WR250Rやセロー250のディスコンで久しくトレールバイクの系譜が途絶えていたヤマハのラインナップ。2025年春のモーターサイクルショーでは、125ccと思われるトレールモデルを展示して話題となったが、ついに2026年1月30日よりWR125Rを発売することが決定。12月19日には、福島県のモトクロスコース「モトスポーツランドしどき」にて二輪メディア向けの試乗会が開催されたので行ってきました!!

WR125Rのカラーリングは、左のディープパープリッシュブルーソリッドE(ブルー)と、右のヤマハブラック(ブラック)の2色展開。価格は53万9000円と125ccモデルとしてはちょっと高めの値付けにも関わらず、 試乗会時点で既に約1000台の受注(年間販売計画台数1300台)が入るほどの人気だ。
“オフロードのヤマハ”が作る完璧な車体バランスに脱帽!!

WR125Rは125ccの小排気量ながら、可変バルブタイミングシステムのVVA、と極大59丁のリヤスプロケットが効いており、加速ではしっかり路面をかいて進む。
2019年のセロー250ファイナルエディション以来、実に5年以上もの空白ができてしまったヤマハのナンバー付きオフロードバイクのラインナップ。2026年1月30日に発売されるモデルは、なんと125ccクラス。てっきり海外で発売されている155ccで軽二輪クラスのWR155Rが入ってくるかと思ったら原付二種クラスの125ccモデルだったのだ。
筆者は数年前に国内未導入のWR155Rにも試乗しており、そのコンポーネントの素晴らしさを知っている。それだけにこのWR125Rには“より排気量の少ない125ccだとエンジンパワーはどんなもんだろう? モノ足りなんじゃないの?”という懸念を抱いてしまった。……のだが試乗してみてビックリ、考え方が180度変わってしまった。というのもWR155R同様、搭載されている可変バルブタイミングシステムであるVVAがとてもよく効いており、低回転域ではトルク不足を感じず、しかも高回転側のパワーフィールも伸びやかなエンジンに仕上がっていたからだ。
リヤのスプロケットを見れば59丁というとても大きなスプロケットが付いており、1速でクラッチをミートさせると歩くより若干遅いぐらいの速度で進むWR125R。まるでトライアルバイクのようなギヤ比設定だが、それだけにトルクも潤沢。極低速で走らせる際に少々スロットルやクラッチを雑に扱ってもエンストの心配をしなくていいくらいよく粘る。
オフロードバイク遊びを始める際に誰もがつまずくのが、滑りやすい路面での極低速マシンコントロール。この粘り強さは、ぜひこれからオフロードを始める初心者ライダーにこそ体感してほしいところ。それに、ここまで粘り強ければ通勤・通学などの日常使いでもエンストしにくいキャラクターなのは間違いない。WR125Rはオフロードバイクとしてだけでなく、バイク免許取得後のエントリーバイクとしても非常によさそうである。

VVAの効用で8000rpmあたりからググッとトルクが増して加速するWR125R。上り坂などではエンジン回転数6000~7000rpmあたりでダラダラ走らせるよりは、ギヤを1速落として一気に8000rpm以上まで引き上げてしまった方がスロットルレスポンスがよくなりキビキビ走る。
ただ“極低速の粘り”だけで終わらないのが可変バルブタイミングシステムのバリアブル・バルブ・アクチュエーション(以下:VVA)のすごいところ。このハイメカは、7000~7400rpmを境に吸気バルブカムプロフィールが切り替わるようになっており、1つのエンジンで「低速トルク」と「高回転側の伸び」というキャラクターを両立。極低速でのトルクが潤沢でエンストしにくいにも関わらず、なんとピークパワーは10000rpmという高回転域で発揮し、レッドゾーンにいたっては11000rpmからというハイスペックな仕様となっている。単気筒、それもDOHCではなくSOHCの4バルブエンジンとしては“超”という言葉をつけたくなるくらい高回転型のキャラクターだ。
実際、走らせてみてもWR125Rのエンジンは非常によく回り、高回転側の伸びがいいと感じる。印象的だったのは峠道の上り坂。いつまでも上り勾配が続くような状況では“125ccだと流石に力不足を感じるんじゃないか?”なんて思ったのだが、低回転域では“極低速の粘り”でグイグイ登る。そこから回転を上げていくと一旦トルクが希薄になる回転域があるものの、VVAの効用で8000rpmあたりから再びトルクが盛り返し、最高出力発生回転域の10000rpmに向けて力強くふけ上がっていく。
こんな書き方をしてしまうと“じゃぁ6000〜7000rpmぐらいにトルクの谷があるのね?”なんてことが分かる方には分かると思うのだが、そうだとしてもこれほどの“極低速の粘り強さ”と、“高回転側の伸び”を両立しているのだから御の字。むしろ5000~7000rpmあたりの過渡特性が穏やかな回転数は、巡航走行時のパーシャルゾーンとして使いやすかったりもする。当たり前だが、ちょっとトルクが足りなくなってきたな? と思ったならばさっさとギヤを落として回転数を8000rpmくらいまでひき上げてしまえばいいだけの話なのだ。

