前編に続いて、8月25日(木)に開催された「第10回 BIKE LOVE FORUM in大分・日田(以降、BLF)」でのシンポジウム内容について紹介する。

バイクは日本が誇る産業であり、今後も盛り立てていかないといけないと始まったBLFも記念すべき10回目を迎えた。国内市場においても新車販売台数、免許取得者数ともに上向いており、多様な社会・環境情勢に対応しながら、さらなる発展、復権を目指しているところだ。

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昨年更新された “ロードマップ” とは?

バイクラブフォーラムでは様々な課題や課題改善のための施策が盛り込まれたロードマップが示されている。正式名称は「二輪車産業政策ロードマップ」というもので、昨年内容が更新されて、現在のものは「二輪車産業政策ロードマップ2030」と呼ばれている。
名前の通り、2030年代に向けて設定されたもので、カーボンニュートラルへの対応や電動キックボードといった新しいモビリティとの共生など、昨今の社会・環境情勢に対応した内容となっており、国内市場を活性化し成長させるための4つの政策課題と、それにひもづく11の施策がまとめてある。
その“ロードマップ2030”について、経済産業省製造産業局自動車課課長補佐の大森洋平さんから概要の説明が行われた。BLFで経産省がロードマップについて説明することは恒例となっていて、「経産省=国」が二輪車産業の施策について理解している、重視している、実際に動いているということがとても重要なのだ。
●二輪車産業政策ロードマップについてはコチラ

4つの政策課題と11の施策の進捗状況とは?

次に、ロードマップの進捗や具体的な取組について、バイクラブフォーラム開催実行委員会幹事長で、日本自動車工業会二輪車委員会二輪車企画部会長の川瀬信昭さんから説明がなされた。

政策課題1:事故死者数ゼロの推進

安全運転教育等のソフト領域での取り組みを安全技術や利用環境整備と連携して進めることが重要とし、BLF参加団体は、製造、流通、利用環境のそれぞれの領域で事故ゼロに向けた取り組みを推進している。

●製造領域
安全技術への取り組みとして自工会会員各社が安全技術の開発に取り組み、全国二輪車用品連合会(JMCA)ではより安全なライディングギアの開発を推進していく。

●商品流通領域
二輪車販売店へ安全運転指導員を配置し、ユーザーへの安全運転指導等を通じ、ライダーの交通安全意識の向上を図っていく。

●利用環境領域
ライダー一人ひとりに交通安全宣言を行ってもらい、安全意識を高めてもらう取り組み(ジャパンライダーズ宣言 等)や様々な形で安全運転技能向上の機会を増やしていく。

川瀬さん「二輪車ユーザーのみならず社会全体へ交通安全に向けた情報発信が重要となっているので、魅力ある情報発信に努めるとともに、二輪車が安全・快適に走れる利用環境を実現するため、ユーザーの声や意見を反映させるための要望活動にも積極的に取り組んでいく。」

自工会は2050年二輪車事故死者数ゼロに向けて、2030年までに事故死者数を2020年比で半減させる取り組みを行っている。高校生への安全運転講習、交通事故総合分析センター(イタルダ)と連携しての事故分析、ヘルメット脱落死亡事故半減への取組みなどだ。

川瀬さん「混合交通下で事故を無くすという観点から人間の認知特性やそれに起因する事故要因を二輪ライダーのみならず四輪ドライバーにも訴求する活動の在り方を検討する」

混合交通下では、ライダーだけが安全運転への意識や技能を高めるだけでは不十分で、歩行者や自転車、電動キックボード、四輪車までを考慮した総合的な対策が求められる。その点について、今後はかなり具体的な施策が行われていきそうだ。

政策課題2:CN達成への貢献

カーボンニュートラル(CN)への取り組みも重要だ。二輪業界は「バイクはもともとエコな乗り物である」と言い続けてきた。今回のBLFでも下記のポイントを踏まえてからの説明となった。

●国内市場におけるCNの観点から見たバイク
①国交省のCO2排出量資料(2018年)で二輪は全体のわずか0.3%
②バイクは燃費も良く、乗用車に比べて一人当たりのCO2排出量インパクトは約3分の1しかない
③保有台数は四輪車の約7分の1しかない
④バイクの利活用はCO2排出削減につながる

もちろん、これらを踏まえた上で、自工会(日本自動車工業会)は2050年CN達成に向けて全力で取り組むと表明している。

川瀬さん「2050年までの時間軸を考えると、電動化だけでなく、燃料電池、CN燃料といった選択肢も考えている。CNの達成は政府や地方公共団体と連携し、できることから着実に進める。」

各領域での取組みは主に以下となっている。
●製造領域
社会全般に対してCNを正しく理解してもらうための啓発活動を行いつつ、協調領域として取り組む交換式バッテリーを使用した産官学連携のEV実証実験(eやんOSAKA)、東京都とのバッテリーシェアリング事業に取り組んでいる。

今年6月には自工会が欧州バッテリーコンソーシアムに加入し、EVバイク最大市場のアジアでもグローバルにCNに貢献する。また、昨年11月には、国内4社がバイク搭載用水素エンジンの共同開発検討も発表している。

●流通領域
充電・バッテリー交換施設の導入推進、自治体の事例を積極的に紹介するなどEVバイク普及に向けた準備を進めている。

●利用環境領域
昨年3月、国内4社による電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアムが日本でのEV普及に向けて共通仕様に合意した。今年4月にはENEOSホールディングスと国内4社で株式会社Gachaco(ガチャコ)を設立。ガチャコは4社共通仕様の交換式バッテリーを利用して、バッテリーシェアサービスに取り組んでいく。

ガチャコの事業は経産省にモデル事業として採択され、この秋から大阪と東京でバッテリー交換ステーションを運用し、本格的な社会実装に入っていく。
また、脱炭素先行地域に指定された鹿児島県沖永良部島ではEVバイクを利用した高校生の通学実証実験も行われる。

実証実験が続いてきたEV+交換式バッテリーだが、ガチャコによってやっと具体的に社会実装されることになった。原付一種・二種など小さなバイクの電動化のみならず、交換式バッテリーを核とした地域社会のエネルギーインフラとしての成長に期待できるだろう。

(後編に続く)

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