2024年11月2日(土)、3日(日)、群馬県北軽井沢の北軽井沢グラウンドにて、ツーリスト・オフローダー・ゲームス(以下:TORG)の第1回大会が開かれた。このTORGは、アドベンチャーツアラーのユーザーを対象とした「ツーリングセクション」×「スペシャルステージ」で構成されるオフロード系のイベント。今回が初開催となるが、近年バイクメーカー各社が力を入れているアドベンチャーツアラーのジャンルを対象としたイベントだけに今後は大きく盛り上がりそうだ。

主催者はモータージャーナリストの松井勉氏。BMW MOTORRAD公認オフロードインストラクターであり、FUN RIDE TRAINING アドベンチャーバイクトレーニング主催している。

TORGの主催者はモータージャーナリストの松井勉氏。BMW MOTORRAD公認オフロードインストラクターであり、FUN RIDE TRAINING アドベンチャーバイクトレーニングを主催している。

アドベンチャーツアラーのライディングスキルの総合力を競う

このTORGは松井勉氏が長年構想を温めてきた企画で、その内容は“オフローダー・ゲームス”の名前の通り、BMWのGSシリーズをはじめとするアドベンチャーツアラーでオフロード系のライディングスキルを競うというもの。競技はタイム計測を行ういくつかの「スペシャルステージ」と、公道を使用する「ツーリングセクション」を組み合わせたラリー形式で、2日間かけて行われる。

車格が大きく扱いの難しいアドベンチャーバイクで技術を競うTORG。競技内容がBMWが主催するGSトロフィーの要素に近いこともあり、今回はGSで参加するライダーが多かった。

車格が大きく扱いの難しいアドベンチャーバイクでその操縦技術を競うTORG。競技内容がBMWが主催するGSトロフィーの要素に近いこともあり、第1回大会はGSで参加するライダーが多かった。

 

ここでちょっと耳馴染みのない“スペシャルステージ(以下:SS)”について説明しておこう。このTORGにおけるSSとは、パイロンで作られたテクニカルなコースであり、ここで参加者は走破タイムとミスの少なさを競う。誤解を恐れずに言えば、ジムカーナ競技のオフロード版と思ってもらえればイメージしやすいだろう。ただジムカーナ競技との大きな違いは、走る路面が滑りやすい不整地路面であることと、競技車両が200kg超えのアドベンチャーツアラーのため、スピード競技というよりは低速域でのマシンコントロールに重きをおいていることだ。パイロンや8の字などでは、周回タイムはもちろんだが、前輪と後輪の通過位置を把握してパイロン接触を防ぐようなトライアル競技的なスキルも求められる。

パイロンで作られたコースを大きなアドベンチャーバイクで走破。タイムが早いほどいいが、パイロン接触、ミスコースなどは減点対象となる。1日目は土砂降りのバッドコンディションだがアドベンチャーライダーにはそんなの関係ない!?

パイロンで作られたコースを大きなアドベンチャーツアラーで走破。タイムが速いほどいいが、パイロン接触、ミスコースなどは減点対象となる。1日目は土砂降りのバッドコンディションだったがタフなアドベンチャーライダーには天候など関係ない!?

 

しかも5台、10台とハイパワーなアドベンチャーツアラーが走れば、路面状況は刻々と変わり、前走車が作った轍やぬかるみを避けたりクリアするといった応用力も必要。低速コントロール技術だけでも、ハイスピードコントロール技術だけでも上位入賞は狙えず、総合的なマシンコントロール技術を競う内容となっている。

SS競技の前には、下見とルール説明があり、このルール説明をきちんと把握し、実行することが重要となる。

SS競技の前には、下見とルールの説明があり、このルール説明をきちんと把握し、実行することが重要となる。

 

またこのTORGのSSの面白いところは、“足着きOK”や“スタンディングのみ”、“ゴールの認定方法”などのルールがSSごとに変わることだろう。例えば「パイロンを720°回って戻る」というお題が出された場合に、時計回りで3周するのが確実か? それとも入り方を工夫して反時計回りで2周するか? など、ルールの理解力を求めるような課題があったりする。

参加者を悩ませた“パイロン720°”の課題。正解は、「時計回りで3周してもOK」だが、「アプローチの仕方を工夫すれば反時計周りで2周でOK」。……なので反時計周りで2周の方がタイムは稼げるというお題だった。ちなみに写真は、今年の2月にGSを購入し、オフロードの特訓して参加した女性の参加者だ。

参加者を悩ませることになった“パイロン720°”の課題。正解は、「時計回りで3周してもOK」だが、「アプローチの仕方を工夫すれば反時計周りで2周でOK」。……なので反時計周りで2周の方がタイムを稼げるというお題だった。ちなみに写真は、今年の2月にGSを購入し、オフロードの特訓して参加した女性の参加者だ。

