2021年12月に新車でスーパーカブ110を購入した筆者。3ヶ月後の大阪モーターサイクルショーで「新型」が発表されたのは皆さんもご存じのとおり。そして4月14日、ついに発売開始された。さっそく自分の旧型(JA44)と新型(JA59)を比較試乗! さてどうなる!?
取材協力:ヤングマシン

新型は自分の想定より大幅に進化していた!?

スーパーカブ110を買って、わずか四ヶ月後に新型が発売……。実はショックでもなんでもない。2021年10月にABSが義務化(125cc以下は前後連動ブレーキでも可)され、2022年10月には新排ガス規制も迫っており、近々モデルチェンジされることを想定して購入したからだ。

とはいえ、新型の変更点にはいくつか予想外の部分があったのも事実(笑)。まずモデルチェンジの内容を整理しよう。

クラッチ操作不要の自動遠心4速ミッションは継続しつつ、新型はロングストロークの新設計エンジンを搭載。ギア比と1次&2次減速比も変更された。ホイールはワイヤースポーク→キャストとし、前後ドラムブレーキはフロントのみディスク化。ABSも新採用した。

さらにメーターも新作に。タイ仕様のスーパーカブ110と同様、液晶パネルを備え、待望のギアポジションが表示されるようになった。

予想外だったのはホイールだ。スーパーカブC125がキャストホイールなので、原付2種クラスで最もスタンダードかつレトロな香りを残す110はスポークホイールを継続採用すると思っていたのだ。
そしてメーター。噂にはなっていたものの、ギアポジは羨ましい。停止時にリターン式になるミッションは何速なのかわからなくなりがちだからだ。

↑2022年4月に発売された新型スーパーカブ110(JA59)。カブらしいフォルムを踏襲しながら、キャストホイールを採用したことで上級モデルのスーパーカブC125にやや印象が近づいた。また、キャリアの色が黒になり、ディスク化+ABSの採用でフロントブレーキ周辺の造形など細部を変更。車重は2kg増の101kgになった。30万2500円。

 

↑2021年型は当サイトにもたびたび登場している筆者の愛車。50cc版と並び、ドラムブレーキ+スポークホイールなど昔ながらの装備を継承する。フルチェンジを受けて2018年型で登場し、2020年にテールランプを変更した。28万500円。

ワイルドな旧型に対し、新型は上質で扱いやすい

ともかく乗ってみた。シート高が3mm高くなったものの、ライポジの印象は全く変わらず。しかし走り始めてみると、かなり印象が違う。新型はエンジンがとても上質なのだ。

旧型はゼロ発進からほどほどに加速し、2速に上げていくと右手の動きに応じてダイレクトに加速していく。単体で乗れば気にならないが、新型と乗り比べると中速域がパワフルで、サウンドや振動も荒々しい。

対する新型は、停止状態から1速での発進が力強いものの、2速、3速とギアを上げていくと加速感がマイルドに。新旧で並走して何度も試したが、スタートでは新型が先行するも、やがて旧型に抜かれてしまう。
その一方で、新型はスーッと滑らかに回転が上昇し、音と振動も控えめ。ロングストロークのエンジン特性か、1速以外がハイギアードなおかげなのか、とても乗りやすい。
また、旧型は吹け上がりが早く、飛ばす際はポンポンとシフトアップしていく必要があるため、わりと忙しく、慣れないとギクシャクする場面も。対して新型は2速以降の守備範囲が広く、高回転まで引っ張って加速できるのでズボラな走りもOKだ。

↑新型は扱いやすく、洗練されたエンジンフィーリングで"大人の乗り物”の印象。単体だとさほど目立たないが、旧型は中間加速がパワフルながら音や振動が荒々しい。

 

新型の真骨頂は60km/h巡航、余裕タップリで疲れにくい

新型で特筆すべきは高速域だ。4速60km/hで旧型はエンジンが少し頑張り始め、微振動が伝わってくる。一方の新型はほぼ振動がなく静か。3速で走れてしまうほど余裕があり、まだまだ伸びていきそうだ。流れの速い郊外の国道を淡々と走るようなツーリングでは確実に新型の方が疲れにくいだろう。

さらに、ギア操作時の節度感や滑らかさも新型が上。走行距離が300km程度だったせいか、私の旧型はミッションの入りが甘い場面がチラホラあったが、新型は気持ちいいほどカチッと変速できる。
また、ギアを3→2速、2→1速に落とした際に旧型はかなりエンジンブレーキが激しいが、新型は比較的穏やかだった。
これらを総じて、新型のエンジンは上質と評価できる。

↑新型のエンジンは新設計。エキパイにある触媒の大型化などで令和2年排ガス規制をクリアしつつ、最高出力は8ps/7500rpmから変わらず。最大トルクは0.90kg-m/5500rpmで、発生回転数は変わらずに0.3kg-mアップした。

 

