ホンダは、EICMA 2024で『new ICE concept』と名付けた新しいコンセプトモデルを発表した。搭載するエンジンは、なんと約40年ぶりのV型3気筒。しかも二輪車として世界初の電動過給機を搭載している!
プロアームはかつてのVFRを思わせるが……?
ホンダが全く新しい内燃機関のコンセプトモデルとして世界初公開したのは、『new ICE concept』と名付けられたV3エンジンだった。電動過給機付きというから恐れ入る。
“新規開発中の大型二輪車を想定した水冷75度V型3気筒エンジン”との触れ込みから、公道市販車に搭載する前提なのは間違いなく、コンセプトモデルの車体はざっくりながらロードスポーツ然としている。プロアームの採用などはかつて最新技術を最初に投入するお約束になっていたVFR750F~VFR800Fなどを思わせる。
電動コンプレッサー=過給機を採用したことにより、エンジン回転数にかかわらず任意に過給をコントロールすることができ、低回転からハイレスポンスを実現可能。加えてスリムなV3エンジンとの組み合わせにより、スペースが限られている二輪車において、マスの集中化を狙った搭載位置の自由度も高い。また、インタークーラーを必要としない設計としたことで軽量化にも貢献しているという。
まだまだわからないことだらけだが、ホンダがこうした内燃機関絡みのコンセプトモデルで市販車を色濃く示唆するのは、デュアルクラッチトランスミッション=DCTを初めて搭載して2010年に発売されたVFR1200F以来かもしれない。
その後、DCTは広く普及し、現在のオートマチックトランスミッションブームの端緒になったのは、ベテランのバイクファンならよく知るところだろう。
ホンダが1985年5月10日に発売したNS400R。2ストロークのV型3気筒エンジンを搭載していたが、モデルチェンジを受けることなく初代のみで消えていった。これは当時のレーサーレプリカが250ccクラスで隆盛を極めていったことから、車検付きの2ストスポーツが敬遠された側面もあっただろう。
2008年のミラノショーでモックアップのようなコンセプトモデルが登場し、のち2010年3月18日に発売されたVFR1200F。当時革新的だったデュアルクラッチトランスミッション(DCT)を二輪車として初めて搭載し、その後のホンダDCT隆盛の礎となった。のちにクロスオーバー版のVFR1200Xにも派生。※VFR1200F DCTは7月29日発売
ホンダは、この電動過給機付きV型3気筒エンジンを内燃機関領域での新たなチャレンジとして位置づけ、モーターサイクルを操る楽しさ、所有する喜びをより一層体感してもらうことを目指すとしている。
その答えがスポーツツアラーになるのか、その発展としてスーパースポーツやクロスオーバーモデルなどもあり得るのか……。楽しみに待ちたい!
電動過給機付きV型3気筒エンジン(コンセプトモデル)
搭載する電動過給機付きV型3気筒エンジンのほかには、インナーチューブにDLCコートを施した倒立フロントフォークやリンクレス式のリアショック、プロアーム(片持ち式スイングアーム)の採用などが目を惹く。スチールパイプによるトラス(トレリス)フレームはコンセプトモデル用に製作されたダミーの可能性が高いが、スイングアームピボットとメインフレームを分離した、いわゆるピボットレスフレームのたぐい。もしこのまま市販車につながるなら大きなトピックになりそう? ラジアルマウント式のフロントブレーキキャリパーはトキコ製だ。
エンジン自体に目をやると、まずわかるのはDOHCを採用し、ダウンドラフト吸気になっていること。そして気になるのは右側にあるクラッチカバーのあたりだが、レリーズに相当するものが露出していないのでDCT(あるいは内蔵式のEクラッチとか?)だろうか。ただしこのカバーまわりもダミーの可能性がなくはないのでなんとも言えないところ。エンジン左側で言えば、ドライブスプロケットの取り出し軸はあるものの、シフトシャフトの存在が伺えず、こちらもDCTの採用などを想像させる。
答えが明らかになるのは……早くて2025年のEICMAだろうか。
電動過給機付きV型3気筒エンジン(コンセプトモデル)
電動過給機付きV型3気筒エンジン
電動過給機
電動過給機付きV型3気筒エンジン(コンセプトモデル)
【動画】New V3 Engine Concept | Honda Motorcycles
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