’20年9月10日に発売され、ヤングマシン誌『マシン オブ ザ イヤー(MOTY)』では250ccとして29年ぶりに総合部門でトップに輝いたニンジャZX-25R。その実力をあらためてお伝えすべく、かつてのニーゴー直4全盛期を知るテスター・大屋雄一氏が初試乗。果たして?
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●取材協力:カワサキ
最新技術で官能を追求。これぞスモールSS!
「まんまスーパースポーツだ!」これが偽らざる第一印象だ。自然と高回転域を使うことによって高まるジャイロ効果と、2気筒よりも幅の広いクランク軸によって生まれる倒し込みの手応え。並列4気筒という重い塊が前輪分布荷重を稼ぐことで生まれる接地感。そして、スロットルのわずかな動きですらスムーズに反応する前後サスペンション。これらすべてのイメージが、1000ccやミドルクラスのスーパースポーツと合致するのだ。この世界観を腰高感の少ないフレンドリーなライディングポジションで味わえる。これこそがZX‐25Rの存在価値であり、カワサキがあえて令和に250ccの直4を蘇らせた意味がここにあるような気がするのだ。
【’21 KAWASAKI Ninja ZX-25R SE KRT EDITION】■全長1980 全幅750 全高1110 軸距1380 シート高785(各mm) 車重184kg ■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 249cc 45ps[33kW]/15500rpm 2.1kg-m[2.1Nm]/13000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量15L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/70R17 R=150/60R17●色:緑×黒 ●価格:91万3000円
DNAを感じさせるアグレッシブなデザイン】センターラムエアインテークやスリムなテールカウルなど、ニンジャZXシリーズの流れを汲んでいるのは一目瞭然。灯火類は前後ウインカーのみフィラメント球だ。星型5本スポークのホイールに組み合わされるのはダンロップのGPR-300で、SEはクイックシフターなどを標準装備。【ライディングポジション】スポーツライディングとツーリングの両方に対応できる絶妙なハンドル&ステップ位置。シート高はニンジャ250よりも10mm低く、足着きはご覧の通り。[身長175cm/体重62kg]
超ショートストローク比かつ電子制御スロットルを採用する249cc水冷DOHC4バルブ直4は、3000rpm以下でのトルクが薄いものの、そこから徐々に力が増していく。8000rpm付近を境に「カーンッ!」とサウンドが官能的に変化し、同時にパワーも一気に上昇。レブリミットは1万8000rpmで、甲高いレーシングサウンドに酔いしれること間違いなし。そこまで開けても2速なら100km/h以下であり、法定速度内で快感に浸れるバイクなどそうはないのだ。なお、ライディングモードはハイとローの2段階で、後者はパワーを80%程度に抑制し、レスポンスも穏やかになる設定だ。
ハンドリングも優秀だ。特にフロントフォークのしっとりとした作動性が素晴らしく、安心してブレーキを残しながらコーナーへと進入できるし、操縦の仕方によってさらに高い旋回力が引き出せる。大きな荷重を掛けなくても前後サスやタイヤが仕事をしてくれるので、低い速度域でもスーパースポーツらしいフロントからグングンと向きを変える走りが楽しめる。ニンジャZXシリーズに属するだけあってサーキットでの能力云々が注目されがちだが、一般公道での速度域において、スーパースポーツの世界観をここまで敷居を低くして味わわせてくれるバイクはなかったはず。そういう視点で見ると、これはバーゲンプライスだ。【45psを発揮する直4は超高回転型】φ50×31.8mmという超ショートストロークな新開発の249cc水冷DOHC4バルブ直4。日本仕様は45psを公称する。φ18.9mmの大径吸気バルブ/ニンジャH2と同素材の排気バルブ/軽量アルミ鋳造ピストン/スリッパークラッチなど最新技術を惜しみなく投入する。【ZX-10RRの設計思想をトレリスフレームで】独自の解析技術によって生み出された高張力鋼製トレリスフレーム。重心位置やエンジン軸の位置など主要寸法は、ZX-10RRのレースマシンの設計思想を踏襲。スイングアームも高張力鋼で、必要な剛性と柔軟性を両立する。φ37mmの倒立式フォークはショーワのSFF-BP。リヤはホリゾンタルバックリンクで、プリロードは5段階。フロントキャリパーはモノブロックで、ABSユニットはニッシン製の最新版。 ラムエアダクトはフォークの左側を迂回するレイアウトを採用。インテークはダウンドラフトで、電子制御スロットルバルブを組み合わせる。パワーモードはハイとローの2段階だ。 レバーはブレーキ/クラッチとも5段階のアジャスター付き。メーターは指針式の回転計と多機能液晶パネルの組み合わせだ。なお、事故時の状況を記録するEDRも搭載する。 燃料タンクは上半身を伏せやすいように上面を低くしながら容量は15Lを確保。シートはスポーツ性と快適性を両立しつつ、良好な足着き性も実現した。
[△] SE仕様はニンジャ400より17kgも重い
またがって車体を起こそうとした瞬間、けっこう重いと感じた。試乗したSEモデルの場合、ニンジャ400よりも17kgも重いのだ。これが高速域での安定性に寄与している部分もあるが、250cc=軽いというイメージからは少し離れている。
[こんな人におすすめ] MOTY(マシンオブイヤー)総合優勝。これを発売したカワサキに拍手!
最後に試乗した250cc直4の機種名が思い出せないが、そのかすかな記憶と比べてもZX-25Rのエンジンは洗練されている。フロントブレーキはシングルだがコントロール性が高いので不満なし。令和にこれが発売された奇跡に感謝!
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