骨がないとタコ人間になってしまう!?
「美しい彼女(彼)と目が合った瞬間、私はすべてを骨抜きにされた」
……というような恋愛小説のシーンでも使われている骨。この場合は相手にとても強く惹かれてしまいメロメロというイメージで、料理のとき骨を取り去った魚や鶏肉などのように軟体化した状態が想起される表現として“骨抜き”という言葉が効果を発揮しているわけですね。
そう、存在しないとタコのようにフニャフニャ、あればシャキッと立ち居振る舞うことができる硬い枠組み……それが人間では骨であり、バイクならフレームということになります。
最初のガソリンバイクはウッドフレーム
二輪車は、文字通り2つの車輪が前後で整列していないと安定してキレイに転がることすらできません。その位置決めをするのに重要な役割を果たすのがフレームです。
1885年11月、ドイツでゴッドリーブ・ダイムラーが発表した世界初のガソリンバイクは、木製のフレームに4ストローク単気筒264ccエンジンを搭載していました。【筆者が在籍していた八重洲出版のサイトにいい記事があります ※この文字列をクリック】
そこからホイールにタイヤが付き、操舵装置と衝撃緩衝&駆動機構などが総合的に進化していくにつれ、フレームの素材は木から鉄やアルミニウム、今ではカーボン(!)さえ採用される時代へ……。
形状もただの“棒”からバックボーン、アンダーボーン、ダイヤモンド、クレードル(ゆりかご)、トラス(トレリス)、ツインチューブ、モノコックetcのように、多種多様なものが試行錯誤の上に生み出されてきたのはご存じのとおりです。
●翌年の1983年、フレディ・スペンサー選手の駆るホンダNS500と死闘を繰り広げたYZR500(0W70)では、フレームはまさしくツインチューブタイプとなり「デルタボックス」の名称も与えられました。以降のレース界を席巻したこの形式は市販車にも導入され、現在ではスーパースポーツモデルの大多数が採用しています
そして現在ではエンジンや補機類をうまく包み込みつつ、燃料タンク、外装類から搭乗者、ケース類といった相当な重量物までを支え、かつその車両のコンセプトに合ったデザインや剛性を持たされるに至りました。バイクフレームの役割は驚くほど多岐にわたっているのです。
カラダを支えている……だけじゃない!
実は人間のフレーム……とも言える「骨」も意外なほど多くの役割を担っています。
「え? 身体を支えているだけじゃないの?」。ハイ、筆者も長年そのレベルで止まっていました。
学校の怪談を演出するキーアイテムにもなっている(?)骨格標本は、誰でも一度は見たことがあると思われます。理科室の倉庫から教室へ持ってくるよう先生から言いつけられ、トラウマになっている人もいるかもしれません(笑)。
もしアナタがそうだったとしてガラガラとコロ付きの支柱を押して運んでくるとき、両手両足など数多くの部分がブランブラン動いていませんでしたか?
そうなのです。自らを支えると同時に四肢ほかの部分をしなやかに動かすことができるのも骨のおかげ。もう少し付け加えると人体で200あまりある骨に付着している筋肉と骨間をつなぐ関節、そして靱帯ほかの相乗効果で、我々は意のままに歩き、走り、寝て起きて食事をして、ついでにバイクを操れるというわけです。
なお、カラダに関節は68箇所もあり、筋肉は約600(骨に付着し骨を動かす骨格筋は約400。それ以外は内臓や血管などに存在)あるとされています。
実際のところ骨は「躍動」している!?
さて、その「骨」は何でできているのでしょう?
子供のころから骨=カルシウムというイメージが刷り込まれ、身長を伸ばしたいとCa含有量の多い牛乳をガブ呑みしてきた日本国民は相当に多いはず(トイレに駆け込んだ人も……)。
いや、実際に骨の主成分はリン酸カルシウムなのですが、それ単体では荷重600kgにも耐えるとされる(健康な成人の場合)骨の強度は作り出せません。
ポイントはタンパク質でできたコラーゲン繊維で、柱のようになったこちらにカルシウムがビッシリ付着して骨は硬く、丈夫になっているのです。分かりやすくたとえるなら鉄筋の入ったコンクリート……、バイク関連ならFRP製のパーツといったイメージでしょうか。
そして、解剖学や生理学を学び直して驚いたのが「骨はカルシウムの銀行であり、血液の工場であり、ダイナミックに新陳代謝を繰り返している」ということでした。
一度成長しきったらもうカチコチに固まって変化しないというイメージしかなかったのですが、本当のところは絶えず壊され、絶えず再構築されている内分泌器官でもあったのです。
そんな骨を養生していく秘訣や気をつける病気などについては、次回にてお伝えいたしましょう。(後編へつづく)