↑旧型はヘッドカバーにHONDAの刻印があるのが特徴。旧型のボア50×ストローク55.6mmに対し、新型はボア47×63.1mmと大幅にロングストローク化され、同時に1速以外若干ハイギアード化されている。また新型は燃料蒸発ガスの回収機能を追加したため、燃料タンク容量が4.3→4.1Lに減少した。

カッチリしたハンドリングがスポーティで現代的

ハンドリングもかなり印象が違う。
衝撃を吸収しやすく、しなやかな旧型のワイヤースポークホイールに対し、新型のキャストホイールからは高い剛性感が伝わってくる。直線ではそれほどでもないものの、コーナリングでの違いは明白。旧型は体重移動などのアクションに対する反応がマイルドで、大らかな昔のバイクらしい感触だ。

一方、新型はライダーの意志に忠実にカッチリ感を伴って曲がり、バンク中も安定感が高い。これはホイールに加え、サス設定の違いも大きいようだ。ホンダに質問したところ、キャストホイール化によりバネ下重量が変化したため、前後のピッチングを抑えるサスセッティングに変更したという。車体挙動が抑えられ、よりダイレクトな乗り味になったのだろう。
60km/hで巡航する場面でもしっかりした足回りで安定感が高いのもいい。

ブレーキも同様に新型はカッチリしている。
今となっては珍しい旧型の前後ドラムブレーキは、初期制動がさほど効かず、後から二次曲線的に効いてくる。自転車感覚と言うか、昔ながらの「カックン」としたフィーリングだ。

対照的に新型のフロントディスクブレーキは初期からライダーの意志に忠実な制動力を発揮し、効力の変化も少ない。加えて、ABSが装着されている心理的な安心感もある。なおリアはドラムを踏襲するが、この組み合わせも自然だ。
よく効くブレーキとキャストホイールが相まって、新型のハンドリングは現代的でスポーティ。コーナーの立ち上がりなどでエンジンの加速は旧型より大人しいものの、コーナリングがとても楽しい。

 

↑新型はY字スポークのキャストホイールを履く。C125のホイールと似ているが別物で、切削加工のC125に対し、塗装仕上げとなる。ブレーキはフロントのみディスクとABSを獲得。タイヤはチューブレスのIRC製NF63B/YとNR94Lを採用する。

 

↑旧型はワイヤースポークホイールにチューブタイヤ、前後ドラムブレーキの組み合わせ。タイヤはチェンシン製C6016だ。新型ではキャスト化によるバネ下重量の変化に伴い、前後サスともスプリングレートと減衰力設定を最適化している。

ギアポジ付きメーターはマジでウラヤマシイ!

そして新型で最大のポイント(?)がメーターだ。
旧型のメーターは超シンプルで、アナログの速度計、燃料計、積算計のみ。
一方、新型は液晶パネルにバー式の燃料計とギアポジションを常時表示する。
特にギアポジ表示は欲しかった機能だ。ロータリー式のスーパーカブ110は停止中だけ4速からニュートラルに入る上に、筆者の車両はミッションの入りが甘いせいか、何速なのかわからなくなって信号待ちで混乱する場面も。直接乗り比べると、その便利さが身に染みた(笑)。

さらに左上のボタンを押すごとに、オド→トリップ→時計→平均燃費と表示を切り替え可能。ツーリングがはかどること必至だ。

個人的に時計はなくてもいいのではとも思う。時間を忘れるためにバイクに乗っている、と言えばカッコいいが、通勤ではやっぱりあった方が便利なのは間違いない(取材にバイクで行く時も!)。いずれにせよ、このメーターに交換したいほど筆者としてはウラヤマシイ。

 

↑新型のメーター。メインスイッチをONにすると針が振り切れる演出も追加され、カッコイイ。指針は透過式となり、最高速は120→140km/h表記となった。

 

↑実に潔い旧型。新型メーターを装着したいところだが・・・・・・。

"カブみ”は薄らいだけど、万人向けに進化したのは確か

新型で少し気になったのは、昔ながらのカブらしさが薄らいだことだ。ドゥルルーンという独特なサウンドをはじめ、どこか丸みのある大らかな乗り味。そんなカブならではのテイストを筆者は勝手に「カブみ」と呼んでいる。よく聞けば、あのサウンドは残っているものの、全体的にカブみは旧型より薄味になっていると感じる。

とはいえ、ビギナーからベテランまで乗りやすいのは明らかに新型だろう。法規制に対応しつつ、より万人向けの進化を果たしたのだ。しかもこれだけ装備が豪華になったのに、価格はたったの2万2000円アップに過ぎない。ホンダさん凄ぇ! と素直に拍手を贈りたい。

結論。味わいの旧型、現代的で扱いやすい新型、どちらを求めるかは好みだろう。え、自分はどっちを選ぶかって? ロングツーリング向けに正直、新型はいいなと思っている(笑)。前述したエンジン特性に加え、チューブレスタイヤ採用でパンク修理が簡単になったのは大きいからだ。とはいえ、カブの味わいが濃く、もう新車では入手できない旧型を今後もじっくりゆっくり味わっていきたいと考えている。

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