近年バイクメーカーが力を入れている「ネオクラシック」というカテゴリー。かつて人気を得たレジェンドバイクを現代の技術でリバイバルするが、はたしてそこに「旧車の味わい」はあるのか? 本記事で取り上げるのは、スズキ KATANA。異形のマシンは’22年2月のアップデートによって、電脳化を極めいっそう新しい走りを手に入れた。ネオクラシックという頸木から解き放たれるように…。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●テスター:丸山浩 ●写真:関野温 真弓悟史 ●外部リンク:スズキ
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スズキ KATANA 概要:誕生のキッカケは先代も現行も欧州の二輪ショー
カタナは’18年のドイツで開催されたインターモト(ケルンショー)で発表され、翌’19年に発売された。…が“本来の登場”は遡って’17年。この年のEICMA(ミラノショー)に合わせてイタリアのバイク雑誌「モトチクリズモ」が企画し、ボローニャのエンジンズ・エンジニアリング社が製作した『KATANA3.0』と命名されたコンセプトモデルだ。
いわゆるリバイバルではなく、現代的解釈のストリートファイター的なフォルムだが、これをスズキが新時代のカタナとする決断をしたのだ。
そんなカタナのベースとなったのは’15年から販売されるGSX‐S1000。このマシン自体がいまだ名機と呼ばれるスーパースポーツGSX‐R1000[K5型]をベースとしたエンジンを搭載している。
というワケで、いまさらだがモチーフは’81年に発売したGSX1100Sカタナ。当時のトップモデルGSX1100Eをベースに、ドイツのターゲットデザイン社が手がけた革新的なスタイルは、プロトタイプを展示した’80年のケルンショー会場のアンケートで「大好き」と「大嫌い」の真っ二つに分かれ、スズキはその反応に確信を得て市販に移した。結果、大成功したのは言うまでもない。
【SUZUKI KATANA】■全長2130 全幅820 全高1100 軸距1460 シート高825(各mm) 車重215kg(装備) ■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 150ps/11000rpm 10.7kgf・m/9250rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/50ZR17
【’81 GSX1100S KATANA:名車GSX1100S KATANAを原点とする】’80年のドイツ、ケルンショーでプロトタイプが発表され、その前衛的なスタイルは賛否両論だったが、’81年に発売されると人気沸騰!
【’82 GSX750S:誰が呼んだか耕運機…】国内モデルの750は当時の保安基準に合わせて大アップハンドルを装備。耕運機ハンドルと呼ばれ、低いセパレートハンドルに交換すると違反切符を切られ「カタナ狩り」と呼ばれた。
【’92 GSX400S KATANA/’91 GSX250SS:「小刀」「ナイフ」…小排気量モデルも】初代1100カタナ発売から10年を経て250や400が登場。両車ともエンジンは水冷だがしっかり冷却フィンを備え、再現度はかなり高い。
スズキ KATANA 試乗インプレッション:新時代のカタナだから形も走りも当然のように新しい
先に結論ありきで言ってしまうと「まったくクラシックではない」。ネオクラの特集なのにそれはナイだろう…と思われそうだが、じつにカッチリとした現代のバイクだ。攻めの走りにもしっかり応え、もちろん速い。反対に旧車にイメージするおおらかでゆったりした乗り味とは程遠く、ダラダラと走るよりは、ビシッと攻める走りを得意とする。
まずエンジンのベースはスーパーバイクで戦ってきたGSX‐R1000の4気筒。デチューンしているとはいえ150psもある。新型はクイックシフターやパワーモードもしっかり備えている。そしてフレームはさすがにGSX‐Rベースではないが、軽くシャープなスーパーバイク的ハンドリングを狙ったアルミのツインスパータイプ。だから「普段乗りできるGSX‐R」と表現するのがもっとも解りやすいかもしれない。その意味では、カテゴリー的にはネオクラシックというよりストリートファイターの方が近いだろう。
とはいえ「カタナ」という名前が付いているから、昔のGSX1100Sカタナと比べられてしまうのは当然。そして昔カタナに乗っていたり憧れていた人は「コレじゃない…」と感じる方も少なくないだろう。それはパイプのアップハンドルや短いシートなど、デザインにおいても昔のカタナと比べたら違和感を覚えるからだろう。
しかしスズキは、昔のカタナを模倣したリバイバルモデルを作ろうとしとしたわけではなく、目指したのは「新しいカタナ」だ。デザインの好き嫌いは好みがわかれるかもしれないが、個人的には特にマシンの前回りの造形は、結構好きなタイプである。
走りのフィーリングは電子デバイスを余さず装備するので、間違いなく新しい。普段乗りできるGSX‐Rとは言ったが、ライディングポジションが違うので当然スーパースポーツとは異なり、スタンダードなネイキッドの乗り味でもない。ネオクラの“クラシック”の部分にあまり捉われずに、素直に「新時代のカタナ」と考えれば、コレが最良のカタチだと思えてくるのだ。
スズキ KATANA:ネオクラポイント
フロントカウルと燃料タンク(造形を優先し、スズキ初の樹脂製カバードタンクを採用)のつながりは、初代カタナを見事にアレンジ。
初代のアッパー下の“整流版”を現代風に上手く処理して取り入れている。短いテールやスイングアームマウントのナンバーは、近代の欧州ネイキッドの手法。
初代カタナから引き継がれるロゴが各所に配される。ちなみに国内の初代750は過激という理由からKATANAの名がなく、同梱された刀ステッカーをユーザーが貼るシステムだった。
スズキ KATANA 車両紹介
シート高825mm。けっこう腰高で一応両足が接地するが足着き性はいまひとつ。ステップ位置はそれほど高くない。アップハンドルだが思ったより前傾姿勢で、ハンドル切れ角はちょっと少なめ。
【150psのハイパワー】前モデルの148psから150psにアップ。大元のGSX-R1000[K5]の178psからデチューンされたとはいえ、ネオクラ系では破格のハイパワーだ。令和2年排出ガス規制にも適合。
フロントはプリロード+伸び側/圧縮側減衰のフルアジャスタブル。Fブレーキはφ310ディスクにブレンボのラジアルモノブロックを装備。
リアサスペンションはプリロード+伸び側減衰。
【走行3、トラクションコントロール6モード用意】2月のアップデートでトラクションコントロールが3段階+オフから5段階+オフに進化。新たに装備したSDMS(走行モード)は、最高出力は変えずにスロットルレスポンスを3段階で選択。
【上下クイックシフター獲得】’22年2月の大型アップデートにより電子制御スロットルを採用したことで、シフトアップ&ダウン対応のクイックシフターを装備。いっそうスポーツライディングに磨きをかける
【角形ヘッドライトを継承しつつLED化】LEDの角型のヘッドライトは上下2段で(上がロービーム)上下の仕切りにポジション灯を配置。テールランプは凝った意匠だ。
【ハンドルは結構アップ】電子制御スロットル装備になったことでハンドル周りのワイヤーケーブルが無くなってスッキリ。パイプのアップハンドルは「カタナらしくない」と意見が分かれるところ。
【グリップの良いシート表皮】元祖カタナのツートーンのシートをオマージュし、サイドにカラーの切り替えとタンデム部の座面に型押しのラインが入る。オプションで黒×赤で刀ロゴ入りシートも用意。
シートの下はほぼ隙間ナシ。ETC車載器の置き場は右側テールカウルの中くらい。車載工具はシート裏に収納。
荷掛けフックはタンデムステップと、シート裏のストラップを利用。
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