Z900RSの上級バージョンにして、カワサキのヘリテイジカテゴリー「Z-RS」シリーズの頂点モデルでもある「Z900RS SE」がついに発売。予約殺到で入手困難とされるこのSEに試乗した。本記事では、まずSEに奢られた専用仕様についてSTDと比較解説する。

●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキ

【テスター:丸山浩】『ヤングマシン』誌メインテスターを務める、ウィズミープロフェッショナルレーシング会長。Youtubeチャンネルの取材と合わせて、’22年も年明けから全開‼ 様々なバイクで駆け抜けまわっている。

Z900RS SE:伝説カラーをまとうZ-RSシリーズの最上級モデル

伝説のイエローボールをまとい、オーリンズ製リアショックとブレンボ製ブレーキシステムを足まわりに採用して、より上質なライディングフィールとコントロール性を目指した上級バージョンがSE。フロントサスもSTDと同じKYB製ユニットながらリアショックに合わせた専用セッティングとし、アウターチューブも統一感のあるゴールドで仕上げている。台数限定ではなく通常ラインナップだが、生産数が需要に追い付かない状態だ。
【’22 KAWASAKI Z900RS SE】1月21日にようやく発売を迎えたZ900RSの上級バージョン
■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 948cc 111PS/8500rpm 10.0kgf
-m/6500rpm ■車重215kg シート高810mm 17L ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:メタリックディアブロブラック ●価格:160万6000円 ●発売日:’22年1月21日
【硬派な存在感はまさにRSの頂点】金色の足まわりとイエローボールが映える漆黒のボディは、カバー類など細部もブラックアウト。硬派なスポーツ感と高級感を両立し、独特の存在感を放つ。
【SEの戦闘力に合わせたイエローボール”改”】元祖イエローボールは黄×緑メタリックのツートーンだったが、SEでは全体に合わせて緑メタリック部分をブラックに置き換え、スポーティでより引き締まった印象としている。

【’73 KAWASAKI 900SUPER4 Z1|EU MODEL:イエローボールはZ1欧州仕様が元ネタだ】SEに採用される車体色は、初代Z1の中でも主流を占めるオレンジ色の北米向けファイヤーボールに対し、欧州向けに作られたイエローボールが元ネタ。違いのある上級版にふさわしいレアカラーだ。

【足まわり強化も車重は変わらず】SEはシート高が10mmプラスで最低地上高もSTDの130mmから140mmとなっているが、車重としてはSTDと同じ215kgで重量増を回避。他の諸元もエンジン含めてSTDと同じだ。

【’22 KAWASAKI Z900RS】STDの’22年モデルは’21年9月発売。’75年式Z1を彷彿とさせる青玉虫のブルーのほか、同系グラフィックで今回試乗したブラックがある。●価格:138万6000円 

ライディングポジション:シート高は違うが、沈み込みで実際は同じだ

カタログ上のシート高は10mm高くなるが、ライダーが跨ってサスペンションが沈み込むとほぼ同じ高さとなり、足着きはどちらも両足指の腹までとほぼ同じ。ハンドルバーやシート本体はSTDと同じため、結果的にライディングポジション全体もSTDから変わらぬアップライトなもので、差は感じられない。[身長168cm/体重61kg]
▲ SE シート高: 810mm▲ STD シート高: 800mm

[SEの特別装備1]オーリンズ(ÖHLINS):耐久性/信頼性も考慮したSE専用設計品を装着

KYB製となるSTDに対し、SEに採用されるオーリンズのS46リアショックは、一般市販品とは異なり、オーリンズとカワサキが共同開発した専用品。バネレートはほぼ同じ(STD99N/mm/SE100N/mm)ながら伸び側減衰力をやや弱めたセッティングとしたほか、密封性を高めるためのダブルリップ式ダストシール採用や、工具いらずのリモート式プリロードアジャスターもホースの取り回しを変更するなど、メーカー完成車としての耐久性/信頼性も考慮した設計となっている。
▲ SE:工具不要! 手で調整OK 


▲STD:サス調整は要工具
【両車の標準サス設定】SEとSTDは前後ともショック内部の設定がそもそも異なるが、調整機構の標準位置は上のとおり。なお一般市販オーリンズが持つ車高調整機能はSEでは省略される。

[SEの特別装備2]ブレンボ(BREMBO):極上ブレーキのためにシステム一式を交換

SEのブレンボ製M4.32キャリパーは、STDの異径4ポッド→同径4ポッドに変更。パッドやディスクもブレンボ製で統一し、ディスクハウジング材質の鉄→アルミへの変更に対応し、フローティングピン本数を5→10本へ増やして強度を確保。倒立フォークのエンドピースもSE専用だ(なのでSTDにSEブレンボは装着不可)。ステンメッシュホース化やマスターシリンダーピストン径の最適化(STD:19.1mm→SE:17.5mm)も行われ、性能を徹底追求した。
【ディスクは実質的に大径化】ディスク径はSTDと同じ300mmながら、パッドがディスクに当たる有効径を4mmアップしているのもポイント。徹底したブレーキチューニングにより絶対制動力や高いコントロール性を実現した。ABS設定もSE用に見直され、より細かな制御を実現している。

その他のSE専用装備:さらなる上質感を追及する専用パーツ群

ブレンボやオーリンズ、それにリアサスペンションに合わせてバネレートを高め、伸び減衰を弱めたフロントフォークはもちろん、他にも専用装備が細部に散りばめられているSE。ここではその残る部分もまとめて紹介しよう。

プレートはSTDにない追加装備

[写真上SE/下STD]飛び石や泥の付着からオーリンズサスペンションを保護し、傷付きやオイル漏れを防止するロゴ入りのガードプレートをSE専用として追加装備。ダブルリップ式ダストシールと併せて耐久性向上も狙った設計が良心的だ。

ホイールカラー:ゴールドホイールが輝く

[写真上SE/下STD]側面を切削加工したブラックホイールのSTDに対し、SEではゴールド仕上げのホイールを採用。足まわりのプレミアム感を引き立たせている。

エンブレム:”RS”の文字が専用色

[写真上SE/下STD]SEではサイドカバーのエンブレムも専用品。デザインはSTDと共通だが、”RS”の文字がレッドとなっている。細かい部分だが意外と目立つ。

ブラックパーツ:細部も黒に染めて戦闘力の高さを強調

SEでは戦闘力の高さを表現するため、STDではシルバーとしてヘリテイジ感演出に一役買っていたフロントフェンダーステー/ラジエターサイドカバー/FIカバーを、ゴールドやイエローの足まわりと対照的なブラックで統一した。

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