レースなのか冒険なのか!
こんにちは青木タカオです。1980年代半ばから90年代にかけての頃だったでしょうか。中学生から高校生になり、バイクに乗り始めたボクは、テレビで見た映像に衝撃を受けました。
途方もなく広大な砂漠をバイクが、延々と何日もかけてひたすら走っているのです。“世界一過酷”と言われた「パリ・ダカールラリー」です!
ヘリコプターからの空撮映像が流れるのは、テレビ朝日系列あるいはNHKで、お正月明けの夜にダイジェスト版で放送されていたのを記憶しています。
強烈なインパクトを残したのは、フジテレビ系列の人気番組「なるほど・ザ・ワールド」でした。チームACPのトヨタ・ランドクルーザー2台をスポンサードし、参戦したのは印象深く、これを読んでいる皆さんの中にも覚えている人がいるのではないでしょうか。
漠然と憧れたラリーマシン
その名の通り“パリダカ”は、フランスの首都パリを出発し、セネガルのダカールでゴールを迎えるルート設定。第1回が開催されたのは、1979年(1978年12月26日〜1979年1月14日)のことでした。
4輪(クルマ)やクアッド(バギー)、カミオン(トラック)などにクラス分けされますが、バイク好きなボクが惹きつけられたのはもちろん2輪クラスです。
今となっては、パリダカのラリーマシンをルーツとした「ビッグ・アドベンチャー」が世界的に人気となっていますが、その頃はパリダカにこそ人気があったものの、参戦するマシンはさほど注目されていません。
ビッグタンクやウインドスクリーンを備えたラリーマシンを見て「カッコイイ!」とコーフンするボクは、NSRやTZRらレーサーレプリカに夢中となっている友人らからしてみれば奇特な存在だったはずです。
しかし、オフロード専門誌「BACK OFF(バックオフ)」や「GARRRR(ガルル)」には、まだ“ビッグオフ”としか呼ばれていなかったマシンたちが載っていました。未知なるラリーの世界に、漠然と憧れたりもしたのでした。
今年のダカールラリーを制したのはホンダ
テロの脅威、治安悪化などの理由から2009年に舞台を南米へ移します。そして、2020年からは中東サウジアラビアで開催されています。
2024年世界ラリーレイド選手権の第1戦となる今大会は「Monster Energy Honda Team」のリッキー・ブラベックが『CRF450 RALLY』にて、サウジアラビアを横断する総走行距離7967kmのラリーを制しました。
リッキー・ブラベックは2020年に、ダカールラリーでアメリカ人として初めて総合優勝を果たし、これで自身2回目となりました。
リッキー・ブラベックのコメントは以下のとおりです。
今シーズンのスタートを優勝で飾ることができてとてもうれしいです。ラリーはもちろんですが、ライダー同士の競争もタフでした。チームメートたちとの争いで油断はできませんでしたが、みんながそれぞれ全力で最後まで戦い続けた2週間だったと思います。
無事に戻ってくることができて本当にうれしいです。今年は例年と少し違っていて、とてもタフだった分、より多くを学んだ気がします。2週間すばらしい仕事をしてくれたチームにとってもうれしい結果になりました。これからはゼッケン9がラッキーナンバーになりそうです。
ホンダのパリダカ参戦は1981年の第3回大会から始まりました。最初の優勝を1986年に『NXR750』で達成すると、ナントその後1989年まで4連覇を果たしました。
1990年からは参戦を休止。2013年に南米開催のダカールラリーに『CRF450 RALLY』で復帰。復帰後初の総合優勝は、開催地を南米からサウジアラビアに移した2020年でした。2021年には連覇しています。
パリダカを名乗るモデルもあった
ホンダの市販車には、車名でパリダカールを名乗ったモデルがありました。1982年に発売された『XL250Rパリ・ダカール』は『XL500R改』をモデルにし開発されたものでした。
大容量21Lの燃料タンクやタンクバック、大型リアキャリア、豊かな光量の35W/36.5Wハロゲンヘッドライトを装備。フロントには泥はね防止に効果的なオーバーフェンダーなどを備えています。
1983年には『XL125Rパリダカール』も発売。トルクフルで扱いやすい空冷4サイクルSOHC単気筒エンジンを搭載し、市街地から山野の未舗装路まですぐれた走破性を発揮しました。
アフリカ・エコレースはアプリリアが優勝
ヨーロッパから海を渡って、ダカールのラックローズ海岸にたどり着く。往年のパリダカのムードを受け継いでいるのが、2009年から始まった「アフリカ・エコレース」です。
15回目を迎えた2024年大会は、2023年12月30日にモナコをスタートし、アフリカ大陸へ渡り、1月2日からモロッコ、西サハラ、モーリタニアを経て、1月14日にゴールしました。
北アフリカの砂漠およそ6500kmを約2週間かけて走破する壮大で過酷なラリーなのは、変わりません。
総合優勝はアプリリアレーシング「トゥアレグ660」のヤコポ・チェルッティ。アプリリアにとってはデビューウインの快挙となりました。
ヤコポ・チェルッティのコメントは以下のとおりです。
素晴らしいですね。アプリリアレーシングのバイク開発に貢献できたことは、私にとって光栄でした。ほんの短期間で、私たちは信じられないほどの実績を残しましたが、正直、このレースのスタート時にこれほど準備が整うとは思っていませんでした。しかし、ファクトリーのトゥアレグがすでに優れたスタートベースを我々に提供してくれて、チーム全体が過去数か月間行った素晴らしい仕事を成し遂げた事は分かっていましたから不安はありませんでした。確かに勝つとは予想していませんでしたから、優勝候補の一人であるというプレッシャーを感じずにレースをスタートできたのは良かったかもしれないし、ちょっとした幸運も助けになったかもしれない。アフリカでのラリーでは予期せぬことが常に潜んでいるものですが、ラッキーな事にすべてが順調に進んでくれました。素晴らしい経験と感動でした。これからお祝いを楽しむことができます。
砂漠のラリーにハーレー!?
ビッグアドベンチャーのMaxi Trail(マキシトレイル)部門で1位、総合25位でフィニッシュしたのは、ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250」で走ったジョアン・ペドレロです。マキシトレイルクラスは排気量1000cc以上、マルチシリンダーのマシンで競われます。
砂漠のラリーにハーレーダビッドソンとは少し意外ですが、「パンアメリカ1250」の実力の高さを証明するため、チームはまだまだ他のレースでも存在感を示していくことになりそうです。
とまぁ、今回は年始におこなわれた世界的ラリーのお話でした。今回も最後までお付きいただきまして、ありがとうございました。次回もまたここ「ForR」でお会いいたしましょう!!