フロント21インチホイールのフルサイズオフロードバイクとしてしっかり作り込まれているWR125R。その車体はモトクロスコースでジャンプしたところで底突きするようなこともなかった。
WR125Rは車体の出来のよさにもビックリさせられた。小排気量の125ccクラスとはいえしっかりオフロードバイクとして作り込まれているのだ。車体に関してはベースであるWR155R(国内未導入)とほぼ一緒で、メインフレームやスイングアーム、軸間距離といった走りの根幹キャラクターに関わる部分は変更していないとのこと。
今回は本格的なオフロードコースでの試乗も行なったのだが、本来モトクロッサーで走るような場所にトライしてみてもサスペンションが一度も底突きしなかったのだ。一般的に125ccクラスのトレールバイクというと、ちょっとこの辺りのバランスが悪いモデルが多く、“そもそもエンジンが非力で走らない…”とか、“エンジンはよく回るけど車体の性能が追いついてない”なんてことがよくある。特に後者の場合、ちょっとオフロードコースなどでメリハリを効かせた走り方をすると、負荷がかかりすぎてサスペンションが底突きを起こし、スロットル操作に手心を加えながら走ることになる。
ところがWR125Rはそんなことを考える必要がない。負荷の大きなモトクロスコースであっても楽しくスロットルを開け続けられる。この辺りのサジ加減は“オフロードのヤマハ”といったところ。ラインナップでは少々のブランクがあろうと楽しいオフロードバイクを作るノウハウは失われていないというわけだ。

250ccクラスに比べ軽くコンパクトなWR125Rの車体は狭い林道などでの取り回しもいい。倒立フォーク全盛のこの時代にあって、あえて正立フォークを採用。この正立フォークに合わせたフレームのしなやかさが車体の扱いやすさにつながっている。“何でもかんでも倒立フォーク化すればいいってもんじゃない!”という好事例だ。
というわけで、エンストしにくい“極低速での粘り”とワイドオープンした時の“高回転側の伸び”を両立するVVAエンジン。そして“オフロードのヤマハ”が作り上げたキャラクターバランスのいい扱いやすい車体。この2つこそがWR125Rというバイクのストロングポイントである。この2つの要素のおかげで、これから本格的にオフロード走行を始めてみたいというライダーにとてもいいエントリーバイクになっている。しかも、そこからテクニックが上達してジャンプやスライドコントロールといったアクションライドに挑戦してみたくなったとしてもも、きちんとそれを受け止めるだけの性能が車体に与えられている。このキャラクターがナンバーなしの競技用モデルではなく、公道を走ることができるトレールバイクという枠組みの中で見事にバランスしているところがWR125Rのすごいところなのだ。
YAMAHA WR125Rの足着き性チェック

875mmとオフロードバイクらしくシートは高めに設定されているが、車体がスリムで乗車時の沈み込みも大きいため、数値の印象ほど足着き性は悪くない。両足で支える場合にも踵が1、2cmほど浮く程度となった。車体も軽くスリムなので支えやすい。インプレッションライダーの谷田貝 洋暁は身長172cm、体重75kg。

ワイズギアのカスタムパーツを使えば『ローダウンシート(1万9800円/取付工賃別)』で-30mm、『ローダウンリンク(7700円/取付工賃別)』で-40mm。つまり最大-70mmシート高を下げることができる。この仕様だと身長172cmの筆者場合、両足の踵までべったり付いて、しかも膝の曲がりに若干の余裕が出るくらい足着き性が良くなった。

ワイズギアの純正アクセサリーパーツを使えばシート高が875mmから最大805mmまで下げられる!! “WR125Rに乗りたいけど足つきが心配……”というライダーはお店に相談してみよう。それにこのワイズギアのローダウンアイテムは本来のシート高に戻したくなったら、元のパーツに交換すればいいだけなのもお手軽でいい。
YAMAHA WR125Rのスタイリング&ディティール

