「見ても」、「乗っても」、「イジる」のも楽しいバイクであるが、その反面バイクに乗り始めると心配事が増えるのもまたバイクというものだ。そんなライダーの心配事においてその筆頭に挙がるのはやはり盗難、バイク泥棒である。大切なバイクは絶対に盗まれたくないものなのだ。
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本気になればバイク泥棒に盗めないバイクはない!?
のっけからショッキングなことを言うようで申し訳ないが、“何がなんでも絶対このバイクを盗んでやる!”とバイク泥棒に本気で狙われてしまったら、残念ながら我々バイクオーナーにそれを防ぐ術はない。24時間監視し続けることも、美術館並の厳重な警備体制をしくことも現実的ではないからだ。
ただご安心を! 100%盗まれない・絶対盗まれない防犯対策は無理だとしても、“愛車が盗まれる確率を限りなく下げること”は可能だ。
泥棒とはいえ相手も人間である。コトを実行する際に重要視するのは、“捕まらないこと”であり、“危険を犯すだけの割りのいい見返りがある”ことである。つまり、バイク泥棒も盗むバイクを選んでいる。この心理を逆手に取った防犯対策を施すのだ。
盗人の気持ちになってバイクを狙われないように防犯対策する
考えてもみよう。例えばあなたが道に迷って他人に声をかけるとして、声を掛ける相手に選ぶのは「答えてくれそうな人」ではないだろうか? 「答えてくれそうな人」とは、無視せず的を射た回答をしてくれそうな人。しかもそれが美人だったり、ハンサムだったらなお良しというわけだ。
バイク泥棒が考えることも一緒。盗んだバイクを売り飛ばすことを考えるバイク泥棒は「①高値で売れたり価値のある車両」を「②誰にも見つからず、捕まらずに盗む」ことに重きをおいてターゲットを選ぶ。よほど頭の悪い泥棒か、場当たり的な短絡的犯行でない限り、バイク泥棒の思考はこの2つが基本となると思っていい。
なので盗難対策にあたっては、この「①高値で売れたり価値のある車両」と「②誰にも見つからず、捕まらずに盗む」の原則に則って対策すれば、そもそもとしてターゲットとなる確率をぐっと下げられる。バイクの盗難対策とは、この①と②の裏返しであり、バイク泥棒に“労力に対して割りが合わない”、“捕まる、見つかる危険性が高い”と思わせることが効果的なのだ。
大切なのはオーナーの心の平穏
また盗難対策は実際に盗まれないようにすることはもちろんなのだが、一番重要になるのは「オーナーがどれだけ安心できるか?」ということ。高価な新車を買ったのはいいけど、バイク泥棒が心配でおちおち寝てられないようでは困るし、絶対に楽しくない。なので愛車の盗難対策はオーナーが気の済むまでやった方がいい。家でも出先でも枕を高くして寝られることがもっとも重要となるのだ。
ただ一つ注意して欲しいのはバイクの盗難対策とは、やればやるほどオーナー側も“面倒なもの”となるってことだ。確かに種類の違うロックを20個、30個とつければ、大抵のバイク泥棒から目をつけられることはなくなる。しかし、いざオーナーがバイクに乗ろうとした場合に、いちいち何十個ものロックを外さなければならないようなバイクは、遅かれ早かれオーナー自身が乗らなくなるに決まっている(笑)。
盗難対策においては、「オーナーが面倒じゃない」ということも一つの指標となるのだ。今回はそんな最低限の労力で効果の高いバランスのいい盗難防止のテクニックを紹介するので、自身のバイクライフに合わせて選んでほしい。
バイク泥棒の意欲を失わさせる盗難防止テクニック 基本編
その1 “上等な”バイクカバーで目隠しする
盗難対策において大前提となるのがバイクカバーの使用だ。効果としては、まず第一にバイクカバーをすることで中にあるバイクがまず見えなくなる。「①高値で売れたり価値のある車両」に則れば、泥棒はできれば高値で売れる人気車種を盗みたいと考えるハズだが、カバーがかかっていることで、どんなバイクが中にあるのか? パッと見ではわからないというわけである。
