三代目クロスカブは中身だけを大幅モデルチェンジ

半年ほど前に、発売から3年が経過したクロスカブ110を時期外れで試乗したのはこの時のため。カブ110シリーズがディスクブレーキになるという情報を得ていたので、その前に乗っておきたかったのだ。ちなみに、新型スーパーカブ110はすでに試乗済みで、一言で表すと新しいエンジンが印象的だった。

今回は、新型スーパーカブ110に続いて新型クロスカブ110の試乗が実現した訳だが、新作エンジンにフロントディスクブレーキや前後キャストホイールの採用は同じ。ただし、新型クロスカブ110のブレーキは新型スーパーカブ110の1ポットキャリパーに対して2ポットを導入しており、より制動力を高めているのが特徴だ。

他にもクロスカブ110は従来型と同様、独自のロングストロークサスペンションやフレームマウントのヘッドライト、パイプハンドル、可倒式ステップに、レッグシールドを廃したボディなどでスーパーカブ110と差別化を図っており、モデルチェンジしてもアウトドアユースを想定したコンセプトは不変である。

エンジンや足まわりが完全新作となったのに対して、外観は全く変化させずクロスカブ110のスタイルを守っていることに好感が持てる。2020年にCT125ハンターカブが発売されても全く人気が衰えることがないクロスカブ110のブランドは受け継がれ、性能面が強化されることでより盤石な地位を築くだろう。

2022年4月14日に発売された新型クロスカブ110。写真は新色のパールディープマッドグレー。他にもマットアーマードグリーンメタリックの新色も用意された。価格は従来から2万2000円アップの36万3000円になった。

身長170cmのライディングポジション。スーパーカブ110よりハンドル位置が高めなので、リラックスできる印象だ。

体重65kgの足着き性はかかとがわずかに浮く。シート高は784mmで新旧変わらず、足着き性も新旧で変わりない。

上質なエンジンフィーリングでクロスカブがレベルアップ

新型クロスカブ110は、オールニューのエンジンを採用している。109ccの排気量を変えずに従来よりもストロークを伸ばしているのが特徴で、これにより圧縮比が1割向上。排ガス規制に対応しつつトルクアップを果たしている。また、低フリクション技術も導入されており、WMTCモードでの燃費アップ(66.7→67km/L)も両立した。

これらの変更に加え、4段ギアの変速比も変更されているが、各ギアがカバーする速度域は従来型とほぼ同じ。空冷単気筒というエンジン型式や横型レイアウトも変わらないため、マニアでなければ新型とは気付かないはず。最高出力も8PSのままなので、ホンダの開発陣は「いかに変えずに進化させるか」を追求したと思われる。

実際に乗ってみると、その進化は数値には表れないエンジンフィーリングに表れているのが分かる。回転が滑らかである意味カブらしくない印象なのだ。また、音量も静かになった感じだ。一方、カブらしい遠心クラッチ等の独特なメカノイズは残されており、しばらく乗るとこれが体に染みついて違和感がなくなってしまった。

前回の新型スーパーカブ110でも同じようなことを書いたが、このエンジンはビジネスバイクのカブではなく、趣味バイクのクロスカブによりマッチしていると言える。ストレスが少ないのでトコトコとロングツーリングに出かけるのに向いている。ただしタンク容量が0.2L減となっているので、航続距離は従来型よりも短くなるだろう。

エンジンは、空冷OHC2バルブのままボア×ストロークを50.0mm×55.6mm→47.0mm×63.1mmにロングストローク化して圧縮比&トルクアップを果たしている。最高出力は8PS/7500rpmをキープ。

クロスカブ110のロングストロークサスペンションがディスクブレーキで活きる

従来型クロスカブ110に試乗した際の記事には、「ほぼCT125ハンターカブの資質が盛り込まれている」と書いたが、ハンターカブと差がついてしまうのはフロントのドラムブレーキだった。ドラム式は新型スーパーカブ110が採用するディスクブレーキに比べるとリニアさが足りず「ほぼ」という表現になってしまうのだ。

そして、ディスクブレーキを採用した新型クロスカブ110は、握った分だけフロントブレーキが効くので、ストロークの長いサスペンションのコントロールができるようになり、バイクとしての楽しみがしっかり得られるようになっていた。テクニックがあるライダーは走りが楽しくなり、初心者にとっては安心感が増すはずだ。

また、意外と重要なのがキャストホイール化によるチューブレスタイヤとフロントABSの採用。出先、旅先でのパンク修理の対応が格段に楽になるチューブレスタイヤと事故や転倒を未然に防ぐABSは、走りにはあまり影響しないがいざという時に役に立つ装備だ。前者の装備はCT125ハンターカブを超えており、著者としては新型クロスカブ110こそベストカブに推薦したい。

新旧ともスーパーカブ110とクロスカブ110の価格差は5万5000円。従来型ではその差が疑問だったが、上質なエンジンとディスクブレーキを備えた新型クロスカブ110はコミューターからバイクと呼べる存在へとレベルアップしており、試乗後には納得。ディスクブレーキの恩恵はクロスカブ110の方がより大きかった。

新型クロスカブ110はフロントディスクブレーキにキャストホイールを装備。ディスクの中央にABS用の回転センサーを設置、キャリパーは2ポットとなっている。

リアホイールもサイズは17インチのままキャストホイール化された。タイヤの銘柄は前後とも変わらないがチューブレス用に変更している。

クロスカブ110は座面が広く厚手のシートを採用しているのでその分シート高が高くなる。タンデムステップを装備するがリアシートは備えていない。

タンク容量は4.3➞4.1Lに200cc減少している。ABSモジュールのスペースの分、容量が減ったと思われる。

LEDヘッドライトは従来と変わらない装備。ヘッドライトガードを兼ねるフロントキャリアはボディマウントなので、ちょっとした荷物を載せてもハンドリングに影響しない。

テールランプは2020年型でリフレクターと分割されたタイプを継続採用。

クロスカブ110はカバーレスのパイプハンドルを採用。スーパーカブよりも90mm全幅が広いのでゆったりとしている分、すり抜けは不利になる。

メーターは新型に刷新され、液晶窓にはギアポジションが表示されるようになった。他にも時計やトリップ、積算計、平均燃費を切り替え表示できるので非常に便利だ。

2022年型クロスカブ110主要諸元

・全長×全幅×全高:1935×795×1110mm
・ホイールベース:1230mm
・シート高:784mm
・車重:107kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc
・最高出力:8.0PS/7500rpm
・最大トルク:0.9kgf-m/5500rpm
・燃料タンク容量:4.1L
・変速機:4段リターン(停止時はロータリー式)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=80/90-17、R=80/90-17

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