全長2160 全幅840 全高1195 軸距1430 シート高875(各mm) 車重138kg(装備) ■水冷4スト単気筒SOHC 4バルブ 124cc 15ps/10000rpm 1.1kg-m/6500rpm 変速機形式6段リターン 燃料タンク容量8.1ℓ ■ブレーキ F=ディスク R=ディスク ■タイヤF=2.75-21 R=4.10-18 ●価格:53万9000円




LEDによる縦目2眼のレイアウトをヤマハのオフロードモデルとして初採用。上がポジションで、下がヘッドライト。

フロント21&リヤ18インチホイールのフルサイズ仕様。インナーチューブ径41mm正立フロントフォークのストロークは215mmで、リンク付きのモノショックによるホイールトラベルは187mmを確保。

WMTCモード値燃費は44.8km/ℓと驚異的!! 燃料タンクの容量を8.1ℓを確保したことで、ワンタンクの航続距離は363kmということになる。

液晶パネル付きのメーター。表示項目はスピード/エンジン回転数/燃料残量/時計/オドメーター/トリップメーター×2/ギヤポジション/平均燃費/瞬間燃費と多機能。

左スイッチボックスは、ディマ、ウインカー、ホーン、パッシング、ハザードスイッチ。右スイッチボックスは、キルスイッチとセルスターターボタンのシンプルな構成。

ハンドル幅は840mm。ハンドル切れ角は片側43°を確保しており、コンパクトに感じる車体と合わせて林道など、狭い場所でのUターンもしやすい。

水冷4ストローク SOHC 4バルブの125ccエンジン。MT-125、YZF-R125、XSR125に搭載されているのと同じ125cc単気筒エンジンをベースに吸排気系でオフロードバイク向けのキャラクターにリファイン。またアシストスリッパークラッチはオフロード走行要件を踏まえて非搭載となっている。

吸気カムプロフィールを7000~7400rpmを境に低速向けと高速向けで切り替える可変バルブタイミング機構・バリアブル・バルブ・アクチュエーション(VVA)を搭載。シリンダーヘッド右側にある円筒状のパーツがカムを切り替えており、作動時には“カチッ”と音がする。

エアクリーナーボックスを新作し、先代(国内未導入)の約3ℓから、約3.5ℓまで容量アップ。エアクリーナーフィルターはビスカス式でアクセスもしやすい。

オフロード系バイクの定番であるセミダブルクレードルフレームを採用。実際、横方向の動きがしなやかであり、車体がコンパクトに感じる。

スイングアームはスチール製。ホイールは軽量なアルミ製とし、純正タイヤはダンロップのD605。空気圧をしっかり落とすためのビードストッパー用ホールはなし。

トレールマシンではあまりお目にかからないくらい大きな59丁のスプロケットを装着(2次減速比:4.214で59/14丁)。1速アイドリングでは歩くような速度で進み、トルクも力強くエンストを起こしにくい。

ブレーキは、前後いずれもディスクで、ローター径はフロントが267mmで、リヤが220mm。ABSはフロントのみの制御を行うため、リヤブレーキはロックが可能でブレーキターンができる。

前作ではバッテリーが収まっていたシュラウド左内側にABSのユニットが収まる。バッテリーの位置は車体右側のサイドカバー内側へ移設。

オフロードバイクらしい食い付きのいいステップを採用しており、ラバーパッドも付属しない。チェンジペダルの先端は、転倒時に曲がりにくい可倒式を採用している。

コントロール性のいい前後一体型のシートを採用。しっかり絞り込まれた鞍部とサイドカバーへと伸びる前後のラインもスリムで、スタンディングにせよシッティングにせよ荷重移動がしやすい。

シートを外してみると、オフ車としては大容量な8.1ℓ燃料タンクがシート下までしっかり入り込んでいるのがよくわかる。そのためシート下スペースはほぼ皆無だ。

車体右側後方には、車載工具&書類入れ。キーによる施錠が可能だが、それ以上の荷物は入らない印象。

国内仕様は車体左側のタンデムステップにヘルメットホルダーを装着。タンデムステップは必要なければ取り外せるが、盗難防止のために左側のタンデムステップステーのボルトだけ、“いじり止め付きのトルクス”になっている。

エミッション対応でサイレンサーエンドのノズルを下向きにする必要があったとのことだが、カバーデザインでうまくスポーティにまとめ上げている。

ウインカーの光源はバルブで、テールランプはLED。ノーマル状態での積載性はほぼなく、荷物を積むためにはワイズギアの『DRC ツーリングキャリア(1万3200円)』などのキャリアを利用することになりそうだ。
