本格派だけど親しみやすいスーパースポーツ、それが新生YZF-R7だ。スーパースポーツの醍醐味が手の届く範囲で味わえる。そんな大注目のマシンの速攻撮り下おろしに成功したのでお届けしたい。今回はベースモデルになったMT-07と徹底比較だ!

●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:株式会社スタジオコバ(藤川 翔平) ●取材協力:ヤマハ発動機

“手の届く”ところにスーパースポーツが帰ってくる!

MT-07譲りの689ccパラレルツインを活かしたMAX 73psの扱いきれるパワーと滑らかなトルク特性、そして軽量&スリムな車体で、YZF-R6よりもかなりフレンドリーに違いない。YZF-R25/R3からのステップアップにもピッタリだが、R7は弟分たちよりも“スーパースポーツ”本来のコーナリングを攻める純粋な楽しさにフォーカスしているところがポイントだ。週末は峠のワインディングで、そしてレースに参戦するまではいかないがサーキットの走行会で本気の気持ちいい汗を思い切り流したいといったニーズに、まさにバッチリと合っている。

そのためにMT-07をベースとしながらも、エンジンはアシストスリッパークラッチの追加や二次減速比の変更を行い、車体は鋼管ダイヤモンドのメインフレームの剛性面をチューニング。さらに専用設計の足まわりを前後に与えられて走りに対応。ディメンジョンやライポジの面から見てもミドルクラスのスーパースポーツとしては尖った性能が自慢だったR6よりはマイルドにしつつ、MT-07よりはしっかりスポーツ寄りにと、3車を並べてみることでヤマハが狙っているR7の世界感が見えてくる。

そもそも今でこそスーパーバイクレース前提の超ハイエンドマシンとなった長兄YZF-R1だが、初代登場時はあくまで“セカンダリーロード(公道ワインディング)最速”を謳った価格的にも“手の届く”マシンだった。R7がもう一度、この“手の届く”ところにスーパースポーツの世界を届けようとしている。

ヤマハによると国内仕様も2021冬以降に発売する予定とのことだが、それを待ちきれない我々はヤマハ本社にあるコミュニケーションプラザで展示されていた欧州仕様の実車を速攻撮影。前回記事のYZF-R7/YZF-R6/MT-07 ABSの足着き&ライディングポジション比較に続いて、今回はYZF-R7とそのベースモデルとなったMT-07 ABSのディテールを徹底比較してお届けしたい。

YZF-R7 & MT-07(+YZF-R6)スペック比較

YAMAHA YZF-R7[2022 model]

 

YAMAHA MT-07 ABS[2021 model]

YZF-R7 & MT-07 ABS(+YZF-R6)スペック比較


YZF-R7とMT-07で 何が違う【ディテール比較】

MT譲りのエンジンをスポーツ用に最適化

CP2と呼ばれる270度クランクの並列2気筒エンジンをR7用にチューン。同エンジン初のアシストスリッパ̶クラッチを採用してエンブレを弱め、2次減速比をMT-07の43/16=2.687から42/16=2.625へと最適化して高揚感あるスポーティな乗り味をもたらした。

2022年モデルで新しくなった2into1マフラーは、ユーロ5(国内では令和2年度排出ガス規制)に対応。エキパイと異形断面のサイレンサーは一体式で、サブチャンバーも備えている。

 



外観上から見た限り、マフラーはMT-07と同一のショートタイプ。プレスリリースにも特にマフラーに関する記載はない。そのためリプレイスマフラーの開発も比較的容易か?

