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2万回転……冷静になってみるとアンビリーバブル!
改めて考えてみると,エンジン……特にバイクのパワーユニットというのはとんでもなく凄いシロモノです。
我々ライダーがいつも何気なく眺めている回転計、そこで表示されている数字の単位がrpm(アールピーエム)だということは、当然ご存じですよね。
こちら英語でいう“revolutions per minute”または“rotations per minute”の略で、1分の間での回転数のこと。
250クラスに久々の4気筒エンジンを引っさげて登場したカワサキ ニンジャZX-25Rなら1万7000rpmからスタートするレッドゾーン域の最大表示は実に2万rpm。仮にそこまでキッチリ回したとするとクランクシャフトが1分間で2万回転しているということです。
なんとなく「ふーん」で終わってしまいそうになりますが、クランクシャフトが1秒間で333回転強している、と考えると「うおっ!?」となりませんか?
たった1秒で実施されるとんでもない数のタスク
クランクシャフト直上では吸入→圧縮→燃焼→排気という4ストローク/1サイクル工程が1秒間に166回強行なわれており、4気筒エンジンですから毎秒約664回、4つあるシリンダーの中でドッカンドッカン正確な燃焼が実施され、直径5㎝のピストンが4つ、上死点と下死点の幅3.18㎝間を超高速で上下運動しているわけです。
当然カムシャフトや吸排気バルブなども想像を超えるスピードで全力稼働! それを支えているのがエンジンオイルの作るミクロン単位の薄い薄い油膜というわけですから、ヘタな製品を適当に入れておく……なんてもってのほかなのです。
なお、大多数のバイクメーカー各社は純正エンジンオイルの使用を推奨していますが、「それ以外は使っちゃダメ!」とは言っていません。
「相当品をご使用の場合は、オイル容器の表示を確認し、下記の全ての規格を満たしているオイルをお選びください。全ての規格を満たしている場合でも特性が異なりこのクルマに適合しない場合があります」とは、Hondaバイクの取扱説明書に書かれている内容。
そして、その規格とは、①JASO T 903規格 ②SAE規格 ③API分類の3つ。
厳正な検査で認められた高品質オイルを選ぼう
①は二輪車用4サイクルエンジンオイルの性能を分類する日本自動車技術界規格(Japanese Automobile Standards Organization)によって定められた規格で、摩擦特性について厳格にテストされた結果に基づく性能分類がされています。
「MA」は高い摩擦特性を持ち、せん断安定性も高いMT車向け。「MA1」はMAの摩擦特性の範囲で粘度を低めにしたもので、「MA2」はMAの摩擦特性の範囲で粘度を高めにしたもの。「MB」は摩擦特性が低く、スクーターに使われることが多いオイルとなっています。この4種類の中で優劣があるわけでなく、車種による指定がある場合はそちらを守りましょう、というもの、一般的なスポーツバイクは「MA」が指定になっているはずです。
②は米国の技術者団体であるSociety of Automotive Engineersが定めたオイルの粘度に対する規格で、5W-30や10W-40などという表記はおなじみのはず。
「W」とはWinterの意味で低温時の粘度を示し、その前に付いている数字が小さいほど軟らかなオイルで、寒さに強く抵抗が少ない……つまり低温時でも始動性に優れるオイルということ。目安としては10Wならマイナス20℃、0Wならマイナス30℃の外気温でも使用できるとされています。
対して後半の30や40といった数字は高温時の粘度で、数値が大きいほど熱さに強い……つまりハードなコンディション下でも油膜が切れにくい特性を持たされているのです。
基本的にはメーカー推奨の粘度を踏襲しておけば間違いはないのですが、筆者は油冷エンジンのGSF1200Sへ冬期に5W-30、夏期には15W-50を入れるようにしています。
米国のモータリゼーションとともに進化したAPI規格
そして③のAPIとはAmerican Petroleum instituteの分類に基づくエンジンオイルのグレードに関する規格表示で、2番目のアルファベットが大きくなるにつれて品質が良くなります。
指標自体は1930年以前に制定された「SA」からスタートしているのですが、時代の変化や車両の進化によって今や「SF」まではあまり使われなくなり、現在では1988年に制定された「SG」より上級な製品を使用するよう多くのメーカーでは推奨しています。
現在一般的なのは「SG」、「SH」、「SJ」、そして2001年以降のガソリン車に向けて開発され、厳しい環境対策規格にも対応した「SL」ですが、一部車種ではさらに改良が施された「SM」グレードも使用可能だと取扱説明書に明記されるようになりました。
交換するたび感じられる違いをレッツエンジョイ!
正直なところ、バイクショップやバイク用品店で購入できるエンジンオイルなら品質面に問題はありません。そして、たとえ同じブランドでも銘柄や粘度の違いによって、フィーリングの違いというものが確かに出てきます。
せっかく多彩なエンジンオイルを選べるのですから、性能面で許容できる範囲でよりコストパフォーマンスの高い製品を見つけていく、という方向性も大いにありではないでしょうか。
数多くそろった製品をチェックしていき、バイクライフをより楽しくしてまいりましょう!
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