またカバーの状態や見た目も、盗む側からしてみるとかなり気にする部分だろう。オーナーが愛着を持ってバイクに接しているのか? それともぞんざいに扱っているのか? それはバイクの保管状況を見ればだいたいわかるものだ。意識の高いオーナーに愛されている車両であれば、中にあるバイクも高価である可能性も高いが、そのぶんしっかりした防犯対策を施したり、オーナーが目を光らせている可能性も高い。逆に穴が空いたようなボロボロのバイクカバーのかかったバイクは、オーナーに愛されてないとは言わないが少なくとも“それほど大事にされていないこと”は明らか。
バイク泥棒からみて“やりやすそう”と思われ、ターゲットになりやすいのはどっちだろうか? まず上等なカバーをしっかりかけることが防犯対策の第一歩というわけだ。
それに盗難に遭う状況で多いのは“キーの抜き忘れ”でもある。泥棒はキーが付いているバイクを見つけて持っていくというのだ。万が一キーを抜き忘れたとしても、カバーさえかかっていれば、キーが付いているどうかは外見からはわからないのである。
その2 バイク用バーロック/U字ロックは大いなる時間稼ぎ
泥棒が“何がなんでも絶対このバイクを盗んでやる!”と本気で狙ったら、時間をかければどんなバイク用ロックも解錠できるだろうし、溶接で使うようなガス切断機を持ち出されたら破壊できないロックはない。
ただ、ここで重要となるのは、「②誰にも見つからず、捕まらずに盗む」という泥棒の意識だ。泥棒は見つかったり、警察に通報されることを一番恐れる。犯行現場ではなるべく派手なことはしたくないし、極力短い時間でコトを済ませようと考える。
なので“このバイクを盗むのはめんどくさい”と思わせ、ターゲットからハズレさせることができれば盗難対策という意味ではオーナーの勝ち。そのためのロックはとても重要なのだ。
壊せないロックはないとはいえ、ロックを壊すためにはそれなりの手間と時間がかかる。何十個ものロックを取り付ける……なんてことは現実的でないとしても、ロックがされているだけで時間稼ぎにはなるのだ。
なので最低一つはロックをしておきたい。できれば前後二つに付けるとなおよし。これだけでも毎日乗るようなオーナーなら相当面倒な作業となるが、言葉を裏返せば「盗難に対して意識が高い」印象をバイク泥棒に与えられる。
その3 バイク用ロックは地球ロック&浮かせて取り付けるのがベター
ロックは、バーロック式にせよワイヤー式にせよ“バイクと堅固な構造物を連結する”のが効果的だ。いわゆる“地球ロック”という方式だが、こうしておくことで“吊り上げられたり”、“車輪を浮かせて持ち去られる”という、ロック単体使用での弱点を補える。写真はレッドバロンのオリジナルバーロックの「BL-10」で、レッドバロンが25年以上の歳月をかけて改良を重ねてきたレッドバロンオリジナルの盗難防止装置だ。レッドバロンユーザーはバイク購入時に、この「BL-10」を会員価格で安く買うことができる。
また泥棒の得物がヤスリやノコギリ状の得物だった場合に効果が高いのが、“ロックを浮かして取り付ける”ことだ。硬いものを切ったり削ったりする場合は、地面に押し付けて作業した方がやりやすい。身近な例えをすれば、カボチャを切るなら手に持つより、まな板の上で作業そする方がラクに切れるってこと。堅固な構造物を連結し、ロックは浮かせることで物理的に切断作業がしにくくなってさらに時間稼ぎになるというか、バイク泥棒に“このバイクを盗るのは面倒だな”と思わせられる。
バイク泥棒の意欲を失わさせる最強の盗難防止テクニック 応用編
その1 バイクが盗まれにくい状況を作る
バイクに施すカバーやロックだけでなく、ターゲットにされにくい環境を作り出す。まず第一はバイクの置き場所だ。路上や通りに面した場所よりも、敷地内や奥まった場所の方がやはり手は出しずらい。まぁ、これはあまり凝りすぎると“敷地に入ってしまえば人目につかない”なんて状況にもなりかねないのでバランスを考えよう。
その2 バイク窃盗犯を明るく照らし出せ!
