イタリア・ミラノで開催されているEICMAで、ヤマハは『Ténéré 700 Raid Prototype(テネレ700 レイド プロトタイプ)』を発表した。ヤマハが開発したスペシャルパーツが多く組み込まれており、ラリーレイド参戦を前提としたカスタマイズが施されたマシンだ。

●文: ヤングマシン編集部(山下剛)

テネレシリーズの伝説を受け継ぐヤマハのワークスラリーマシンか!?

テネレ700は、MT-07に搭載される688cc水冷並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーバイクだ。同カテゴリーの中では優れたスポーツ性能を持つ特性を持っており、市販車としてのツーリング性能を確保しつつも、ラリーレイドに参戦できるポテンシャルを秘めたマシンでもある。

このたび発表されたテネレ700レイドプロトタイプは、そのための本格的な第一歩といえるコンセプトを持っている。ヤマハは「次の地平線を目指す」として、コンパクトで十分なトルクを発生するCP2エンジンとシャシーを備えるテネレ700が、ヨーロッパのオフロードライダーの中で支持を広げていることを明らかにしたうえで、「1980年代に冒険を現実のものとしたマシンの新章をスタートさせる」としている。

ヤマハによれば、ヨーロッパではテネレ700を長距離ツーリングやオフロード走行のために改造するライダーが増えており、そのストーリーが多くの人々にシェアされ、次世代の冒険者たちを生み出しているとのこと。ヤマハは、そんな人たちに向けて、テネレ700のポテンシャルを最大限に引き出すためのカスタムパーツ『GYTR(Genuine Yamaha Technology Racing)』を開発した。GYTRにはエンジン出力を高めるであろうECUやマフラー、エアクリーナーボックス、前後サスペンション、高性能ブレーキパーツなども含まれている。ドレスアップのためのカスタムではなく、さながらワークスのラリーマシンのような内容となっている。

これらの装着による性能アップの内容は明らかにされていないが、発表されたGYTRの内容を見ればその限界点の高さを想像できるだろう。なお、GYTRの開発にあたっては、ダカールラリー参戦など経験豊富な二人のライダー、アレッサンドロ・ボトゥリ選手とポル・タレス選手が参加し、モロッコの砂漠でその性能を実証しているという。

●エンジン系
アクラポヴィッチ製フルチタンレースエキゾースト
GYTR ECU
高性能エアクリーナーボックス&フィルター
48Tファイナルドライブスプロケット
大型ラジエター
デュアルクーリングファン
新型ウォーターポンプカバー
新型オイルクーラー
リクルス製ヘビーデューティクラッチ
2ピースクラッチカバー
新型クラッチレバー
▲アクラポヴィッチ製マフラーはアップタイプに。

●サスペンション系
48mm径ロングストロークフロントフォーク(270mm)
CNC切削トリプルクランプ
新型ロングストロークリアショック(260mm)
新型リヤサスペンションリンケージ
▲フロントフォークはストローク60mmアップの270mmに。リヤもホイールトラベルを60mm伸ばしている。

●ブレーキ系
高性能シングルフロントブレーキディスク(φ300mm)
レーシングブレーキパッド
高性能ブレーキマスターシリンダー
新型ブレーキレバー
大径リヤブレーキディスク(φ267mm)
新型ブレーキキャリパーマウントブラケット
スチールメッシュの前後ブレーキホース
▲フロントブレーキディスクはφ282mm→φ300mmに、そしてリヤはφ245mm→φ267mmへと大径化。

現時点ではどのようなレースに参戦するのかといった具体的な情報はないが、かつてパリ=ダカールラリーをはじめとするアフリカのラリーレイドで活躍したテネレシリーズの伝説を継ぐマシンとしていることから、否が応でも期待は膨らむ。GYTRの内容もさることながら、ヤマハとラリーレイドの今後の動きからも目を離せない。

YAMAHA Ténéré 700 Raid Prototype

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