 

 



バイファンクションLEDを導入

兄貴分のMT-09ともども2022年モデルでバイファンクションLEDヘッドライトのサイバー顔に進化。両脇のLED ポジションランプは”Y”の字をモチーフにしている。




YZF-RシリーズのアイデンティティであるM字型ダクトの中央に1灯でハイビームとロービームを兼用するバイファンクション1灯のLEDヘッドライトをセット。両脇にLEDポジションランプを備える。

 



R7はテール形状も兄貴分ゆずり

レイヤー構造でエアスルーとしたテールカウルは先代から形状変更。LEDテールランプ本体は先代のものと同じだ。ナンバープレート&ウインカーステーはR7と同一。

 



縦長LEDテールランプと空力性能に優れたエアスルー形状のシートカウルは、R1やR6と同様のイメージ。ナンバー板&ウインカーステーも取り外しやすそうな雰囲気だ。

 




ヤル気を引き出す本気コクピット


肉抜き風の処理を施したトップブリッジの下にセパレートハンドルをセット。タンクカバー前方も伏せやすい凹形状とレーシーだ。メーターは新作の高精細反転液晶タイプで、YZF-R1に通じるレイアウトを持つ。

コンパクトなメーターが広々視界を演出


幅広&高さアップとしたアルミテーパーバーハンドルに変更され、ゆったりした乗車姿勢を確保。コンパクトなメーターは反転液晶の新作となり、中央のデジタル速度計をバー式タコメーターが囲む見やすいレイアウトに変更された。

使い勝手と快適性を重視するMT-07、一方のYZF-R7はアップ方向のクイックシフターも用意

MT-07はスターターボタンとキルスイッチが一体型。こちらも左手元でメーター表示の操作が可能だ。YZF-R7よりもステップ位置はやや前方にセット。ステップバーはラバータイプで日常ユースを優先している。

 

右スイッチボックスにハザードも装備。左ボックスのボタンでメーター内の表示を切り替えられる。ステップバーはスーパースポーツらしい細身のラバーレス。オプションで上方向のみのクイックシフターも用意する。

 

 

タンクカバーでそれぞれに個性を与える

MT-07はタンクカバー方式で、まわりの構成パーツを2022年モデルで9→8個に減らしつつ、スポーツ走行時のホールド感をアップ。タンク容量はR7と共通で13Lだ。

 


こちらも本来のタンクの上をカバーで覆う。シートとつながるタンクエンド部の滑らかな曲線は、コーナリング時に素早く身体を動かせるようR6などで生み出された形状だ。 

 

 

幅広いスポーツランに対応したシート  

シート前方を斜めに削ぎ落し足着き性に考慮。その一方で後方座面を広く取って快適性との両立が図られている。タンデムシートの面積もR7より幅広に取られている。 

 

 

シート前方は細く、後方は広くしてポジション自由度を確保。ワインディングから高速道、サーキットまで幅広い用途に対応する。タンデムシートがストッパーを兼用。

 

 


YZF-R7のために作られた新開発の倒立フォーク

新設計のKYB製フルアジャスタブルφ41mm倒立フロントフォークを採用。減衰力とバネレートを最適化し、車体挙動の分かりやすさ、ワインディング路やショートサーキットでの操縦性などを主眼にセッティングされている。

 

 




ラジアルマウントの強力ブレーキがR7の走りを支える

リヤブレーキはφ245mmディスク+片押し1ポットキャリパー。リヤサスも減衰特性とバネ定数をR7専用に開発。車体ディメンジョンに合わせてリンクも調整されている。






フロントブレーキはφ298mmダブルディスクにラジアルマウント4ポットキャリパーを採用。マスターシリンダーもラジアルマウントで強力なストッピングパワーを発揮する。 

 

 


以前のマイナーチェンジで締まった脚に

リヤブレーキのディスク径はペタル形状だった従来と同じφ245mmだが、2022年モデルでMT-09と同型の円形に。YZF-R7でもこの新型MT-07と同系のリヤブレーキシステムが採用されている。





 2022年モデルでフロントディスク径を16mm大径化してR7と同じφ298mmに。これに通常マウントの4ポットキャリパーを組み合わせる。大径化に応じてフォークアウターも形状変更。

 

 

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