R1200GS第一世代は大ベストセラーとなり、BMWのトップブランドに急伸

GSと言えばアドベンチャーツーリングモデルのトップブランドというイメージが定着している。これは、2004年にR1200GSがデビューしたことで不動のものになった。1200以前のGSは、コアなファンに愛好されていたブランドだったが、1200以降はボクサーツインエンジンを搭載するRシリーズにおいてもフラッグシップになったのだ。

その理由は、現行モデルに通じるスタイリングを獲得したことが大きい。無骨なタフギア感とベンツのGシリーズに通じるプレミアム性を両立したデザインとなり、それまでオンロードのRSやRTシリーズが牽引していたツーリングモデルとしての支持もGSが集めることになった。

R1200GSは、デビューした2004年から2007年7月までの4年弱の期間で生産台数が10万台を達成。従来のR1150GS/アドベンチャーが5年以上かかった7万5851台という生産台数を突破、さらに期間も短縮した。欧州全体でもトップセールスを誇り、GSの名を欧州から日本にも響かせたモデルとなる。

1980年に誕生したR80G/Sから5世代目にあたるR1200GSは、2004年型を起点に電子制御サスを採用した2008年型、DOHCヘッドの2010年型、水冷エンジンの2014年型へと進化を遂げている。ここでは、その原点であるR1200GS初代モデルを紹介したい。

2004年型R1200GS。R1100GS、R1150GSからエンジンを大幅に刷新して排気量を1169ccに拡大。最高出力はボクサーツイン初の100PSを達成した。このモデルからRシリーズは、GSを先陣にして新エンジンが展開されるようになった。

1994年型R1100GS。R259と呼ばれるFI第一世代のエンジンを獲得して生まれ変わったGS第三世代。GSがクチバシスタイルを採用したのはこのモデルからで、クチバシ=アドベンチャーのイメージを定着させた。ちなみにクチバシの元祖はスズキのDR750S(1988年)。

1999年型R1150GS。エンジンを2mmボアアップし、排気量を1085→1129ccに拡大。さらに変速機は従来の5速→6速にしてツーリング性能も強化している。スタイル面では初めて異形ヘッドライトを採用し、現行モデルに通じる顔つきになった。

ボクサー、テレレバー、パラレバーの基本装備はR1200GSも踏襲

水平対向2気筒のボクサーツインエンジンを搭載したRシリーズは、1993年に新パッケージへと刷新している。ひとつは先述のFIを採用したエンジンで、もうひとつは新しい車体パッケージにある。フロントにテレレバー、リアにパラレバーというサスペンション方式を採用したのだ。

テレレバーはフロント側にもスイングアーム(Aアーム)を装備して、これが減速Gを受け止める構造。減速中も路面の凸凹はサスペンションが吸収するようにしており、従来のテレスコピックサスが担っていた2つの役割を分離したメカニズムとなる。リアのパラレバーはトルクリアクションが発生するシャフトドライブの弱点を解消した機構だ。

これらは1994年のR1100GSにも導入され、2004年のR1200GSは同じパッケージを正常進化させたものとなる。テレレバーはアウターチューブとAアームを軽量化。パラレバーはファイナルギアケースも作りかえてギア比を変更するとともに軽量化し、さらに剛性を高めている。

エンジンから前後に独立しているフレームも改良しており、フロント側のアルミ鋳造フレームはパイプフレームに変更。リアフレームは、それまでエンジンと一体ユニットだったスイングアームやステップをマウントできるようにし、エンジン重量を抑える設計としている。

ボクサーツインエンジン、テレレバー、パラレバーという独自のパッケージを受け継ぎながら、軽量化とともにパワーアップを果たしたR1200GS。2005年には、タンク容量を20→33Lに増量したアドベンチャーもラインナップに追加した。

撮影車はR1200GSアドベンチャーの2007年型。ぱっと見では最新型GSにも見えるがすでに15年前のモデル。現行GSに通じるスタイルは、初代R1200GSから継承されているのが分かる。

2013年の水冷エンジン以前のGSシリーズはマフラーが左側に装着されている。前後ホイールはクロススポークのチューブレスタイヤ仕様。STDはキャストホイールも選択可能だった。