TORGは2日構成。1日目の晩は、北軽井沢ホテルにて参加者の親睦を深める懇親会を開催。昼間の競技の状況や課題点などを肴に盛り上がる。

TORGは2日構成。1日目の晩は、北軽井沢ホテルにて参加者の親睦を深める懇親会を開催。昼間の競技の状況や課題点などを肴に盛り上がる。

ちなみに主催の松井勉氏は、この日が61歳の誕生日。スタッフからのバースデーサプライズがあった。

ちなみに主催の松井勉氏は、この日が61歳の誕生日。スタッフからのバースデーサプライズがあった。

2日目は「オフロードセクション」と「ツーリングセクション」がメインに

前日の雨の影響でモトクロス的な起伏のあるコースはキャンセルになったものの、狭いシングルトラックを駆け抜けるアドベンチャーツアラーは度迫力!

前日の雨の影響でモトクロス的な起伏のあるコースから変更になったものの、狭いシングルトラックを駆け抜けるアドベンチャーツアラーは度迫力!

 

TORGの2日目は、初日の土砂降りから一転して雲ひとつない快晴に恵まれることになった。この日のお題は、起伏のある「オフロードセクション」と呼ばれるSSを使ったハイスピード系の競技をメインに、雨の影響で中断繰り越しとなった1日目の競技の残りも並行して行われた。

「オフロードセクション」のSSは右回り、左回りの2回計測。ジャンプセクションではアドベンチャーツアラーが飛ぶ!

「オフロードセクション」のSSは右回り、左回りの2回計測。ジャンプセクションではアドベンチャーツアラーが飛ぶ!

2日間で合計7つのSSのタイムをポイント加算し、2日間合計のポイントが少ない(タイムが短い)ほど成績がいい。パイロン接触やミスコースを審査員がチェックしポイント加算。

2日間で合計7つのSSのタイムをポイント加算し、2日間合計のポイントが少ない(タイムが短い)ほど成績がよくなる。パイロン接触やミスコースは審査員が張り付きでチェックし、ポイント加算される。

参加資格は、排気量は450cc以上の2気筒以上もしくは1気筒のアドベンチャーツアラー&スクランブラーモデル。

参加資格は、排気量450cc以上の2気筒以上もしくは1気筒のアドベンチャーツアラー&スクランブラーモデル。

 

両日とも、SSでの競技を終えたライダーは「ツーリングセクション」と呼ばれる林道ツーリングに出かける。本来は各々がスマートフォンでQRコードを読み取り、Googleマップのナビを頼りに「チェックポイント(CP)」を通過してくる。……というラリー要素が競技の条件として組み込まれる予定だったが、今回は1日目が台風直撃の予報だったこともあり「ツーリングセクション」への参加はライダーの任意とし、SSでの結果がそのままリザルトに反映されることになった。

スマートフォンでQRコードを読み取り、Googleマップのナビ機能でツーリングセクションへと出発。

スマートフォンでQRコードを読み取り、Googleマップのナビ機能でツーリングセクションへと出発。指定されたCPを通過して戻ってくる。本来は要所となるCPで写真を撮って通過の証拠とするルールだったようだ。

紅葉真っ盛りの林道をゆく。ツーリングセクションでは万沢林道をはじめ、浅間地域のダート林道をめぐる。今回の「ツーリングセクション」は競技ではなく、任意とされたため一緒にSSを走ったグループでマスツーリングする内容となった。

紅葉真っ盛りの林道をゆく。ツーリングセクションでは万沢林道をはじめ、浅間地域のダート林道を巡った。今回の「ツーリングセクション」は競技ではなく、任意とされたため一緒にSSを走ったグループでマスツーリングするような内容となった。

 

今回、筆者もエントラントに混じって参加取材をしてみたのだが、すごいと思ったのは表彰式で公開される全員分のリザルトだ。自分の順位がわかるだけでなく、各セクションのタイムや減点項目が克明に記録されているため、自分に足りない要素や苦手項目が一目瞭然。もちろん、トップライダーやライバルとの差もしっかりわかる様になっていて自分の実力がしっかり把握できる。TORGは、BMWが主催するGSトロフィーの日本代表の選考会がベースになっているそうだが、リザルトから読み取れる自分の技量を分析し、弱点を強化したり、長所を伸ばすような練習を行えば確実なライディングスキルのアップができるというわけである。

総合1位から10位(左から)の参加者。GSトロフィー日本代表の顔もちらほら。

TORG総合1位から10位(左から)の参加者。GSトロフィー日本代表の顔もちらほら。

台風予報の中、44人のアドベンチャーライダーが参集。しかも参加者の8割が自走というから恐れ入る。

第1回TORGには、遠くは北海道、岡山、四国などから44人のアドベンチャーライダーが参集。しかも台風予報の中、参加者の8割が自走参加というから恐れ入る。次回の開催予定については公式インスタグラムにて。

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