’21年、トライアンフはボンネビルシリーズ8車についてユーロ5適合に伴うアップデートを実施した。その中から今回は、伝統の名車のテイストを色濃く反映した「T100」に試乗。排気量を増やさずに10psアップし、足回りもグレードアップを果たした。

●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:富樫秀明 ●外部リンク:トライアンフモーターサイクル

’21 トライアンフ ボンネビルT100

【’21 TRIUMPH BONNEVILLE T100】■全幅780 全高1125 シート高790(各mm) 車重229kg ■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 900cc 65ps[48kW]/7400rpm 8.1kg-m[80Nm]/3750rpm 変速機5段リターン 燃料タンク容量14.5L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=100/90-18 R=150/70R17●色:青×白 赤×白 黒 ●価格:130万5500円~134万5100円

【エンジンの軽量化で車重は4kgダウンの229kg】’59年に登場した初代ボンネビルのスタイリングを現代的にアレンジしたT100。新型はエンジンの軽量化によって車重が4kg軽くなり、最高出力は10psアップした。さらに新設計のカートリッジ式フォークやブレンボ製キャリパーの採用なども注目に値する。

【ライディングポジション】座面がフラットなため着座位置の自由度が高く、足着き性も優秀だ。ステップがやや前にあるのでリラックスでき、ロングでも疲れにくい。[身長175cm/体重62kg]

[◯] スムーズさ極まれり。大型ビギナーに最適

排ガス規制適合のため、低下するパワーを補うべく排気量を上げる例は少なくないが、このボンネビルT100は最新のユーロ5をパスしつつ、900ccのまま最高出力を55psから65psへと引き上げた。同系の水冷SOHC4バルブ並列2気筒を搭載する兄弟車・ストリートツインらが’19モデルでひと足早く65psになっており、これでやっとT100も肩を並べる格好となったのだ。

2000rpmからレッドゾーンの始まる7000rpmまでで最大トルクの80%以上を発揮するというこのエンジン、最高出力とその発生回転数を引き上げながらも、決して高回転型になっていないのが素晴らしい。トップ5速/100km/hでの回転数は約3200rpmで、そこを中心とする2500~4500rpmでの加減速がとにかく気持ちいいのだ。歩幅の広い蹴り出し感とでも言おうか、270度位相クランクならではの鼓動感とそれが収斂するさまが味わい深い。サイレンサーから耳に届くサウンドは太くて歯切れが良いが、体に伝わる振動は限りなく少なくてスムーズ。ライドバイワイヤーのレスポンスは忠実であり、クラッチレバーは250cc並みに軽い。さらにシフトフィールも吸い込まれるようであり、非常に完成度の高いエンジンと言えよう。

ハンドリングも優秀だ。新設計となったカートリッジ式フォークの効果なのか、スロットルのオンオフでスムーズに車体がピッチングし、意のままに向きを変える。加えてフロント18インチホイールは、19インチと17インチのいいとこ取りで、舵角の付き方が穏やかすぎずスポーティー過ぎずで非常に扱いやすいのだ。

ブレーキは、上位のボンネビルT120がフロントにダブルディスクを採用するのに対し、T100はシングルだが、これがハンドリングの軽さに貢献している。加えて新型はキャリパーがニッシンからブレンボとなり、特に初期からのコントロール性が高まった。なお、標準装備のABSやトラクションコントロールは大きな安心材料であり、それも含めて大型初心者にお薦めしやすい1台である。

【ユーロ5に適合させつつ10psアップを達成】’16年に誕生した900cc水冷並列2気筒は、’21年モデルで270度位相クランクとバランサーシャフトを軽くして低慣性化。クラッチカバーも薄肉化された。さらにポート形状やバルブタイミングを見直すことで、ユーロ5をクリアしつつ最高出力を55ps/5900rpmから65ps/7400rpmへ引き上げている。

φ41mm正立式フォークはカートリッジを新設計。リヤショックはプリロード調整可能だ。フロント18/リヤ17インチのホイールは32本ワイヤースポークで、リム幅はキャストホイールのストリートツインと共通だ。

フロントの片押し式2ピストンキャリパーは、従来のニッシン製からブレンボ製に。リヤキャリパーは引き続きニッシン製を採用。

標準装着タイヤは専用設計のピレリ ファントムスポーツコンプで、ワイヤースポークホイールのためチューブ入りとなっている。

ヘッドライトは今や稀少なマルチリフレクター&ハロゲンバルブの組み合わせで、中央にトライアンフのエンブレムをあしらう。

メーターは文字盤のデザインを小変更し、回転計内にボンネビルのロゴを追加。レブリミットは500rpmアップしたが、レッドゾーン7000rpm以上は従来と同じだ。

【初代ボンネビルのディテールを随所に採り入れる】車体色3種類のうち青×白と赤×白にはタンクに手描きのコーチラインが入る。表皮に白いパイピングの入ったシートは従来型と同じ座面高さ790mmを公称する。シートはキーロックで取り外すことができる。

シートの下にはUSB電源ソケットが備えられている。スマホの充電などに便利だ。

ウインカーはフィラメント球で、テールランプのみLEDだ。

[△] 暑い日には走行中も膝下に熱さを感じる

ボンネビルシリーズに乗るたびに感じるのが足の熱さだ。風上にエキゾーストパイプが張り出していることが原因のようで、スタイリング優先ゆえに多少の我慢は必要だ。またシートがけっこう柔らかいので、腰の落ち着きが悪いと感じる人がいるかも。

[こんな人におすすめ] W800とは別物。実際に試乗して選んでほしい

99年にカワサキからW650が登場し、その2年後にボンネビルシリーズが発売された。それぞれの末裔・W800とこのT100はどちらもバーチカルツインだが、クランク位相角の違いによりフィーリングが異なる。好みで選んでほしい。

※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

WEB YOUNG MACHINE - NAIGAI PUBLISHING, Co., Ltd. All rights reserved.

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事