2022年11月19日、20日の2日間にわたって東京都庁前で開催された「ZEV Tokyo Festival」をレポート。2035年にはバイクもゼロエミッションを目指すとしている東京都の小池百合子都知事も参加し、カワサキの水素エンジン四輪バギーに試乗(助手席で)するという一幕も。
●文:Nom(埜邑博道) ●写真:ZEV-Tokyo Festival、Nom ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
都庁前にゼロ・エミッション・ヴィークルが勢ぞろい! カワサキも水素エンジンバギーとZ EVを出品
国が2050年のカーボンニュートラル(以下CN)を目指すなか、それより一足早い2030年に四輪、そして2035年にバイクのガソリン車の販売ゼロを目指す「ゼロエミッション東京戦略」を表明している、小池百合子都知事が率いる東京都。
その象徴(本丸かな?)ともいえる都庁前を中心に、11月19、20日の2日間開催されたのが「ZEV Tokyo Festival」~未来のクルマが東京に集合~だ。
19日に都庁第二庁舎前で開催されたオープニングセレモニーでは、脱炭素を目指して開発中のゼロエミッション・ヴィークル(ZEV)が建物正面にずらりと並び、その中にはカワサキ・H2エンジンを搭載した水素を燃料とする国内6メーカーが共同開発中のバギーや、カワサキが鈴鹿8耐でも走行させたEVバイク、そしてヤマハも開発中のトライアルマシン・TY‐E2.0を出品。
都庁前にずらりと並んだZEV。左から、トヨタ車体・コムスP・COM(電気)、ヤマハ・TY-E2.0(電気)、マツダ・MAZDA CX-60バイオ燃料実証車(バイオ燃料)、Formula E(電気)、日産・NISSAN LEAF NISMO RC(電気)、6社水素エンジン研究チーム・水素エンジン搭載バギー(水素)、トヨタ・COROLLA CROSS H2 CONSEPT(水素)、カワサキモータース・二輪研究車第一号(ZEV・電気)。
カワサキは水素燃料で走る四輪バギーと、EVのネイキッドスポーツ“Z EV”を出品。ヤマハは、開発中の電動トライアルマシン、TY‐E2.0を出品し、デモ走行では黒岩選手が走らせた。
2024年春に東京で開催が予定されている「Formula e」用マシンを先頭にパレードが行われた。
小池都知事の「東京都ではCO2を排出しない環境先進都市『Zero emission Tokyo』の実現に向け、さまざまな分野で脱炭素化の動きを取っており、何としてでもこの動きをより加速させていかなければならないと思っています。そのため、2024年春には『電気自動車のF1』とも呼ばれる『フォーミュラE』が走るレースを東京で開催する協定を締結いたしました。ZEVのかっこ良さや地球環境への配慮を知り、『もっと使ってみよう、乗ってみたい』。そんなZEVの魅力を感じられるようなイベントにしたいと考えております。ZEVを身近なモビリティとして利用し、それを東京から世界へ発信する、そのような社会を目指していきたいと思っています。みなさんでサステナブルな社会をつくっていきましょう」という開会挨拶に続いて、Formula Eカーを先頭に、計8台のZEVが都庁通りをパレードした。
小池知事は、1周目は日産の「NISSAN LEAF NISMO RC」(電気自動車)に、2週目は「水素エンジン搭載バギー」に乗車。
「走行中の音がとても静かにもかかわらず、加速が気持ちいいです。水素エンジン車もEVレーシングカーも地球環境には優しいというところがとても魅力的ですね」とコメントし、ZEVの良さを集まった都民に広くPRした。
【動画】カワサキ製 水素エンジンの四輪バギーに同乗する小池百合子都知事
水素エンジンの四輪バギーにも同乗した小池都知事。ドライバーはカワサキモータースのエンジニア・松田さんだった。
2台のZEVを出展し、バギーの運転手も務めたカワサキモータースのエンジニア、松田義基さんに今回の出展のいきさつと、国内メーカーのなかでもひときわ積極的な取組が見えるカワサキの脱炭素、CN化について聞いてみた。
