レースなのか冒険なのか!

Monster Energy Honda Team(モンスター・エナジー・ホンダ・チーム) 画像提供:ホンダ

▲ダカールラリー2024 Monster Energy Honda Team(モンスター・エナジー・ホンダ・チーム) 画像提供:ホンダ

 こんにちは青木タカオです。1980年代半ばから90年代にかけての頃だったでしょうか。中学生から高校生になり、バイクに乗り始めたボクは、テレビで見た映像に衝撃を受けました。

 途方もなく広大な砂漠をバイクが、延々と何日もかけてひたすら走っているのです。“世界一過酷”と言われた「パリ・ダカールラリー」です!

 ヘリコプターからの空撮映像が流れるのは、テレビ朝日系列あるいはNHKで、お正月明けの夜にダイジェスト版で放送されていたのを記憶しています。

 強烈なインパクトを残したのは、フジテレビ系列の人気番組「なるほど・ザ・ワールド」でした。チームACPのトヨタ・ランドクルーザー2台をスポンサードし、参戦したのは印象深く、これを読んでいる皆さんの中にも覚えている人がいるのではないでしょうか。

漠然と憧れたラリーマシン

 その名の通り“パリダカ”は、フランスの首都パリを出発し、セネガルのダカールでゴールを迎えるルート設定。第1回が開催されたのは、1979年(1978年12月26日〜1979年1月14日)のことでした。

 4輪(クルマ)やクアッド(バギー)、カミオン(トラック)などにクラス分けされますが、バイク好きなボクが惹きつけられたのはもちろん2輪クラスです。

 今となっては、パリダカのラリーマシンをルーツとした「ビッグ・アドベンチャー」が世界的に人気となっていますが、その頃はパリダカにこそ人気があったものの、参戦するマシンはさほど注目されていません。

 ビッグタンクやウインドスクリーンを備えたラリーマシンを見て「カッコイイ!」とコーフンするボクは、NSRやTZRらレーサーレプリカに夢中となっている友人らからしてみれば奇特な存在だったはずです。

ボク(青木タカオ)が連載していた頃のオフロード専門誌「ガルル」。

▲写真はボク(青木タカオ)が連載していた頃のオフロード専門誌「ガルル」。80〜90年代は読者でしたが、30年後には僭越ながら寄稿する一人となっていました。

 しかし、オフロード専門誌「BACK OFF(バックオフ)」や「GARRRR(ガルル)」には、まだ“ビッグオフ”としか呼ばれていなかったマシンたちが載っていました。未知なるラリーの世界に、漠然と憧れたりもしたのでした。

2019年に惜しまれつつも休刊した「ガルル」。

▲2019年に惜しまれつつも休刊した「ガルル」。アフリカにあるスワジランドを走ったときのことが、この号では書いています。

 

今年のダカールラリーを制したのはホンダ

 テロの脅威、治安悪化などの理由から2009年に舞台を南米へ移します。そして、2020年からは中東サウジアラビアで開催されています。

 2024年世界ラリーレイド選手権の第1戦となる今大会は「Monster Energy Honda Team」のリッキー・ブラベックが『CRF450 RALLY』にて、サウジアラビアを横断する総走行距離7967kmのラリーを制しました。

ダカールラリー2024で総合優勝、Monster Energy Honda Team リッキー・ブラベック選手 画像提供:ホンダ

▲ダカールラリー2024で総合優勝、Monster Energy Honda Team リッキー・ブラベック選手 画像提供:ホンダ

 リッキー・ブラベックは2020年に、ダカールラリーでアメリカ人として初めて総合優勝を果たし、これで自身2回目となりました。

 リッキー・ブラベックのコメントは以下のとおりです。

2020年以来自身2度目となる二輪車部門の総合優勝を果たしたリッキー・ブラベック選手(Monster Energy Honda Team ) 画像提供:ホンダ

▲2020年以来自身2度目となる二輪車部門の総合優勝を果たしたリッキー・ブラベック選手(Monster Energy Honda Team ) 画像提供:ホンダ


 今シーズンのスタートを優勝で飾ることができてとてもうれしいです。ラリーはもちろんですが、ライダー同士の競争もタフでした。チームメートたちとの争いで油断はできませんでしたが、みんながそれぞれ全力で最後まで戦い続けた2週間だったと思います。
 無事に戻ってくることができて本当にうれしいです。今年は例年と少し違っていて、とてもタフだった分、より多くを学んだ気がします。2週間すばらしい仕事をしてくれたチームにとってもうれしい結果になりました。これからはゼッケン9がラッキーナンバーになりそうです。

HONDA NXR750(競技専用車)/1986年 画像:ホンダ、ヤングマシン

▲HONDA NXR750(競技専用車)/1986年 画像:ホンダ、ヤングマシン

 ホンダのパリダカ参戦は1981年の第3回大会から始まりました。最初の優勝を1986年に『NXR750』で達成すると、ナントその後1989年まで4連覇を果たしました。

 1990年からは参戦を休止。2013年に南米開催のダカールラリーに『CRF450 RALLY』で復帰。復帰後初の総合優勝は、開催地を南米からサウジアラビアに移した2020年でした。2021年には連覇しています。

