ミッションの4→5速化だけが注目されがちなモンキー125のモデルチェンジ。その真意を確かめるべく、旧型の4速モデルを用意して比較試乗を決行した。諸元上の最高出力は同じなので、乗っての印象も大きく違わないはず…。そんな予想は見事に覆されたのだ。

●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ

力強さでは旧型だが、新型の上質さも良し

比較のために用意したのは’18年モデルの初期型で、走行距離は1万2000kmを超えている個体だ。ショップのレンタル車なのでその都度メンテナンスされていると思うが、これは旧型にとって分が悪いかもしれない…。

などという心配は、新型から乗り換えた途端に霧散した。発進でクラッチをつないだ瞬間の、1発ごとの蹴り出し感が旧型の方が力強い。新型は1速がショートなので出だしこそ先行するものの、2速/3速とシフトアップするうちに2速で伸びてきた旧型に接近され、そして追い抜かれてしまう。また、2速や3速を使うような急な上り坂では差が顕著で、スロットルを開けたまま中高回転域にかけてグングン上る旧型に対し、新型はギア選択をミスると途端に離されるのだ。

最高出力は新旧とも同じ9.4psなのになぜ? パワーグラフはあくまでもスロットル全開での測定結果であり、実際の走行シーンで多用する微開~中開度の特性は表れない。その表れない部分、つまり実用域での差が意外にも新旧で大きかったと言えよう。

ミッションが4速の旧型は、各ギアでの守備範囲を確保するためにトルクバンドが広く、シフトをサボっても走れる懐の深さがあった。これに対して新型は、排ガス規制対応でトルクバンドが狭くなり、それを補うために5速化されたと言えるだろう。モンキーならではのトコトコとした牧歌的な走りは新型も健在だが、中高回転域にかけての力強さは旧型に軍配が上がる。

一方、新型の長所はスムーズなエンジンフィールだ。アイドリング時から振動の少なさは顕著で、同時に試乗したC125ほどではないにせよ、上質になったとすら感じる。加えてスロットルレスポンスは優しく、シフトタッチも滑らかだ。旧型のシングルらしい明瞭な蹴り出し感や元気のいいレスポンスの方を好む人も多いだろうが、さまざまな技量のライダーが乗るレジャーバイクというコンセプト、そしてこの愛らしいフォルムとのマッチングを考慮すると、新型の進化の方向性は時代にマッチしているのかもしれない。

化石燃料を使った内燃機関の存続が危ぶまれている昨今。新型エンジンを作ってまで真のエントリーモデルを残してくれたことは実にありがたい。しかもモンキー125については価格据え置きだ。原材料や海運などが高騰している現状を考えると、実質的には値下げといっても過言ではないだろう。
▲左が新型、右が旧型
【新旧で最高出力の増減なし】
新型モンキーは旧型と比べて最高出力が増えていない。1速の総減速比は17%ショートに、トップ5速は旧型の同4速よりも3.4%ロングなので、1段増やしてクロスレシオ化したと言える。

新旧エンジン、細部はどう違う!?

写真上が新型(青)、下が旧型(赤)。φ52.4×57.9mm(124cc)からφ50.0×63.1mm(123cc)へと、よりロングストローク化された空冷SOHC2バルブ単気筒。圧縮比は9.3→10.0:1へとアップしている。オフセットシリンダーやローラーロッカーアームなどは引き続き採用。最高出力は、同じ変更を受けたグロムが9.8psから10psへ微増したのに対し、モンキーは9.4psのままで、その発生回転数は7000→6750rpmへとわずかに下がっている。5速化されたミッションの変速比はグロムと共通だ。

【カムチェーンガイドの追加で信頼性アップ】写真上が新型(青)、下が旧型(赤)。5.2mm(57.9→63.1mm)のロングストローク化の影響を受けてか、シリンダー側面のフィンが6枚から7枚へと増えている。またパーツリストを細かくチェックするとカムチェーンガイドが追加されており、横型エンジンとしての信頼性がさらに向上したと言えるだろう。なお、右側ほどではないが左側もカバー類のデザインが変更された。【右側ケースカバーのデザインを一新】写真上が新型、下が旧型。クランクシャフト上にあったクラッチ機構をメインシャフト上に移動し、合わせてオイルフィルターを新設。これにより右クランクケースカバーのデザインが一新され、オイルフィラーキャップの位置は後方から前へと移動した。なお、オイル点検窓は引き続き採用。 【純正パーツ流用による旧型の5速化は無理!?】写真上が新型、下が旧型。グロムと同様にミッションを5速化。ホンダの横型エンジンとしてはベンリィSS50以来となる。新型はクラッチ機構をクランク軸からメイン軸に変更しているので、純正パーツの流用による旧型モンキー125の4→5速化はほぼ不可能と言えるだろう。
【触媒がやや細身となり最低地上高15mmアップ】写真上が新型、下が旧型。同系のエンジンを搭載するグロムとは対照的に、クランクケースの真下でエキゾーストパイプの管長を稼いでいるモンキー。新型は中間にある触媒の膨らみが細くなっている点に注目。この影響を受けてか、最低地上高は160mmから175mmへと15mm増えている。

【エンドがよりメカニカルに】写真上が新型、下が旧型。サイレンサーは基本的な形状こそ変わらないが、エンドパーツに長円の穴が6つ追加されており、よりメカニカルな印象を強めている。排気音については、新旧でほとんど変わらない。

【5速化によりスプロケットも変更】写真上が新型、下が旧型。2次減速比は15×34Tから14×37Tへ。この影響を受けてか軸距は1155mmから1145mmと10mm短縮されている。なお、1次減速比は3.350→3.040に変更された。

【リアショックがシングル→ダブルレートに】写真上が新型(青)、下が旧型(赤)。車体に関して外観で判断できる新旧の違いはこのリアショック程度だ。旧型はスプリングの巻き方が等間隔のシングルレートで、新型は上側が密なダブルレートになっている。これによる影響なのか、シート高は1mmアップしている。

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