ビッグスクーターブームの頂点モデルの最新型はスポーツ指向

2000年頃に巻き起こったビッグスクーターブームは、250ccモデルが主役でシート高が低く全長が長いクルーザーのような快適指向のモデルが中心だった。その中で主役の座に就いたのは、ヤマハ・マジェスティに対抗したホンダのフォルツァで、何度もベストセラーにも輝くほどの人気だった。

ビグスクブームが終息したのは、2006年から駐車違反の取り締まりが強化されたことが要因で、旧来の流れを汲むフォルツァSiは2013年型の一代限りで終了。当時はすでに駐車スペースが有効に使える125ccのPCXがブームを迎えており、追加発売になったPCX150が想定外の人気でバックオーダーを抱えた時期と重なる。

まるで恐竜が滅び小型の哺乳類が勢力を拡大したような世代交代が起こり、今は普通免許スクーターといえば150~160ccがスタンダードの時代になっている。そんな折にフォルツァ(MF13)が2018年に復活し、この2021年型(MF15)でさらなる進化を果たしたのだ。

まず、MF13以降の特徴としては車高が上がったことが大きい。それまでのビグスクは日本市場向けに開発されたものだったのがグローバルモデルとなり、現在の250ccクラスは欧州のニーズを反映したものに様変わりしている。そのため、走行安定性を確保するためにホイール径が15インチにまで拡大している。

同時にシート高が710mm程度だったものが780mmに上昇して足着き性が犠牲に。重心が上がったことでスポーティなハンドリングになり、最近乗り慣れていた150スクーターよりも速度域が高いので、TMAXに近い印象を受けた。

2018年にハイト系スタイルで新登場したフォルツァがモデルチェンジして2021年3月に発売。エンジンは、従来の「eSP」をさらに進化させた「eSP+」を採用。フリクションロスや振動を低減させながら吸排気効率を向上させている。

250ccだけにバイクの大きさが際立つライディングポジション。ステップも前後に自由度が高くロングツーリングにも行けそうな余裕がある。ライダーの身長は170cm。

かつての250ccビッグスクーターよりも大径となる前15/後14インチホイールを採用していることから、足着き性は犠牲になってしまった。ライダーの体重は65kg。

新作エンジンはバランサーを追加してより上質な走りを獲得

2021年型フォルツァは、欧州で排ガス規制に対応するためにエンジンが大幅に刷新されたのが特徴。日本国内でも令和2年排ガス規制値をクリアしつつ、エンジンパワーが向上している。カタログ値では23PSで変化がないものの、特に低中回転域が大幅にパワーアップしているのだ。

大きな部分ではボア×ストローク比を変更し、ロングストローク化することで実用域の出力を向上。クランクシャフトは従来形から10%も軽量化されレスポンスが向上、バルブタイミングを変更して吸排気効率が向上している。また、エンジン以外の部分ではエアクリーナーやマフラーも吸排気効率がアップする内部構造とし、性能強化に繋げている。

ただし、最も注目に値するのはバランサーシャフトの追加だろう。エンジンの振動が低減することにより上質さが増している。試乗では高速道路も走行したが、新型フォルツァは100km/hでの巡航は余裕。おそらく、120km/h区間でも問題なく走行できるだけのパワーを発揮しながら、高速道路での振動の少なさは特筆もの。まるで、ラグジュアリーなセダンに乗っているかのような気分になるのだ。

様々な部分でパワーアップするための変更をエンジンに施しているのは、バランサーを装着しても従来型からパワーダウンさせないための策。改良の目的は速さではなく、質的向上にあると言っていいだろう。

従来のeSPからeSP+に名称変更されたエンジンはピストンオイルジェットを採用し、吸気・排気ポートは完全新設計としている。

新型フォルツァはエンジンにバランサーシャフトを新たに採用して、より振動を低減させている。高速道路の快適さは特筆ものだ。

すり抜けは苦手で取り回しも軽くはない

そして、予想通り街中の渋滞では車格の大きさが気になってしまった。150ccクラスのスクーターに慣れるとフォルツァのいい面も見えるが、ネガな部分もはっきりする。150ccクラスなら行けるところもフォルツァでは行けないという場面がかなりあって、150ccの機動性の高さを改めて知ることになった。