OHC4バルブの第二世代エンジンはR1150GSのストロークを2.5mmアップして1169ccの排気量を獲得。燃料供給は変わらずFIを採用し、ユーロ3の排出ガス規制をクリアしている。

2004年型以降のRシリーズで大きく進化したのは実はフレーム設計で、スイングアームがエンジンマウントされている。これにより、エンジン側が受け取る応力を大幅に減少させることができた。

フロントホイールは19インチ。大径の21インチを採用せずオンロードとのバランスを取っているのが分かる。GSがオンロードも含めてナンバー1のツアラーとして支持されるのはこのバランスの良さにある。

テレレバーのフロントサスペンションは、奥にあるショックユニットが衝撃吸収を担っている。フロントフォークはホイールを保持し伸び縮みするのが役割。ノーズダイブしにくい機構で減速中も路面の衝撃を吸収するので安定性に優れている。

シートは前後セパレートで、前側は20mmの高さ調整が可能。それでもR1200GSアドベンチャーは890/910mmなので足着き性はかなり厳しい。STDは、840/860mmとなる。

R1200GSアドベンチャーの燃料タンクは33Lという大容量。幅もかなり広いので見た目にも迫力がある。シュラウド部分はヒザ周りをすっぽり包むので、防風防寒に優れている。

左右異形のヘッドライトはR1150GSから踏襲。ライト下にはオイルクーラーをセットしており、エンジンは空油令方式となる。アドベンチャーの大型スクリーンは伏せなくてもほぼ完璧に風圧を防いでくれる。

ハンドルは押さえ込みが効くように幅が広くハンドルブレースやハンドガードを装備。ウインカースイッチはこの時代のBMWならではの装備で左右それぞれ独立したものだ。

メーターはアナログのスピードと回転計を上下にマウント。液晶表示は最低限で、電脳化される以前のモデルの標準的なもの。シンプルで好感が持てる。

1日1000kmだって走り続けられそうなパッケージとはこのこと

私はBMWバイクのオーナーで、ボクサーツインエンジンのモデルを乗り継いできている。そのきっかけとなったのが初代R1100GSの試乗体験で、他に乗ったネイキッドのR1100RやフルカバードのR1100RTよりも気に入ったのは、楽しくて快適なことにある。言ってみればRとRTのいいとこ取りのモデルだと直感したのだ。

さらに、GSの良さはフラットダートにも対応するので、「どこにでも行ける(行けそう)」、「快適」、「楽しい」というバイクの楽しさを一台で凝縮したパッケージとなっている。さらにGSのブランド力も加えると他の追随を許さない。

R1200GSに乗った感想は、古くから変わらぬボクサーツインの特性が感じられたこと。ブロロロ~という乾いた排気音や、縦置きクランクシャフトの直進安定性はBMWのスローガン「駆けぬける喜び」を体現したもの。実用的に速いだけでなく、気持ち良さがあるのがミソである。

加えて、テレレバーとパラレバーの車体パッケージが疲れを軽減してくれるのもこれまでの経験から感じられる。ただし、テレレバーは慣れるまではブレーキングでフロントが沈み込まないことに違和感を覚えるだろう。ずっと慣れないという人もいると思うので、試乗をおすすめしたい。

ウインドプロテクションの良さも想定通り。体に負担のかからない直立姿勢の状態でも風圧を防いでくれるので、航続距離は格段に増えるはずだ。乗ってみると欧州では1日1000km走るというのが実感としてイメージできるだろう。

試乗したアドベンチャーは33Lタンクなので、東京から京都くらいなら無給油で行けそう。そして、休憩なしでも走り切れてしまいそうな快適さがある。

2007年型R1200GSアドベンチャー主要諸元

・全長×全幅×全高:2250×950×1470mm
・ホイールベース:1510mm
・シート高:890/910mm
・車重:258kg
・エンジン:空油冷4ストローク水平対向2気筒SOHC4バルブ 1169cc
・最高出力:100PS/7000rpm
・最大トルク:11.7kgf-m/5500rpm
・燃料タンク容量:33L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/80R19、R=150/70R17

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