前回の「ハヤブサ」編に引き続き、ステップアップ試乗会で筆者が試乗したモデルを一気に紹介してまいりましょう。まずは2021年の秋に全宇宙のバイク乗りがアッ!と驚く大変身を果たした新型「GSX-S1000」から。単にスタイリングが変わっただけではなかったのですよ!
あまりの豹変ぶりにプレスリリースを思わず3度見
マイッタ! ハヤブサとはまた方向性が全然違うゾクゾクするような面白さ。
●いやぁ〜、スタイリング上は見事なくらい従来型と共通点がありません。とはいえ、「これはGSX-S1000です」と言われれば、ほどなく納得してしまう立ち位置のブレなさよ。走らせてみても、なるほど確かにGSX-S1000。しかし、その乗り味は従来型と同ベクトルながら圧倒的にスムーズになっていたのです!
ハヤブサが「重さを感じさせない」最新技術の集大成なら、GSX-S1000は最初からその「重さがない」というところが出発点(ハヤブサ比でマイナス50㎏の車両重量214㎏)。
●しつこいようですが「どうしちゃったのスズキさん?」と言いたくなってしまうくらい、スキのないカッコ良さがス・テ・キ。新色のグラスマットメカニカルグレーもエッジの効いた造形にドはまりしており、幅広く人気を集めそうです
伝説の名機、2005年式GSX-R1000のロングストロークなトルクフルエンジンをしゃぶり尽くし……いや失礼、改良し尽くして最新のヒジョーに厳しい環境諸規制をクリアしながらパフォーマンスまで向上(148馬力→150馬力)させているのですから文句の付けようがございません。
同じ車名なことが信じられないほど従来型から激変したスタイリングに目を奪われてしまいがちなのですが、またがってハンドルに手を置いた瞬間、「……アレ? こんなライディングポジションだったっけ?」といい意味での違和感が。
●多彩な情報をライダーへ的確に伝えるフル液晶ディスプレイを装備。バーグラフ式のタコメーターは動きも面白く、思わず見入ってしまいました
調べてみればアルミ製テーパーハンドルの位置が20㎜ライダー側に近づき、その角度も見直されたらしく、少なくとも筆者には超絶にジャストフィット!
●街乗りでも楽できそうなアップライトな姿勢が好印象。シート高は810㎜と前回紹介したハヤブサより10㎜高いくらいですが、こちらもシート前側にしっかりとした“えぐり”が設定されているので素直に足を降ろせます
振り回すことがやたらと楽しい“走る前衛芸術”
気分良く走り出した瞬間から、もう笑いが止まりません。
●ハンドリングも文句なし! ライダーが少々やらかした操作ミスでさえ抜群の安心感とともに許容してくれるフトコロの深さがナイス。ダンロップ「スポーツマックス・ロードスポーツ2」ラジアルタイヤとの相性は抜群なようです
新規導入されたアシスト&スリッパークラッチの操作はニヤケるほど軽く、これまた新採用の電子制御スロットル(SDMS[スズキドライブモードセレクター]付き)が、従来型エンジンにあった過激なまでの荒々しさを、力強さはそのままに滑らかさだけを2割増しくらいにしてくれており、つまり、扱いやすいのにチョー面白いのです(もちろん素性は野獣なのでナメてはいけませんが)。
●座る部分のクッションはライダー側だけでなくタンデムシートでも十分に確保されており、そこそこのロングツーリングさえ楽勝でこなしてくれそうです。ただ、急発進で同乗者を落としてしまわないよう、ライダーは気をつけて!?
元々、前方にウインドスクリーンも何もないネイキッドモデルだったGSX-S1000。ハンドル変更などでよりアップライトなライポジを得て前方視界が抜群になったので、数多く入ってくる視覚情報から的確な判断を下しやすいのですね。これは相当なストレスフリーぶりを実現してくれています。
●縦に2灯配置された六角形LEDヘッドランプの上に、LEDポジションランプをレイアウト。取り巻くシュラウドの複雑な造形が新時代のスズキデザインを象徴しています。フロントサスペンションのアウターチューブ外側には、小ぶりながらダウンフォースを生み出すウイングまで設定されているではありませんか
街や峠を気負わずスカッと駆け抜けたいならコイツ
今やロングツーリング性能を突き詰めたGSX-S1000GTが存在しているからこそ、街や峠を俊敏に駆け抜けるネイキッド……いや“ストリートファイター”として迷いなく開発が進められたことがビンビンに伝わってきました。
●小ぶりながら存在を主張するウイングは、高速走行時にはしっかりと機能するようで、すでにオーナーになった方のSNSなどを拝見すると、ハイウェイを矢のように走ってくれるとか
従来型から27万7200円も価格上昇したことが、いろいろ取りざたされているという話も聞きますが、その価値がありやなしや?をぜひステップアップ試乗会などで確認してみてください。
●998㏄水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンは150馬力を発揮し、全長は2115㎜で装備重量214㎏。19ℓの燃料タンク容量が満タン航続距離315.4㎞を実現! 価格は写真のつや消し灰も青も黒も143万円で同じです
ちなみに私は「プライスアップの価値アリ! いやいやいや143万円は逆にバーゲンセールじゃないの?」派です(笑)。
★以下は実際の試乗会で乗らせていただいた車両のプチインプレッション。最高速40㎞/hでのコース2周でも分かることは山ほどあります。さらに気になるバイクたちを同一条件で操ることにより、「自分に合う、合わない」が相当な割合で判明する点も素晴らしい! 積極的に活用してまいりましょう〜!