また、カウルマウントされたミラーがクルマのミラーとぶつからないように気を使う場面もよくあった。左右後方の視認性にはとても優れているのだが、ウインカーと一体になっていることもあって、折り畳んで走行することができないのだ。

そして、停車してからの取り回しもずっしりと手応えを感じる。車重は186kgで数値通り400ccクラスに近い重さがある。150ccクラスのスクーターと比べると50kg以上も重いので、その気軽さとは比較にならない。

一方、電動で高さを調整できるスクリーンは、街中で軽快に走りたい時や幹線道路で風圧を防ぎたい時など、状況に応じて変えられるのがフォルツァならでは。調整の幅も広がったので、様々な身長のライダーに対応できるはずだ。

ボディマウントのミラーは、目線の移動が少なくて安全性が高い半面、すり抜けが苦手となる。

2018型から採用している電動スクリーンは、この2021年型で可動域を40mm伸長している。こちらは一番高くした状態。

こちらは一番低い位置で、全可動域は180mmあるので、身長の違いや二人乗り時など様々状況に対応できるようになっている。

新型フォルツァを150ccクラスと比較するのは間違い、上位クラスと同列の完成度

現在、新車で購入できる国産の250㏄スクーターのラインナップは、ホンダのフォルツァとヤマハのXMAXの2車種のみ。マジェスティやスカイウェイブといった王道ビッグスクーターから、PS250、フュージョン、マグザムといった個性派まで豊富なラインナップが揃っていた頃とは隔世の感がある。

そんな状況で250ccのビッグスクーターに乗るメリットとは一体何か? 普通免許で乗れるモデルは、PCX160やNMAX155、ADV150があまりにも魅力的すぎる。しかし、筆者が新型フォルツァで感じたのはクラス上のTMAX的な魅力であって、電動スクリーンといった装備も含めて400~500ccクラスと同列で比較すべきと考えるに至った。

新型フォルツァは、往年のビグスクよりも確実にスポーツ性が高まっており、その走りにはTMAX的なオートマチックスポーツの要素がある。一方で装備が充実し、メーター等の外観もゴージャス。また、収納性は150ccクラスと比べるまでもなく、さらにTMAXやX-ADVよりも容量を確保しているのだ。

これが車検のない250ccという排気量で実現できていることが新型フォルツァの価値であり、十分に購入する理由となるはずだ。ちなみに市街地も高速道路も走ったフォルツァの燃費は32km/Lほど。十分な好燃費を記録した。

シート下は48Lのスペースを確保していて、PCXより18L(灯油のポリタンク1個分!)も上回っている。さすがの積載量でヘルメットに加え仕事道具も余裕で収納できる。

継続採用しているアナログ2連メーターは、質感の高さをより強調するためメーターリングを新形状とし表面処理に金属的な輝きを与えている。目盛りと針は自発光式を採用。

高速走行時などで安心感のある走りを実現するため、新型フォルツァのフレームはパイプ径や肉厚、材質を選定し、これらの接合位置を最適化している。

マフラー内部の構造を3室→2室に変更することで排気抵抗を減らすとともに、キャタライザーの配置などを最適化し令和2年排ガス規制値をクリアしている。

ビッグスクーターブーム時のフォルツァはフロントホイールが13インチだったが、2018年型以降は15インチとなり、安定性が向上。

ヘッドライト下部分はスポイラー状になっており、Z字形状のフローラインが装着されるボディー面まで力強いデザインにまとめられている。ミラー部のウインカーの形状も一新された。

シートは座面が広くて快適。前にも後にも移動できる自由度があるので、走行状況によって着座位置を調整できる。グラブレールがあるのでパッセンジャーも安心。

左側のポケットはキー連動式なので貴重品の収納にも使用可能。USBタイプ2の電源もありスマートフォンの充電もできる。

トラクションコントロールの設定やメーターの液晶表示切替などのスイッチ類を左ハンドルに集中的に配置している。

2021年型フォルツァ主要諸元

・全長×全幅×全高:2145×750×1360mm
・ホイールベース:1510mm
・シート高:780mm
・車重:186kg
・エジンン:水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 249cc
・最高出力:23PS/7750rpm
・最大トルク:2.4kg-m/6250rpm
・燃料タンク容量:11L
・変速機:Vマチック無段変速式
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-15、R=140/70-14
・価格:65万8900円

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