5月9日(木)、伊豆北部で活動する地域クラブ「原動機研究部」が沼津市内にある私立飛龍高等学校にホンダの原付バイク「スーパーカブ」とトヨタの超小型BEV「コムス」を贈呈する寄贈式が行われた。本記事では、校内で行われた寄贈式の模様と、そこにある背景について紹介したい。
なお、原動機研究部(略称 原研)のこれまでの活動については、ForRでも一部紹介してきたので、こちらを参考にしてほしい。
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県内唯一の自動車専門学科がある飛龍高校
飛龍高校は沼津市街地にある私立高校で普通科(総合スポーツコース、未来クエストコース、フードクリエイターコース)と自動車工業科がある。今回の寄贈先でもある自動車工業科は静岡県内で唯一の自動車に関する専門学科となっており、2年次の終了までに国家3級整備士の資格を取得する。
なお、少し驚いたのが、こうした自動車専門学科のある高校が静岡県ではここにしかないということ。スズキやヤマハが本社を構える浜松・磐田市にもこうした学校はなく、県西部から入学してくる生徒もいるそうだ。
また、遠方からの通学で言えば、富士山の麓あたりから通う生徒もいるそうで片道なんと数時間とのこと。東西に長い静岡県ならではの通学事情・環境と言えるだろう。
さて、今回の寄贈式は飛龍高校の自動車工業棟で実施された。棟内には整備教材としてのクルマや整備台、工具や部品といったものが整然と並んでいて、ごくごく一般的な普通科に通っていた筆者にはとても興味深い空間だった。
生徒らがしっかり列を作って並んで点呼をしていたり、自動車部品の分解整備をしている姿を見ると、頼もしく感じるし微笑ましい。
飛龍高校OBの原研部員、県議会議員も参加!
式に参列したのは、原動機研究部と寄贈に関わった関連企業、寄贈先となる自動車工業科の3年生と大石康史先生、生野正弘先生、さらには飛龍高校のOBでもある静岡県議会議員の岩田徹也さん(地元は函南町)も来賓として参加した。
なお、飛龍高校は原動機研究部OB(前部長)の田中海豊さんの母校でもあり、寄贈式では飛龍高校OBとして挨拶を行った。
寄贈式は、原動機研究部から自動車工業科3年生の生徒代表へと各車のメインキーが渡されたことで滞りなく終了。その後は原動機研究部顧問の大槻ひびきさんによるSNSリスクマネジメント講座が行われた。
3級自動車整備士の勉強にバイクが組み込まれた
ところで、なぜ今回このような寄贈式が行われたのかというと、その背景には整備士資格制度が変更されたという理由がある。飛龍高校の自動車工業科では2年次終了までに3級自動車整備士を取得することになっているが、その3級自動車整備士の資格が新しくなるのだ。
令和4年(2022年)5月25日、自動車整備士技能検定規則の一部改正が公布され、新しい整備士資格制度が令和9年(2027年)1月から施行されることになった。自動車技術の進化に対応するため自動車整備士の資格体系や養成課程を見直すことになったのだ。
3級について簡単に言うと、これまで油種などで分かれていた各資格が“総合”というひとつにまとめられ、“二輪”は“総合”に含まれる形となった。
出典:国土交通省自動車局整備課リリース資料「自動車技術の進化に対応する自動車整備士の育成を促進します ~自動車整備士技能検定規則の一部改正について~」(令和4年5月25日)より引用
高校の自動車科などの1種養成施設では全体の教育時間は変えないものの、新しい教科書での教育開始時期が令和6年度(2024年度)からとなる。新資格試験の実施は令和9年(2027年)3月の登録試験からだが、高校は3年間あるため今年の4月から新しい教育が始まっているのだ。
そして、これにより今まで勉強していた自動車整備の内容に二輪車整備も加えられることになり、実習に使うための二輪車教材が必要となったのだ。今回、原動機研究部がスーパーカブを寄贈した背景と理由はここにある。
3級整備士資格の試験は“総合”にまとめられた分だけ勉強量は多くなるが、二輪車の整備を経験した整備士の増加にもつながる。
原研と飛龍高校との今後にも期待!
飛龍高校に寄贈されたスーパーカブとコムスは授業の整備実習等に使われ、バイクと超小型BEVの構造や仕組みの理解に寄与することとなり、新しくなった3級自動車整備士の資格取得にも役立ってくれることだろう。原研と飛龍高校の取り組みは今後も続いていくとのことなので期待したい。