<ヤマハ MT-09 SP 自制心と戦え!>
●845㏄(116馬力/8.9kgm)から888㏄(120馬力/9.5kgm)に強化された並列3気筒クロスプレーンエンジンは、大人しめの走行モードでも隠しおおせない悪魔的な吹け上がりを見せつけてくれます。高度な電子制御とのせめぎ合いが楽しく、右手を大きくひねりたい衝動に打ち勝つのは大変でした
<ヤマハ YZF-R1M 生き様が炙り出される>
●MotoGP直系と言えるリッタースーパースポーツの雄は、筆者に厳しく問いかけてきました。「そんなに分厚い脂肪の層をまとったままで、ボクに乗ろうというのかい?」。シートを跨ぐだけで足がつりそうになり、前傾姿勢を取れば腹がタンクにつかえる。出直してまいります……(涙)。ただし、野太いエキゾーストノートとともに力強く吹け上がるエンジンのフィーリングは絶品でしたよ!
<カワサキ Z900 再発見されるべき名車>
●上には排気量が大きいのに自分よりお求めやすい兄貴分Z1000がいて、横を見れば大人気街道驀進中のZ900RSがいて、どうにも陰が薄くなりがちなZ900。ですが今回、人生で初めて走らせてみると「こんなにいいバイクだったのか!」と目からウロコが5000枚剥がれ落ちました。エンジンの回り方といいサスペンションの動き方といい何もかもが心地いい。個人的には“RS”より好みです
<スズキ V-Storm1050 快調な怪鳥>
●「砂漠の怪鳥」と呼ばれたレジェンドバイクDR-BIG(DR750S)のスタイリングを現代に蘇らせた最新Vストローム旗艦。特徴的なクチバシデザインも見事にキマッており、それだけでもファンは感涙モノ。バイクの仕上がりも素晴らしく、1036㏄のVツインエンジンはどこまでも走って行きたくなる心地よい鼓動感とともにズ太いトルクを発生。サスセッティングも絶妙で大らかな乗り味に陶酔いたしました!
●誰が言ったか「世界一乗りやすいスーパースポーツ」。乗りやすくて速くも走れてツーリングにも使えてスタイルも抜群、と非の打ち所のない野比のび太のクラスメイトのような仕上がりを持つ名車。センターアップマフラーから耳に飛び込む排気音が心地よかった……
<カワサキ Ninja650 嗚呼、親近感しかない>
●とにかく乗りやすかったパラレルツインのニンジャ650は、ビギナーからベテランまで自信を持ってオススメできる秀逸な仕上がり。今回の試乗会では、このバイクとSV650が先導車のすぐ後ろを走る車両だったのですけれど、那須MSLのレコードラインを知るには最適のポジションですので、参加者は全員一度は先導車の直後を付いていく車両を選んで、ベストなコースの走り方を体験していただきたい!
<ヤマハ MT-25 気さくなアイアンマン>
●口から光線を出すアイアンマンのようなフロントフェイスが個性的な250㏄パラレルツインスポーツ。最近、特にMTシリーズの顔は相当にエグいことをしているのに、気が付けばカッコよく思えてしまうのは、さすがヤマハと言わざるを得ません。国内市場では末っ子となるコイツの顔も1分で見慣れました。気軽に付き合えて奥が深い走り味を持つナイスバイクですね
<BMW R1200R 主役は僕さー!>
●2011年にDOHCヘッドを得て生まれ変わったボクサーツイン(110馬力/12.2㎏m)を搭載して世に出たBMWのロードスターモデルにもイソイソと試乗。止まったままスロットルを空ぶかしすると「ブルン!」と車体が右に傾く古き良き挙動も懐かしく、別冊モーターサイクリスト時代を思い出しながら走らせていただきました。理詰めで構成されたシャシーの動きは安定感抜群。どこまでいっても「乗り手が主役」という哲学が貫かれていることには感動を覚えるほど
あと数台は乗っているのですが、長くなりましたので終わります(汗)。
アナタもステップアップ試乗会で丸一日、バイクまみれの一日を満喫してくださいね!