パリダカを名乗るモデルもあった

ホンダXL250Rパリ・ダカール/1982年 画像提供:ホンダ

▲ホンダXL250Rパリ・ダカール/1982年 画像提供:ホンダ

 ホンダの市販車には、車名でパリダカールを名乗ったモデルがありました。1982年に発売された『XL250Rパリ・ダカール』は『XL500R改』をモデルにし開発されたものでした。

 大容量21Lの燃料タンクやタンクバック、大型リアキャリア、豊かな光量の35W/36.5Wハロゲンヘッドライトを装備。フロントには泥はね防止に効果的なオーバーフェンダーなどを備えています。

ホンダXL125Rパリ・ダカール/1983年 画像提供:ホンダ

▲ホンダ XL125Rパリ・ダカール/1983年 画像提供:ホンダ

 1983年には『XL125Rパリダカール』も発売。トルクフルで扱いやすい空冷4サイクルSOHC単気筒エンジンを搭載し、市街地から山野の未舗装路まですぐれた走破性を発揮しました。

アフリカ・エコレースはアプリリアが優勝

 ヨーロッパから海を渡って、ダカールのラックローズ海岸にたどり着く。往年のパリダカのムードを受け継いでいるのが、2009年から始まった「アフリカ・エコレース」です。

 15回目を迎えた2024年大会は、2023年12月30日にモナコをスタートし、アフリカ大陸へ渡り、1月2日からモロッコ、西サハラ、モーリタニアを経て、1月14日にゴールしました。

 北アフリカの砂漠およそ6500kmを約2週間かけて走破する壮大で過酷なラリーなのは、変わりません。

アフリカ・エコ・レース2024で総合優勝を果たしたアプリリアレーシングのファクトリーチーム。画像提供:ピアッジオグループジャパン

▲アフリカ・エコレース2024で総合優勝を果たしたアプリリアレーシングのファクトリーチーム。画像提供:ピアッジオグループジャパン

 総合優勝はアプリリアレーシング「トゥアレグ660」のヤコポ・チェルッティ。アプリリアにとってはデビューウインの快挙となりました。

アプリリア・トゥアレグにて総合優勝したイタリアを代表するトップライダー、ヤコポ・チェルッティ選手。画像提供:ピアッジオグループジャパン

▲アプリリア「トゥアレグ660」にて総合優勝を果たしたイタリアを代表するトップライダー、ヤコポ・チェルッティ選手。画像提供:ピアッジオグループジャパン

 ヤコポ・チェルッティのコメントは以下のとおりです。

アプリリアレーシングのファクトリーライダーで、トゥアレグにて総合優勝したチェルッティ選手(写真左)とモンタナーリ選手(写真右)。 画像提供:ピアッジオグループジャパン

▲アプリリアレーシングのファクトリーライダーで、トゥアレグにて総合優勝したチェルッティ選手(写真左)とモンタナーリ選手(写真右)。 画像提供:ピアッジオグループジャパン


 素晴らしいですね。アプリリアレーシングのバイク開発に貢献できたことは、私にとって光栄でした。ほんの短期間で、私たちは信じられないほどの実績を残しましたが、正直、このレースのスタート時にこれほど準備が整うとは思っていませんでした。しかし、ファクトリーのトゥアレグがすでに優れたスタートベースを我々に提供してくれて、チーム全体が過去数か月間行った素晴らしい仕事を成し遂げた事は分かっていましたから不安はありませんでした。

 確かに勝つとは予想していませんでしたから、優勝候補の一人であるというプレッシャーを感じずにレースをスタートできたのは良かったかもしれないし、ちょっとした幸運も助けになったかもしれない。アフリカでのラリーでは予期せぬことが常に潜んでいるものですが、ラッキーな事にすべてが順調に進んでくれました。素晴らしい経験と感動でした。これからお祝いを楽しむことができます。

砂漠のラリーにハーレー!?

 ビッグアドベンチャーのMaxi Trail(マキシトレイル)部門で1位、総合25位でフィニッシュしたのは、ハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250」で走ったジョアン・ペドレロです。マキシトレイルクラスは排気量1000cc以上、マルチシリンダーのマシンで競われます。

アフリカ・エコ・レース2024のマキシトレールクラス(1000ccオーバー/2気筒以上)で優勝、総合25位の好成績を収めたハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250」、ジョアン・ペドレロ選手。

▲アフリカ・エコレース2024のマキシトレール部門(1000ccオーバー/2気筒以上)でクラス優勝/総合25位の好成績を収めたハーレーダビッドソン「パンアメリカ1250」、ジョアン・ペドレロ選手。

 砂漠のラリーにハーレーダビッドソンとは少し意外ですが、「パンアメリカ1250」の実力の高さを証明するため、チームはまだまだ他のレースでも存在感を示していくことになりそうです。

 とまぁ、今回は年始におこなわれた世界的ラリーのお話でした。今回も最後までお付きいただきまして、ありがとうございました。次回もまたここ「ForR」でお会いいたしましょう!!

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