運んだり、遠くにいながら車両を操縦するといった活用が想定されているのだ。クルマ椅子の方でも遠隔操作でタクシードライバーを始めるといった新たな雇用の創出にも期待できる。SDGsに則したモノ造りを行ない、新時代のコトづくりまでを考えているaideaには東京都も大注目だろう。

BMWにプロト、その他の注目車種は?

ここからは、その他の注目車種についてブースの雰囲気などを交えながら一挙に紹介しよう! 

●意外と発売が早そう!? BMWのEVスクーター

BMWはかねてより公開していた「Definition CE 04」を展示。その先進的なデザインだけでなく、スマホとの連携や位置調整が可能なシート、ヘルメット等が収納できるサイドコンパートメントなどシティライディングを快適にするための装備が備えられている。早ければ来年早々にも発売ということで、いま注目の一台だ。

●プロトが提案する新たなゴッチア「GEV600TRK」

日本の用品メーカー・ディストリビューターとして知られるプロトが開発販売するEVブランド、ゴッチア「GEV600」は完成度の高さが魅力のEVバイクだ。中国からの部品をただ組み上げるだけでなく、現地の開発担当者と直接やり取りをして、日本人が納得できる基準まで個々のパーツを仕上げており、走行テストも繰り返されているからだ。
今回は、オフロードコンセプトでカスタムされた「GEV600TRK」も展示。特徴的なアップフェンダーやアースカラーのボディ、ブロックパターンタイヤの採用などでアウトドアでも楽しめる装備が与えられていた。

●KTM、ハスクバーナ、ガスガスブランドで登場したEVキッズモト

KTMジャパンは、KTM、ハスクバーナ、ガスガスと自社の3ブランドでEVキッズモトを展開する。KTM「SX-E 5('22年モデル・税込70万円)」、ハスクバーナ「EE 5('22年モデル・税込70万円)」、ガスガス「MC-E 5('22年モデル・税込66万8,000円)」は共通のプラットフォーム、パワーユニットを採用した競技専用車で、世界的に盛り上がりを見せている電動チャイルドクロスに対応した仕様となっている。
2019年に発表されていたKTM「SX-E 5」はガソリンエンジンのキッズモト「50 SX」をベースにパワーユニットを電動化したモデルで、他2台のベースモデルとなっている。子供の成長に合わせて車高を調整できるなど、長く使えるように配慮され、WP社製前後サスペンションやテーパーハンドルバーなど各部の装備も豪華だ。

写真はプレゼンテ―ションを行なうKTMジャパンの増岡淳氏とSX-E 5。「初めてバイクに乗るキッズに電動は最適」と子供と電動バイクの親和性の高さをアピールした。

●EVモビリティの試乗や啓発目的のステージイベントも開催

会場では、EVバイク(ヤマハ E-Vino)の試乗会やKintone(ミニセグウェイ)の体験会、ワークショップのほか、ステージイベントも多数開催されていた。

電動バイク(E-Vino)に初めて乗ったという牛島さん(上写真・都内在住34歳)は「普段はほとんど乗り物に乗らないんですが、思ったより簡単で自転車感覚で乗れました。使い方もシンプルでハードルは低いなと思いました。ただ、発進時のトルクはすごかったので、そこには慣れないと」と感想を聞かせてくれた。
ステージで行なわれた、善ちゃんとボルトボルズによるEVバイクサイエンスショーでは、バイクのバッテリーにインバーターをかませてクリスマスツリーを点灯させたり、バイクの走行原理でもあるジャイロ効果について体験したりと客席を楽しませた。
ターンテーブル(回転台)に立ち、回した状態の車輪を傾けると、傾けた方向に体が回転していくという不思議。これぞジャイロ効果だ。
また、慶応義塾大学医学部 医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏による基調講演「ポストコロナ時代の持続可能な社会に向けて」もステージで開催された。データサイエンティストであり討論番組等にも多数出演している氏は、日本のDXの遅れを指摘しつつも、サスティナブルな社会をつくるためにもバイクの電動化や自動運転を推進し、移動そのものを楽しめる社会、それによる地域活性化など、EVバイク普及による社会変化の可能性について言及した。

以上、東京都主催のEVバイクイベントを前・後編にわたってレポートした。東京都は都内初となるEVバイクのシェアリング実証実験「イーライド東京」も開始しており、脱炭素都市の実現に向けて着実に歩みを進めている。

 

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