ADV150は、なぜADV125ではなく150でデビューしたのか?

ADV150は、PCX150をベースに2020年にデビューしたスクーター。PCXシリーズは日本一売れているバイクなので、さらに派生機種まで出して台数を増やす必要はそれほどないはず。それでもADV150をリリースしたのは、普通免許スクーターの盛り上げが目的となる。

そこで選ばれたのがPCXという最強のベース車で、狙いが普通免許クラスだったことからADV125ではなくADV150となった。ただし、下手をするとPCX150と食い合ってしまうのではないか? という見方もできる。ADV150が大胆なコンセプトで登場した理由はここにあるだろう。

実際、ADV150にはPCXとは全く異なる魅力があり、ユーザーの用途や好みも分かれるはず。ADV150の魅力は何と言ってもそのデザインにあり、シャーシがPCX150と共通でもベーシックなスクーターからワクワクするキャラクターのアドベンチャースタイルへと様変わりさせている。

PCXと言えば国民的人気の最強のコミューターだが、ADV150はモンキー125やCT125ハンターカブなどと同じレジャーバイクに近いイメージ。ただし、それは決して見た目だけのものではない。PCX150に準じる利便性を持ちながら、レジャーバイクとしての中身も徹底して作り込まれているのだ。

ホンダのADV150は2020年にデビューした150ccスクーター。圧倒的な人気のPCX150(2018年型)をベースにアドベンチャースタイルの外観や専用の足回りを与えて、新たなユーザーにアプローチしている。

身長170cmのライディングポジションはPCXに比べると腰高な印象だが、その分ヒザの曲がりは穏やかになる。上半身も直立したアドベンチャーモデル的な姿勢だ。

足着き性は体重65kgで両かかとが浮くくらい。ちなみにPCXではかかとまで接地していたので、足着き性ではPCXシリーズの方がADV150より優れている。

PCX160にも負けていない? ADV150のエンジンは150ccの最良仕様

ADV150のベースとなったPCX150は、2021年型で排気量を7ccアップしてPCX160にモデルチェンジしている。また、4バルブも採用したことからPCX160の最高出力は15→15.8PSへとアップしており、PCX同士で比べたら160が有利となる。しかし、ADV150との比較だとそうとは限らないのだ。

実際、PCX160とADV150で比較試乗した時は「互角では?」という印象。信号待ちから全開でスタートしても差が着かないのだ。というのも、ADV150のエンジンはベースとなった2018年型PCXをさらに改良しており、低中回転域はPCX150よりもパワーが出ているのだ。

ADV150はアドベンチャーとしての走りを実現するためにエンジンまわりを改良しており、マフラーは触媒の位置やパイプの構造を見直して低速域の扱いやすさが向上。吸気系はエアクリーナー内部のダクト径や長さを変更し、駆動系はウエイトローラのなどのセッティングを見直すことで低中回転の加速力向上に結びつけている。

これはダート路面での走行を考慮した変更だが、舗装路での加速力向上にも寄与しており、シグナルダッシュはPCX160と互角? という結果に結びついている。ADV150のエンジンは2バルブ149ccの最終型と言えるもので、その完成度の高さも魅力なのだ。

エンジンは2018年型のPCX150と同系で、カタログ上の最高出力15PSは変わらず。ADV150のマフラーは、ダート走行に対応してハイアップタイプとしている。

ADV150のエンジンは、吸排気系の改良で低中回転域の出力を強化。荒れた路面での扱いやすさが向上している。

サスペンションもダート走行に対応してストローク量をアップ

ADV150はその本格的なアドベンチャースタイルの外観に対して、エンジンはダート走行にも適した仕様になっている。同じように、足回りも抜かりなく専用サスペンションが与えられているのだ。リアはリザーバータンク付きの2本サスとし、ストロークも35mm延長している。

フロントのサスストロークは130mm、リアのアクスルストロークは120mmを確保し、これは一般のオンロードモデル並みの数値。これもダート走行での走破性を高めることが狙いだが、舗装路では前後にピッチングさせるスポーティな走りに結びついているのだ。

高剛性のダブルクレードルフレームを採用した2018年型PCX150がベースなだけに、ADV150はハイグレードサスペンションが装備されたことで、走りがよりレベルアップ。もはやスクーターではなく、モーターサイクルと言いたくなるようなフィーリングがADV150の真骨頂と言えるだろう。

明確なキャラクターを持つアドベンチャースタイルだけでなく、エンジン、シャーシともにしっかり作り込まれた本格派のADV150。遊び心溢れる新ジャンルは、こだわり派のベテランも納得する出来栄え。もちろん見た目だけで指名買いしても後悔することはないはずだ。

リアのサスストロークは120mmが確保されていてPCX150よりも35mmも延長。一方、ホイールは14→13インチと小径化して足着き性の悪化を抑えている。

フロントホイールはPCX150と同じ14インチで安定性を確保し、タイヤは10mmワイドにして迫力を出している。サスストロークは130mmを確保して荒れた路面に対応した。

オフロードモデルでも採用されるテーパー形状のパイプハンドルを採用。アップ気味の設定でスタンディング姿勢もできなくはない感じだ。

スクリーンは2段階の調整式で71mmの高さ変更が可能。こちらは下げた状態の写真で、他の写真は上がった状態となる。上がった位置が標準的なスクーターの高さに感じられた。

PCX150とは全く異なるメーターはフル液晶タイプで、腕時計のGショックのような無骨なデザインが格好いい。ユニークなのが右下のバーグラフで、燃費がリアルタイムで表示される。

スマートキーやアイドリングストップ機構などの便利な装備はPCX150と同様。

シート下のスペースは、PCX150の28Lに対して27Lと1L減にとどめている。製品にもよるがフルフェイスヘルメット1個+レインウェアが収納できる。

フロント左側には小物入れが用意されていて12V電源も内蔵している。変換アダプターが必要となるがスマホの充電も可能。

フルLEDのヘッドライトはPCXシリーズと同じつり目タイプだが、全く新しいデザインとなっている。

テールランプもLEDで、PCXと同様に「X」字をモチーフにデザインされている。

2020年型ADV150主要諸元

・全長×全幅×全高:1960×760×1150mm
・ホイールベース:1325mm
・シート高:795mm
・車重:134kg
・エジンン:水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 149cc
・最高出力:15PS/8500rpm
・最大トルク:1.4kg-m/6500rpm
・燃料タンク容量:8L
・変速機:Vマチック無段変速式
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/80-14、R=130/70-13
・価格:45万1000円

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