「この水素エンジンバギーは、うちがH2のエンジンとバギーの車体を提供して、国内メーカー6社で共同研究している車両で、今回はトヨタさんからのお誘いがありました。6社で研究しているので、開発の進捗は早くて、だいたい手なづけつつありますが、水素は燃えるのがガソリンよりも早いので燃焼速度を落とさないといけません」
先ごろイタリア・ミラノで開催されたEICMAで、カワサキは「ZEV」、「ニンジャEV」、ハイブリッドの「ニンジャHEV」を出品したのに加え、プロモーションムービーでは後部左右のパニアケースに水素ボンベを積んだ水素エンジン車のイラストも公開した。
電気、電子制御など、「電」が付くものはすべて担当してきたというカワサキの松田さん。カワサキが一歩リードする脱炭素、CNへの考えを語ってくれた。
「交換式の水素ボンベを使用するのもひとつの案ですが、ああやればいままで通りエンジンが使えます。現段階で現実的なのは、ストロング方式(編注:エンジン+電気、電気のみ、エンジンのみが使用可能)を採用したハイブリッド車ですね。ZEVはクラス的に125㏄相当で、来年には市販する予定です。12年前にボクを含む3人で始めた『EVコンセプト』というプロジェクトがあって、EVやハイブリッドなどをずっと開発してきて、特許もたくさん取得しています。ずっと開発をしてきて、最近、バイクもようやくCO2を排出しない、エンジン以外のものを使わないといけないという機運になってきたので、これまでの開発結果をお見せしているんですけど、普通は発売まで黙っていますよね(笑)。でも、そうするとCNの選択肢が減っちゃう可能性があるので、積極的に公開しています。敵は炭素で、メーカー、会社同士で争っている場合じゃないと思っています。実際に多くの人に見てもらって、合成燃料や水素などを使えばエンジンを捨てなくていいんだと思ってもらいたいんです」
以上のように、松田さんからは多くのバイクユーザーが望む「エンジン」の存続に向けての心強い言葉を聞くことができた。今後も、CNに積極的に取り組むカワサキに期待したいと思う。
ホンダ、ヤマハ、カワサキ、aideaが新宿中央公園にブースを出展した
そして、都庁の裏手にある新宿中央公園には各社が最新のEVなどを展示していて、二輪系はホンダ、ヤマハ、カワサキ、そしてaideaがブースを出展。ホンダ、ヤマハはEVスクーターなどを、カワサキは開発中の水素エンジンとhybrid車などを展示していた。
新宿中央公園では、ホンダはGYRO CANOPY e:と、交換用バッテリーステーションを展示。ヤマハは、E-VINOと、実証実験中の原付二種クラスのEVスクーター、EV E01、3輪の電動モビリティ・TRITOWNを展示。カワサキは、ハイブリッド車と開発中の水素エンジン、2023年春に市販予定の電動3輪ヴィークル「noslisu(ノスリス)を展示した。
また、国内5番目の二輪メーカーとしてビジネス用のEVスクーターを製造・販売するaideaは、ブース出展のほかに、都民広場のステージで新たなEVスクーターのAA-Wiz α/β(原付一種/原付二種)とAA-Wiz PRO α/β(原付一種/原付二種)を同社マーケティングディレクターの成田裕一郎さんがプレゼンテーションをしながら初公開した。
ステージで、新型EVスクーターを初公開、プレゼンテーションを行ったマーケティングディレクターの成田さん。ニューモデルのAA-Wizは荷物の運搬に特化したビジネスバイクだ(写真のボックスはオプション)。
ホンダもビジネス分野でのEVスクーターを積極的に導入しているように、すでにマクドナルドのデリバリー車に採用されているaideaのEVラインナップも増えることで、まずは法人向けからバイクのCNが進んでいくのではないだろうか。
【動画】ZEV Tokyo Festival オープニングセレモニー
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