既存のホンダ・CRF250LCRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230KLX230シェルパが登場し、スズキからも久々の400ccクラストレールのDR-Z4Sが発表されるなど、にわかに盛り上がりつつあるバイクのジャンルがオフロードだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーを毎回少しずつ紹介していこうというのが本企画。今回は車体のお話。なぜオフロードバイクのステップはあんなにギザギザなのだろうか?

オフロードバイクのステップはなんであんなにトゲトゲしているの!?

CRF250L(2021モデル)のステップ。オフロードバイクのステップ(フットペグ)は大なり小なりギザギザしていていかにも滑らなそう。

CRF250L(2021モデル)のステップ。オフロードバイクのステップ(フットペグ)は大なり小なりギザギザしていていかにも滑らなそう。

 

凹凸のある路面を走るオフロードでは、飛んだり跳ねたりしなくても常に地面から突き上げられたりするためステップから足が外れやすい。また、泥などがステップや靴底につけばそれだけでステップが滑りやすくなる。そんなステップから足が外れるのを防止するためにオフロードバイクのステップにはギザギザが設けられている

KTMのモトクロッサー(2018モデル)を走らせる谷田貝 洋暁。ステップの上に立つスタンディングポジション暴れるマシンをコントロールすることも多いオフロード走行。そんな状況でも足が安易に外れないようにオフロードバイクのステップはギザギザしている。

ステップの上に立つスタンディングポジション暴れるマシンをコントロールすることも多いオフロード走行。そんな状況でも足が安易に外れないようにするためオフロードバイクのステップはギザギザしているのだ。写真はKTMのモトクロッサー(2018モデル)を走らせる筆者。

 

またロードバイクの乗り方とオフロードバイクの乗り方で、一番大きな違いとなるのはオフロードではスタンディングポジションを多用することだ。ステップの上に立ち、全身を使って暴れるマシンを抑え込んだり、荷重をコントロールしてフロントタイヤを持ち上げたり、抑え込んだり……。スタンディングでこれらのマシンコントロールをする際にボディアクションの起点となるのはハンドルではなくステップである。

ステップを軸にしてボディアクションを起こすことが多いため、ステップはとにかくホールドが良く、荷重を入力しやすい方がいい。……というか、ボディアクション中に足がすっぽ抜けてしまったら荷重が抜けて即転倒に繋がる。そのためにステップはとにかくギザギザにしてブーツへの食いつきをよくする必要があるというわけなのだ。

ナンバー付きのトレールバイクやアドベンチャーバイクのステップは、ギザギザ加工がしてある一方で快適性のためのラバーパッドを装着しているモデルも多い。写真はスズキのV-STROM800DE。

ナンバー付きのトレールバイクやアドベンチャーバイクのステップは、ギザギザ加工がしてある一方で快適性のためのラバーパッドを装着しているモデルも多い。写真はスズキのアドベンチャーバイクV-STROM800DEのステップでラバーパッドがボルトが留まっている。

 

ただ、あんなにギザギザしていて痛くないの? なんだか靴底も痛みそうだし……。もっともな話で、ギザギザのステップは振動もダイレクトに伝えるし、スタンディングを多用すればそれ相応に靴底も痛む。そもそもスニーカーなど底の薄い靴でスタンディングすると凹凸を感じるくらいだ。そのためナンバー付きのトレールマシンの場合、それほどステップのギザギザが鋭くなかったり、取り外し可能なラバーパッドが装着されていたりする。公道走行を前提に靴底へのダメージを減らしたり、振動を減らして快適性を上げる様な工夫が盛り込まれている。

ハスクバーナのエンデューロマシン(2018モデル)を走らせる谷田貝 洋暁。
シッティングポジションでも積極的にステップを使って荷重コントロールするのがオフロード。

シッティングポジションでも積極的にステップを使って荷重コントロールするのがオフロード。写真はハスクバーナのエンデューロマシン(2018モデル)を走らせる筆者。

 

ちなみにこオフロードバイクのステップのギザギザ具合は、モトクロスやエンデューロなど競技性が上がればあがるほど、ギザギザが鋭くなる傾向にある。まぁ、飛んだり跳ねたりより激しい動きをするならよりブーツへの食いつきをアップした方が具合がいいというわけだが、そのぶんブーツへの攻撃性も強い。僕の場合オフロードブーツの交換サイクルは、劣化やソールが減るというより、ステップとの接触部分に穴が空いたら交換するという具合だ。

KTMのエンデューロマシン(2018モデル)のステップ。ギザギザというより剣山のようで、いかにもブーツへの食いつきが良さそう!

KTMのエンデューロマシン(2018モデル)のステップ。ギザギザというより剣山のようで、いかにもブーツへの食いつきが良さそう!

オフロードバイクのワイドステップってどんな効用があるの!?

ホンダCRF250L/RALLY用に用意されている純正アクセサリーのラリーステップ。同社のモトクロッサーのステップと同形状とのことでかなり幅がワイド化しており、またギザギザも尖っている。これらのオプションのステップをワイドステップという

ホンダCRF250L/RALLY用に用意されている純正アクセサリーのラリーステップ。同社のモトクロッサーのステップと同形状とのことでかなり幅もワイド化されており、またギザギザも大きく尖っている。これらより大きな面を持ったステップを総じてワイドステップという。

 

この連載の中でオフロードバイクのハンドル幅ハイシートの効用の話をさせてもらったけど、ワイドステップも基本的に考え方は一緒だ。ステップが長くなって大きく横に張り出せばハンドル幅を増やすのと同じでより軽い力でマシンを抑え込んだり、押し出したりすることができる。

前後の幅のワイド化に関しても同じ。スタンディング走行ではライダーがより積極的に前後へ移動して荷重コントロールを行う。その際にステップの前側のエッジを押さえ込むか、それともステップの後ろ側のエッジを使うかで、前輪後輪への荷重かかり方も大きく変わる。この際、ステップの幅が大きくワイドなほど荷重コントロールの効果も出やすく、フロントアップがしやすくなったり、急坂の下で体を大きく後に移動する様な場合に大きな違いとなって現れる。オフロードバイクのステップはマシンコントロールのための入力装置でもあるのだ。

僕がテネレ700に取り付けているのが左のPMB(Fastway)のワイドステップで、右がノーマルのステップ。幅はもちろんだけど、長さも長い。

僕がテネレ700に取り付けているのが左のPMB(Fastway)のワイドステップで、右がノーマルのステップ。幅はもちろんだけど、長さも長い。

 

ノーマルのステップからより大きな面を持ったワイドステップに交換すれば、マシンを少ない力でコントロールできるようになり、同じボディアクション量でより大きな挙動をバイクにさせられるというわけ。特に200kgを超すような重量級のアドベンチャーバイクではワイドステップによる効果が顕著に出る。ギャップに振られたような場合の押さえ込みがしやすくなり、またスライドコントロール時にもマシンの角度や振り出し具合が操作しやすくなるぞ!

 

【関連記事】 なぜ? どうして? オフロード!! 
> ①「オフロード用ヘルメットはどう選ぶ!?」
> ②「オフロード用ブーツって必要!?」
> ③「オフロードバイクのフロントタイヤはなぜ大きい!?」
> ④「膝のプロテクターは絶対必要!!」
> ⑤「ダート林道が見つけられない!?」
> ⑥「オフ車のハンドルはなぜ幅広!?」
> ⑦「オフ車のシートはなぜ高い!?」
> ⑧「オフ車のステップはなぜギザギザ!?」

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事