場所の次は灯だ。部外者であるバイク泥棒は盗みを働く際に闇に紛れて作業したいハズである。ならば明るく照らし出してやれば単純に嫌がるというわけ。最近は人感センサー付きのセンサーライトも安価に手に入る。これらを使ってバイクに近づくと明かりが点灯するだけで十分効果がある。また、センサーライトを泥棒がしっかり認識できる位置に取り付ければ防犯という意味でも効果大だ。
その3 防犯カメラで積極的にバイク泥棒対策をアピール
導入にコストはかかるが効果的なのが防犯カメラだ。余程短絡的で頭の悪い泥棒か、“怨恨”でもない限り防犯カメラが見守るバイクに手出しをする泥棒はいないはずである。
ただこれも、センサーライトと同じく“抑止”としての機能を考えるのであれば、相手から見える場所に設置するというのが大前提。我々の目的は大事な愛車を盗まれないことで、“バイクを盗む窃盗犯の動画を撮る”ことではないからだ。また最近は、防犯カメラの形をしたダミーカメラなんてものも売られていたりする。
バイク泥棒撃退編
ここまでは、“バイク泥棒に愛車を狙われないようにする”、守りの工夫を紹介してきたが、ここからは不幸にも愛車が狙いを定められてしまった場合に泥棒を迎撃する、“攻め”の盗難抑止方法を見ていこう。特にこれからの季節は、帰省などで長い間バイクから目を離す機会が増える。なるべく手間をかけずにすぐ実践できる方法を紹介するので参考にして愛車の盗難対策に取り入れて欲しいぞ!
その1 アラーム音でバイク泥棒を追い払う
音も泥棒が嫌うものの一つで、振動センサーのついたバイク用のアラームも窃盗犯撃退には効果大。バイクに内蔵するイモビライザー一体型の“イモビアラーム”と、ディスクロックなどのロックと一体型になった外付けタイプのアラームがある。
ただこのアラームは、幹線道路や線路が近かったりして常に地面が振動しているような場所では誤作動が多く、ちょっと使いにくいこともある。選べるのであれば、振動に対する感度をオーナーが調整できるようなモデルを選んだ方がベター。
アラーム付きディスクロックは手軽で便利かつ、安心感も高い。コンパクトで持ち運びやすいのでツーリングなどの出先で使えるのもいい。 僕が使っているのはゼナのアラーム付きディスクロックで、その手軽さから海外ツーリングでも常用しているくらい。
蛇足だが「アラーム付きの車両にバイク泥棒が目をつけた場合、何度もアラームを鳴らして誤作動と思わせ、オーナーがアラームを切ったところで……」なんて話を随分昔に聞いたことがある。頭の片隅に置いておくといいかもしれない。
その2 バイク盗難対策GPSトラッカーで位置情報をリアルタイム取得&追跡
振動を感知して“バイクがいじられている”ことをリアルタイムで知らせてくれるのがバイク盗難対策GPSトラッカーだ。通常のBluetooth通信のGPSトラッカーとは違い、携帯電話と同じようにSIMを内蔵しており振動を検知するとオーナーに電話をかけたり、製品によっては警備会社に連絡して警備員が現場に駆けつけるようになっている。
僕が使っているMonimoto7というバイク盗難対策用のGPSトラッカーは、シート下などに入れるモバイルバッテリーくらいの大きさの車載器&ライダーが持ち運ぶ“タグ”がセット。“タグ”が近くにない状態でバイクの振動や移動を車載器が検知すると、指定の番号に電話が定期的にかけるという仕組みになっている。また盗難により愛車が移動していれば、その位置情報も送られてきて追跡も可能というアイテムだ。
送られてきた盗難車の位置情報をどう活用するかはオーナー次第なところがあるが、盗まれた愛車のリアルタイムの位置が特定できるのは非常に有用なことだ。しかも、本体を積み替えればバイクだけでなく、車やスーツケースなど何にでも活用できるのがいい。
最強のバイク盗難対策とは? まとめ
繰り返すようだがバイク盗難対策の本質は、“盗まれる”、“盗まれない”というよりも、オーナーがどれだけ安心できるか?、日々心穏やかに過ごすことができるか?というところが最も重要だ。もし、適当な管理をしていて愛車を盗まれてしまったら、犯人への憤りはもちろんだがオーナーとしてバイクを守ってやれなかったことが単純に悲しいし、激しく後悔する事になるだろう。そんな後悔をしないためにも、バイクの盗難対策は「ここまでやって盗まれるのなら…」と思えるくらい万全を期したいものである。